SR600四国山脈挑戦記
こんにちは、チョコです。今月の頭にパーマネントブルベSR600四国山脈に挑戦してきました。
今回挑戦したブルベはシューペル・ランドネ(Super Randonnes :SR600km)というカテゴリーのもので、2009年に新設された比較的新しいブルベです。僕が今まで参加してきたブルベ(BRM)のように主催者が設定したコースをコントロールポイントを周りながら制限時間内に完走を目指すのは変わらないのですが、SR600は出走日時を出走者が自由に決めることが出来ます。普通のブルベは同時出走する他のライダーがいますが、SR600では示し合わせて出走しない限り1人でゴールを目指すことになるのです。通常のブルべでは有人チェックポイントが設けられていることもありますがSR600では基本的に指定されたスポットとSR600のフレームバッジを付けた自転車を一緒に写真に収め、完走後に証拠として主催者に送付する形がとられています。冒頭のフレームバッジはそのためにあるのです。また、SR600最大の特徴は600㎞で獲得標高が10000m以上と定められている点でしょう。必然的にコースは獲得標高の大きくなる山岳地帯が多く含まれます。
日本では現在4つのSR600が開催されていて、今回僕が挑戦したのはその中で最も新しい2017年4月から開催されているオダックスジャパン岡山主催のSR600四国山脈。以前からSR600に挑戦することは考えていましたが、SR600四国山脈が設定される以前は関東地方発着のコースのみでアクセスの問題から挑戦を先送りにしていました。ところが、今年の春にSR600が四国に設定されることが発表され、アクセスの問題は解決。丁度3月に大歩危、祖谷渓周辺をツーリングして四国の山間部に興味が湧いているところだったので暑さの和らぐ秋に挑戦することを決めました。
コースマップを見て分かる通り、平地はほぼありません。石鎚山スカイライン、四国カルスト、京柱峠、剣山、別子山等普通のツーリングならどれか一つで主役になれるような登りのオンパレードです。加えてコース中に大きな都市は存在せず、鉄道もほとんど近くを通っていないので中断しても簡単に帰ることが出来ません。事前の入念な計画とライダーの走力、リスクマネジメントが要求されるのです。今回、僕はこのコースを平均速度12㎞/h、51時間で完走する計画を立てました。
スタート地点は愛媛県西条市のJR伊予西条駅。京都駅から新幹線と特急を乗り継いで3時間50分ほど。始発の電車に乗って輪行します。新大阪で新幹線に乗り換えると車窓に雨粒が流れ始めました。そう、この日の天気予報は全国的に雨。計画通りに51時間台でゴール出来たら上出来だろうとこの時は考えていました。
電車の遅延で伊予西条駅に10分遅れて到着。雨は降り続いています。スタート予定時刻まで約30分、自転車を組み立て各部をチェックしSR600中使用しない荷物は駅のコインロッカーに置いていきます。持参してきた粉末飲料を水で溶かし、駅舎内のコンビニで補給食を調達しているとあっという間にスタート時刻の10:00を迎えました。スタート時刻の証明となる伊予西条駅の入場切符を発券してスタートです。
スタートからしばらくは寒風山トンネルへの青いラインをトレースしながら南下していきます。向かう方向には雨雲に包まれた石鎚山。
コースは殆ど登りか下り。それに加えて今回はスタートから雨が降っているので余力を残した状態で走ることを第一に進みます。登りでスピードが出なくても気にしない。体力に余裕がある序盤は勢いよく進んで行きたいところですが、脚を残すためにぐっと抑えます。序盤に脚を使って峠1つ多少早く登ったところで全体の所要時間からすれば効果は微々たるもの。それよりも、序盤に脚を使って消耗し後半大きくペースダウンすれば完走にも影響を与えます。今回挑戦しているコースは自分にとって未知の領域。獲得標高は膨大で休めるポイントは少なく、大半が山の中。それに加えて三分の一は雨の中走ることが確定しています。自分の中で「力をセーブする」「食事はしっかり摂る」「寝れるときに眠る」この3点を柱に完走を目指します。
194号線を離れて旧道へ。旧道に入ると車は全く通らなくなり、自分一人の世界になります。ひたすら雨の中黙々とペダルを踏んで高度を上げていきます。晴れていたら景色が良いはずですがこの時は雲の中。
標高1600mを超え45㎞地点、PC1石鎚山系鳥瞰図に13:39到着。看板に書いてある石鎚山系は雲の中に隠れて何も見えません。
