アイズの独り言

2019.07.12

JBT番外編 2

JBT2日目 小雨

 

宿を出たのは夜中の2時、フロントには朝食用のお弁当がお茶と一緒に用意されていました。

嬉しい。

今回のJBTのお宿の条件に朝2時チェックアウトに対応してくださることと、朝食をお弁当で提供してくださることをお願いしてありました。無理なお願いを聞いてくださったお宿の方々には感謝です。

 

 

 

 

 

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【スタート前】

4時のスタートに備え、3時過ぎには各チーム集まってきました。

明け方の、目覚める前の空気がすでに静かに張りつめているのを感じます。

 

 

 

 

 

GPSを使ってリアルタイムでライダーたちの走りを中継するのは今回のイベントの大きな試みの一つでした。それに、コース上でのライダーたちのミスコースやトラブルを把握するためにも重要なアイテムでもありました。

番号に間違いがないか、動作不良がないか確認しながら2人で渡していきます。もたもたしているとあっという間にスタート時間が迫ってきます。あっ、サポートカーにも渡さないと!

 

 

 

 

 

【スタート】

JBT2日目は笠ヶ岳峠までの約23km、標高差1300mアップのタイムトライアルから始まります。走行会ルートの詳細はこちら

スターターは日東の吉川社長と審判のお一人、国際競技審判の資格をお持ちの佐橋さんです。

高山村役場からお借りした非常用の行灯の灯にも負けない、それぞれの前照灯が印象的なスタートの様子。小雨降る夜明け前の非日常が、ライダーだけでなく、ギャラリーたちのボルテージも上げていきます。

 

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【GPS中継】

スタートを見送った後、本部ではGPSを映し出しているプロジェクターにくぎ付けになりました。ポイントが数分おきに地図上を動いているだけのものでしたが、これがなかなか臨場感があって面白いのです。

見ているとあっという間にばらけて順位が見えてきます。そして、その上位チームの速さに感嘆の声を上げ、動作不良なのか電波の不具合なのか、じっと動かないポイントにはヤキモキしたりしていました。そんな中、明らかにミスコースしたチームが2チーム。村道鎌田入線が正式ルートなのですが、県道66号線をそのまままっすぐ上ってしまったのがエメラルドバイク、せっかく村道に入ったのに18km地点の分岐でなんと県道へ下ってしまったのがパナソニックサイクルテック!気づいた時にはまったりとしていた本部がどよめきました。上っているエメラルドと下っているパナソニック、出会えばお互いミスコースに気づくだろうと見守っていましたが、なんと途中にある周回ができるポイントでそれぞれが別ルートを取り、出会うことなくすれ違ってしまいました。。。エメラルドバイクはそのまま上がれば正式ルートに合流するので良いとして、パナソニックは大変です。ミスコースが発覚してから本部ではパナソニックのチームマネージャーとライダーそれぞれに電話をかけていましたが、結局パナソニックのライダーから折り返しの電話があったのは、すっかり下りきって林道の入り口に再び戻ってきたときでした。

ここで少しTTのポイントについて説明しますと、1位の1000点から10位の100点まで100点刻みでポイントが付きます。11位以下は加点も減点もありません。ただし、現役の登録選手、または登録抹消から5年以内のライダーについては500点の減点が課せられます。ですので登録選手を起用する場合、このTT区間で5位までに入らないと減点になってしまうのです。チームの方針としてはここでDNFもあったかもしれませんが、ライダーの意思を確認すると、「もう一度上りなおします。」とのことで、パナソニックはなんと他チームより約20km、標高差600mを余分に走ることとなったのでした。

 

最後尾から果敢に追い上げるパナソニックサイクルテック!(最終伴走車撮影)

 

 

 

で、このGPS中継は上位のチームがゴールした少しあとくらいからアクセス集中によるサーバーダウンで見れなくなってしまいました。。。6時前後でしたので、きっとみんな朝起きて一番にチェックしようとしてくれたのかな。。。運営会社にも早朝から対応していただきましたが結局復帰できずに終わりました。楽しみにされていた方、すみません。私たちも事前にGPS中継を公表していただけにとても残念でしたが、TT区間のこのドラマだけでもオンタイムで体感できて良かった。運営会社からも「リベンジしたい!」とのコメントもあり、次回はきっとうまくいくと思っています。

