アイズの独り言

2009.12.31

追悼

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エルネストは私にとって偉大なる師でした。

最後まで自転車人として生き、そして死んだ最後のアルティザンといえると思います。彼は私との約束を果たし、自転車人としての最後の仕事を終えて旅立って行きました。「自転車屋は死ぬまで自転車屋だ」と云っていたその言葉どおり、自転車屋であることを止めたときその人生を終えたのでした。

18年という短いような長いような年月、毎年のようにパーツとオーダーシートを携えてエルネストのもとを訪問することは楽しみでもありました。いまでも空港からタクシーで直行した私たちを店の前で待っていてくれたエルネストの笑顔が思い出されます。そして2年前のラリーサンジェールでは一緒に走り、今夏はアルプスの別荘でともに過ごすことも出来ました。私はエルネストとの関係を全うすることが出来たと思います。

今回の現地滞在24時間。本当にお葬式に参列するためだけの滞在でしたが、家族同様に扱ってくれて納棺式や埋葬にも立ち会って参りました。納棺の前の最後のお別れで拝見したエルネストの表情はかすかに微笑んでいて、その一生に満足しているかのようでした。葬儀には200名以上と思われる自転車仲間が参列しており、最後の別れを惜しんでいました。その後遺体はルバロア市内の市立墓地にあるスューカ家のお墓に埋葬されました。別れは寂しいものではありますが、私はその場に立ち会えたことが幸せです。

これからアレックスサンジェのブランドは3代目たるオリビエによって引き継がれて行きます。それは決して楽な道ではないはずですが、彼は彼の父親やその兄と同じ様に自転車を作り続けることを生業としました。既に大分以前から彼は自らの手で自転車作りを始めています。サンジェのホームページのトップ右側にFR3(フランスのテレビ局)のニュースレポート番組の動画のリンクがあります。この中でオリビエがビルダーとして紹介され、フレーム作っている画がでてきます。このフレームはうちからオーダーしました大阪の方のシクロ仕様のポーターです。現在メッキ・塗装を終え組立に入っています。おそらく来年早々には出来上がってくると思います。

おそらく今後も注文があれば古いパーツで作ることも出来ますでしょう。ただ本人は現在志向の人間ですから、やはり現行パーツをスペックしてということを前面に出すと思います。それは現在ホームページに紹介されている最近のサンジェのモデルでもわかると思います。でもそれは今まで彼の父が作ってきたサンジェと、彼が自分の自転車体験とを重ね合わせて作り出しているものです。これからもオリビエ氏の作り出す新たなるアレックス・サンジェが日本の方々にも受け入れられることを強く望みます。それは間違いなくサンジェの歴史を継ぐものなのですから。

2009.12.31

土屋郁夫

親方

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