PC1から少し下ると石鎚山登山者の為のロッジがあるので少し遅めの昼食をとります。雨でお客さんは自分一人。椅子に座って食事が出来る貴重な機会なので雨具を脱いでカレーライスを注文。カレーライスを食べながら外を見ると強風で雨が横殴りに吹き付けています。このままロッジでのんびりしたいところですがウェアを温かいものに着替え、グローブをレイングローブに変えて雨の中に戻りました。
ロッジからしばらく下り基調が続き、舗装の綺麗な国道を走っている間に雨が止みました。
軍艦岩が目印の美川町からPC2美川峰に向けて登りに転じます。
美川峰への登りの序盤にレイングローブとレインパンツを脱ぎ、フロントバッグのカバーも外しました。これらは大雨の時は役に立つのですが小雨程度ならつけていない方が快適です。登りの途中で日没を迎え、標高が上がるにつれて再び風雨が強くなりました。登り序盤に雨具を脱いだばかりなのに再度自転車を止めてレインパンツを履き、この先の夜間走行に備えてヘルメットにヘッドライトを装着しました。
さて、美川峰の看板をキューシートとGPSを頼りに探しながら登っていくのですが、PC2の看板までもう少しというところで森が開け、風と雨が横殴りに吹き付けてきました。ライトは雨と雲に反射して白く光るばかりで視界は10m以下、最悪です。
112㎞地点PC2美川峰18:38
やっとの思いで美川峰の看板を発見して自転車と共に撮影。ここから少し登って下りに入るのですが雨と雲で視界はほぼゼロ。それに加えて道路には砂利や落ち葉、枝が散乱していて障害物競走状態です。落車しない事だけを考えてそろそろと下り続けました。
美川峰を下ると国道440を経由して四国カルストへ向かいます。時刻は20時を回り、気温は16℃。雨具フル装備でペダルを回していれば寒くない気温ですが、これから登る四国カルスト姫鶴平は標高1200m。このまま四国カルストに突撃すれば寒さと爆風、横殴りの雨が襲い掛かってくるのは容易に想像できました。進退を考えながら440号から四国カルスト方面へ分岐し、2㎞程登りました。路面は川のようになっていて砂利が多く視界も最悪です。ここで立ち止まり「撤退」と独り言をつぶやき、来た道を引き返して440号の地芳トンネルへ向かいました。
地芳トンネルの入り口で雨宿りをしながらこの先の計画を考えます。ここまでのペースは事前に計画していた時速12㎞を上回り、予定より少し早くチェックポイントを通過してきました。SR600の制限時間は60時間。このまま計画通り走れば9時間余裕がある計算になります。正確にはこのコースは615㎞あるので時速10㎞ではタイムアウトになってしまいますが、このままリスクを冒して四国カルストに突入するよりも雨をやり過ごしてから安全に走るのが得策と考え、トンネルで仮眠するか、10㎞程コースを外れて梼原の町で宿泊するか2択としました。エマージェンシーシートを持っているので仮眠も出来なくはなかったのですが12時間以上雨の中走り続けた当時の自分にその余裕はなく、殆ど迷わずに梼原にある民宿を調べて電話をかけました。この時、時刻は21時。こんな時間に宿泊を受け付けてくれる宿がそう簡単に見つかるはずもなく、3件ほど断られました。梼原にある宿泊施設は片手で数えられるほどなので、この際すべてに電話しようと思い、4件目にあたると宿泊OKの返事が。
地芳トンネルを出て30分ほど土砂降りの中を走って民宿に到着。
古民家でおばあさんが一人で切り盛りされている民宿でしたが、僕の姿を見て畳の部屋より使いやすいだろうと、別棟のログハウスに通して頂きました。ストーブをつけて濡れた衣服、バッグを乾かしその間に風呂に入り夕食を食べて就寝。宿に入ったことで気持ちが切れたのではないかと思われるかもしれませんが、この時完走への気持ちはまだ消えていませんでした。どうしても完走したかったのです。
翌朝は6時過ぎに起床。早めに出発したいところでしたが宿のおばあちゃんと会話を楽しみながら朝食をとり、記念撮影をしていたら出発はタイムリミットの8:00になってしまいました。宿からコースまで10㎞上り基調の道を戻る必要があるのでここからはのんびりしていられません。遅れを取り戻そうとする自分を後押ししてくれるかのように天気は快晴です。
コース復帰後も無理のないペースで四国カルストに向けて標高を稼ぎます。地芳峠を経由して143㎞地点姫鶴平に10:06到着。時間の余裕がありません。
天狗高原に向けて登っているうちにガスは晴れて四国カルストの景色を楽しめました。
天狗高原から豪快なダウンヒル。実はこの道、学生の頃に合宿で大きな荷物を積んで登ってきた道です。当時を思い出しながらPC4長沢の滝を目指します。