あと、そう、これは覚書。GPSはすべて同時にオンにする事。

 

 

 

 

 

 

 

村道鎌田入線への曲がり角。

ゴール直前。(5位のテンションシルクと6位のグランボア)

 

 

 

 

 

 

自費で取材に来てくれていたMr.Ogaから素敵な写真を提供していただきました。TT上位のチームだけなのですが紹介させていただきますね。

1位

電動アシストを搭載したTCD(東京サイクル専門学校)

 

 

 

 


2位

YANAGI(柳サイクル)

 

 

 

3位

ベロクラフト

 

 

 

 

4位

ケルビム

 

 

 

 

【リエゾン区間】

TT区間を終えれば残りの50kmほどは時間内に走り終えればよい区間になります。ただし、笠ヶ岳峠の後、渋峠、山田峠、毛無峠と日本屈指の峠を越えるヒルクライムルートが続き、16キロのダートの下り、林道湯沢線を経てゴールとなります。そのハードなコースを究極まで軽量化で追い込んだ車体が無傷で戻ってこれるかがカギとなります。また一方で、ライダーたちにとっては自転車をいたわりながらツーリングを楽しんでいい区間でもあるのです。この日のお天気は良好とはとても言えないお天気でしたが、それでも日頃一緒に走る機会のまずないライダーたちが一緒に走るのですから刺激にならないはずはありません。

 

 

(写真提供 S.Oga)

 

 

京都から応援に来てくださったAさんと。

山田峠付近のウェブ中継班と。

 

 

 

 

 

【お土産】

毛無峠から林道湯沢線に入るところで温泉饅頭のお土産が渡されます。わざわざ割れやすそうなプラスティックの容器に10個入りのところを8個にしてもらいました。実際にこのお饅頭は各チームへのお土産となります。

 

 

激しいダートを下るにはライダーのテクニックも必要ですが、それに対応したバッグや自転車の工夫もそれぞれ違っていて面白かったポイントでもあります。

テンションシルクは今はやりのバイクパッキング方式、ベロクラフトは伝統的なフロントバッグ。

 

 

グランボアは蓋に大きなポケットのあるフロントバッグを試作しましたよ!

チョコには「食べ物が取り出しやすい」と好評でしたが、結果はいかに!

 

 

 

寒い峠でお土産渡しを担当してくださったのは日東の若手スタッフ。前日に寒さ対策のウェアを買い込んで対応してくださいました。到着順に写真撮影までしてくださり、日東ハンドルのインスタには峠の饅頭屋リザルトが公開されています。是非、見てみて!

 

 

いくつもの峠を越えてきたライダーたちはこの青いバンを見つけてきっとホッとしたに違いありません。

 

 

 

 

【林道湯沢線】

JBT走行会のクライマックス、16キロに及ぶ下りのダートです。

特に標高の高いところがガレていて多くのチームの自転車に傷を負わせました。パンクだけでなく、減点対象となるキャリアや泥除けの破損、螺子の緩みや欠損、部品の脱落などが多発し、拮抗する上位入賞車の総合結果に影響を与えました。プロとしてお客様に納車する自転車ではあってはならないことですが、これこそがJBTを開催する大きな意義の一つかもしれません。ここでの経験が新しい製品や具現化したアイデアを磨き上げていく過程になるのは間違いないのです。

これから向かう林道がお土産ポイントから見えています。

 

林道の入り口

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【走行後の各種審査】

ライダーたちはこれだけのコースを走ってきて、まだ終わりではありません。お土産や自転車のチェックを受け、更にステージで輪行するという課題が残されています。

 

 

まずはお土産チェックです。日東の吉川社長が担当してくださいました。日頃の日東製品チェックの厳しさが今回のお饅頭チェックにも発揮されていましたよ。

写真は1番に戻ってきたケルビムです。ライダーと自転車がトータルでコーディネイトされていてインパクト絶大でした。今回のお土産専用に一番振動を受けにくいであろう後ろにキャリアとバッグを製作し、更に緩衝材で保護するという徹底ぶりで、猛スピードでダートを下ったにもかかわらずお土産状態はAランクでした。お見事!

