レストア技術のご紹介

2017.09.25

エルスフロントメカ

50年代のエルスには必ずエルスのスペシャルメゾンのフロントメカが仕様されています。これは角パイプと角パイプを組み合わせ、内側のパイプに直付けされた羽根をスライドさせるという極シンプルなものです。構造は簡単ですが作るとなると大変です。

トーエイ社でもコピーのフロントメカを製作していますが、このメカの肝である角パイプが曲者で、そもそも細い角パイプは市販品がありません。トーエイ社で使用している角パイプを分けてもらうとこれがエルスより一回り太い11mm角と8mm角の組み合わせで、オリジナルのレストアには使えません。

オリジナルの羽根の角パイプをよくよく見ますと、その断面はコの字型の角材に蓋をしています。そうなんです。それは既製品ではなくエルスで作られていたものだったのです。

用意するものは9mmと7mmの角棒です。これをそれぞれ肉厚1mmになるようにフライスで加工します。それに合うように用意した1mmの鉄板をふたにして銀ローで取り付けます。後は振り付けた蓋の余分なところを削って仕上げれば各パイプが出あがります。

フロントメカの羽根は1.5mm厚の鉄板から切り出しての成形になります。これは断面をコの字型に曲げるのがちょっと手間です。羽根の内側のプレートは叩いて叩いて縁を曲げていきます。そこに出来上がった羽根に作っておいた7mmの角パイプを直付けしておきます。

出来上がった外側の角パイプは片方を同じ要領で1mmの鉄板で塞いでしまいます。変速用のロッドを通すための穴もオリジナルと同様にパイプを削ってあけておきます。

フレームへの取付で問題なりますのは直付けの位置です。あらかじめ使用するチェンホイールをセットしてアウターの刃先の位置とストロークするべき内外を確認します。そのうえでまず角パイプの取付位置にこれまた鉄板から削り出しておいた菱形の補強版を直付けします。そこに加工の終わった9mmの角パイプをロー付けするのですが、あらかじめ用意しました羽根のロッドと位置関係を何度もチェックしながらの位置決めになります。もちろん左右のストロークを内外きっちり合うように固定してロー付けです。

ここまでくればフロントメカの再生はほぼ完成です。チェンホイールを再びセットしてストロークさせてみます。きっちり羽根の高さとストローク幅がでていればOKです。後はロッドの支点を固定する台座を削り出して直付けします。

でも今回はもう一つ特別なスペックでした。チェンジケーブルが内蔵仕様になっていたのです。当然これはそのまま使ってワイヤー引きで再生の必要がありました。ワイヤー引きとは言えフレームの直付け関係は通常のロッド式と同じです。以前ワイヤー引きをレストアしたときの記録をもとに、6mmのデュラルミンの板から削りだしで製作しました。これもかなり特殊な形状ですが金ノコと旋盤をつかえば何とか作れます。

エルスのフロントメカケーブル内蔵工作ですが、普通のフロントメカではダウンチューブからBB外の下側を通ってBB裏へパイプが這わせてあるのですが、このフレームではダウンチューブにパイプは入っていません。入口がついている他はBBの中の上側にワイヤーリードがあって後は出口の穴が開いているだけ、ある意味でセッティングは簡単です。

これなら、ロッド式からの変更もできますね。

めでたし。めでたし。

 

 

親方

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