下り終えると長沢の滝に続く林道が通行止め。事前にSNSなどでSR600四国山脈に関する情報を調べていた時は通行止めの情報はなかったので驚きました。「昨晩の雨で土砂崩れが起きたのだろうか。それとも以前から通行止めで車は無理でも自転車は通れるのではないだろうか。」詳細を知るために、看板の問い合わせ先に電話を掛けようにもここは圏外。通りがかりの地元の方に話を聞くも詳細は分からずこのまま進むか迷いました。コースを戻って別の道で迂回すれば439号に合流可能で、長沢の滝にも439号側から行ける可能性があったので、とりあえず来た道を戻り、う回路で439号へ下りました。
439号に合流したところで電波が入ったので町役場に問合せ。話を聞くと8月の台風で土砂崩れが発生してそれ以来通れないのだとか。長沢の滝に続く林道入り口から439号までかなりの標高差を下ってきたので来た道を登り返すのはあり得ない…
それでも長沢の滝を写真に収めるべく、コースを逆走する形で439号側から長沢の滝まで登りました。162㎞地点PC4長沢の滝12:02到着。
これでとりあえず認定に必要な写真は撮れたのですが、本来のルートを迂回した上にかなりの時間を使ってしまいただでさえギリギリだった60時間以内の完走は非現実的に。60時間を超えても1日75㎞以上走ってコースを完走すればツーリストとして認定を受けることが出来るのですが、ブルベ後も予定があるのでこの先もコース通りに走るのは時間的に厳しい。それに今回のチャレンジはあくまでもSR600をランドヌール部門で完走することが目的です。通行止め区間を迂回し、コースのトレースも出来ず、ランドヌール部門時間内完走が不可能な状況で走り続けるのは無駄であると自分の中で結論し、長沢の滝でSR600四国山脈のDNFを決めました。
実を言えば9月以降もこのコースを完走した人がいることは把握していたので「強引に通ってしまってもよかったかな。」と少し後悔。表記が「全面通行止め」ではなく「通行止め」だったのと数日前に完走した先人が存在することから京都に戻ってからも「あの時土砂崩れの現場まで行ってみればよかった」と時折思いました。
それに初日の夜、梼原に下らず地芳トンネルで仮眠して雨雲をやり過ごし、夜間も走り続けて林道の通行止め区間も突破してしまえば時間内に完走できた可能性はありました。しかし、暗闇で暴風雨の中、四国カルストを単独で走るには大きなリスクが伴うので現在の自分の実力を顧みれば妥当な判断だったと思います。
でも完走したかったな…
さて、DNFしてもここは四国の山の中。数キロ走れば鉄道があるような生易しい場所ではありません。西条に帰るにはペダルを踏み続けなければならないのです。それに当初のゴール予定日時まで余裕があります。コースをショートカットして普通にツーリングすれば自力で西条に帰るのは容易いのでここから先は気持ちを切り替えてのんびり四国山脈ツーリングとして楽しむことにしました。
この先のルートは439を東進して土佐町で一泊、3日目に山を越えて北上し、西条へ戻ることに決定。
仁淀川が美しい仁淀川町では200㎞ぶりにコンビニに入りました。限られた食糧でやりくりしながら山の中を走り続けているとコンビニの店内に入っただけで一種の感動を覚えます。このあと439号を東に進んで土佐町早明浦で宿に入りました。ブルべはDNFしたので夜間も走り続ける理由はありません。
3日目は土佐町から大川村経由で新居浜市へ。大川村の集落を抜けると車通り皆無の山道を登ります。
太田尾越という峠を越えて新居浜市別子地区に入ります。快晴で新居浜の市街地に下ると汗ばむくらいの気温でしたが、峠を吹き抜ける風が肌寒かったです。1000m越の山間部を夜通し走るには10月中旬くらいが限度なのかもしれません。
別子銅山の近くを通って標高1000m超から新居浜へ一気に下ります。
下りの途中にあるマイントピア別子で昼食。道の駅は別子銅山観光の拠点を兼ねていて銅山の歴史を感じることが出来て面白かったですよ。
望んだ結果にはなりませんでしたが2日ぶりに伊予西条駅に帰ってきました。総走行距離は約400㎞、本来の三分の二ほどしか走っていませんがこのコースの過酷さは嫌というほど理解できました。今年はブルべの出走が少なく、貴重な機会だったのでなんとしても完走したかったのですが天候と通行止めに阻まれました。とはいえコースは四国の山々を堪能できる素晴らしいものだったのでまた来年再チャレンジしたいと思います。
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