 

 

 

 

続いて車検。プレゼン前の車検を担当した車検チームが担当します。車検を受けているのはMONTSON(山音製輪所)です。

 

ホックで留める泥除けは素早く脱着できてとても斬新なアイデアでした。お土産ポイントでは自転車は無傷のようですが。。。

林道での振動で泥除けが外れて巻き込んでしまったそうです。

自ら「こうやって自分で泥除けを石でつぶして畳んだんです。」と。

しかも、「カメラがあったらなぁ、と思ってたんですよ。撮ってください。」と、林道でのパンク修理のついでに再現して見せてくれたのでした。

 

 

 

そして、輪行タイムトライアル。

自転車を輪行袋に入れて担ぐまでと、袋に入れた自転車を組み上げるまでの時間を競います。ですが、ただ速いだけではいけません。その手際や丁寧さを審判が判定します。

写真は今回唯一の女性ライダーを起用したオオマエジムショ。あれだけのコースを走り切るのもすごいのに、なんとダートは初めてとのこと。乗ったり降りたりで何とかダート区間を走破し見事完走されました。自転車もお土産も無傷の状態でしたよ。

 

 

こちらはプライベーターで参加のNAGARA。

 

このNAGARAさん、恐るべきガレージビルダーで、一年に一台のペースで様々な素材を使ってオリジナル自転車を自作されています。今回の場合もフレームだけでなく、キャリアや泥除けまでカーボンで自作したというのですから本当にびっくりしました。しかも、フレームの芯を観る定盤の代わりにホームセンターなどで売っている合板を使っているというのです!!! オリジナルパーツ満載のワンオフのカーボンバイク、ウェットカーボンといえどプロとして値段を出したら一体いくらになるのでしょうか。。

自ら作り、自らライダーとして完走されて、しかも自転車も完走後の車検で破損個所はありませんでした。自転車とライダーの一体感もすばらしかった。

「負けちゃうかも。。」

参加したプロフェッショナルたちがきっと全員思ったはずです。

 

 

 

【輪界のホープたち】

今回のJBT、実は企画当初は参加チームは5チームも集まらないんじゃないか、そう言われていたそうです。そんな中、東京サイクルデザイン学校から職員のタカギサイクルワークスさんも含めて4チームもの参加があり、その数をグンと伸ばすことができました。今回、競技すべてを完走できたのは2チームでしたが、どのチームからも真剣な熱意が伝わり、今回のJBTの深みを増す役割を果たしたことは間違いありません。今後の自転車人としてのそれぞれの人生にこのJBTが良い経験として生かされますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

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今回の結果は今までの単にスピードを競う自転車競技の枠で考えるとしっくりこない方がたくさんおられると思います。

競技は2日間にわたり、いくつもの項目を多くの目で真剣に審査し、ポイントに換算していただきました。今回の総発行ポイントは92691点、ただし、これには重量ポイントのマイナス26650点も含みます。主観的な要素を多く含む審査員5人の持ち点はそれぞれ4000点づつですので5人合わせても20000点で、主観的な評価を表す「プレゼンポイント」だけでは到底勝つことはできません。重視すべきは軽量化の表れである「重量ポイント」と、ツーリング車の今の課題である「ボーナスポイント」でした。

泥除けやキャリアとバッグ、自己完結する発電機を装備しつつ、軽く作る。もちろん、「軽い自転車」=「良い自転車」ではありません。ですが、たった2日間の技術コンペでその工房の技術を図るとすれば、「軽さ」はその技術を際立たせるのにとても有効です。数グラムの軽さを追求するにはあらゆる仕様パーツを吟味する必要があり、加工を要します。素材の知識、構造への理解、そして技術。こういったものがないと正しい軽量化は不可能なのです。

また、発電機(ダイナモ)については前後とも完備していたのはグランボアとベロクラフトだけでした。すぐそこにコンビニがあり、ロングライドイベントもそれほど盛んではない今の日本でのツーリングにおいて、自己完結する発電機の必要性はあまり感じられないかもしれません。ですが、世界での動向やツーリング車としての特性を考えたとき、課題を多く残しているのは発電機へのアプローチなのだと思います。

ボーナスポイントはそれらを自転車に取り入れるだけで取得できるので、全チームがそれらを装備した自転車をエントリーさせたとしたら、ボーナスポイントの総発行ポイントは40000点にもなります。ですが、実際は21000点のみの発行にとどまりました。だからと言って、多くのチームが基準である10キロ以下に車両を仕上げ、重量ポイントが膨らんだかといえばそうではなく、重量ポイントに至ってはポイントをゲットしたチームは16チーム中5チームしかありませんでした。結果、重量ポイントの総発行ポイントはマイナスに大きく転じたのです。(+3600-30250=-26650)やはり、この複雑なポイントの仕組みを理解して戦略を練ることは重要でした。ボーナスポイントは0でも軽量化で大きくアドバンテージを示したテンションシルクは見事上位に入賞しているのですから。ただ、仕様パーツを「オリジナル」「モディファイ」「純国産」「海外生産品」と細かく仕訳した「パーツポイント」については、判断に困る事例が多くあり混乱を招きました。次回があるとすればここは大きく変わるところかもしれません。

 

 

今回の結果について詳細はJBTのホームページに掲載済みですのでそちらをご覧ください。また、これから発売予定のサイクルスポーツとバイシクルクラブでも記事になる予定です。できればお買い上げのうえご購読くださいませ。

 

 

 

今回のJBTでは開催地である高山村とYOU游ランド、高山村観光協会の皆様には大変お世話になりました。数えてみると、準備のために訪村した数は去年の夏から6回となり、本番は7回目でした。京都からだと往復でおおよそ1000キロ。フランスと比較すると近いものですが、さすがに度重なる車移動は少々堪えました。だけど、ほんと、高山村でよかった。コースも会場も最高でした。また、JBT本番では特に役場への人的援助はお願いしていなかったのですが、2日間とも担当課長さんは会場まで来てくださり、2日目の走行会では一緒にスタートからかたずけまでお気遣いいただきました。取材も地元の新聞社からタウン情報誌、ケーブルテレビまで来ていただいて盛り上げてくださいました。

日本初のJBT開催に大変ご協力いただきました。ありがとうございました。

 

 

 

2日間のJBTのスケジュールがすべて終わり、親睦会での一コマ。

親方、なんと、サプライズで胴上げしていただきました。

ありがとうございました。

 

 

 

 

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さて、次は来月。フランスでのグランボア2回目となるコンクールです。4年に1回のパリブレストパリとの共同開催となっているので、2年前のコンクールと比べると更に大舞台です。今回の要綱は面白いんですよ。とある架空のお客様からのご注文という形でエントリーさせるべき自転車のポイントが示されているのです。お客様からのご依頼とあらば簡単に無視することはできませんね。

 

【ムッシュー(マダム)ドリーマーさんからのご注文】

 1. パリスブレストパリの歴史にふさわしい美しさと技術を備えた自転車。
 2.  80時間余り自転車に乗って起こる手のしびれを防ぐ工夫を自転車につける。
 3. ハンドル周りのケーブルをうまく処理する。GPS、スマホ、ライト等のコードをうまく処理する。
 4. PBPのチェックポイントで出すカードが素早く提示できるような工夫をする。また自転車のゼッケンナンバーもスマートに取り付ける。
 5. 走行中の食料の取り出しが容易なバック等の工夫をする。
 6. 非常の際のビバークセット、つまり直径10センチで長さ20センチの円筒状容器を美しく自転車に積載する。その中には小さな寝袋と膨らまし可能なマットが入るもの。
 7. PBP規格に則った自転車。そして前後ライトの点、消灯、明るさ調整が乗りながらできること。後ライトは点滅しないもの。
 8. 後輪の着脱が容易な自転車。
 9. 雨天の際、後続の人に水をハネない工夫をした自転車。
10. ブラブラカー(小型車)のトランクに入るデモンターブルの自転車。

 

と、こんな具合。

JBTを終えてから早速にフレーム作りから始まっています。もちろん、お客様のお仕事をこなしながらですよ。そろそろあとひと月となりました。親方を先頭にスタッフそれぞれで来月のコンクールに向け集中していきます。

と、その前にグランボアのJBT号についてはまた記事を書きたいな。書けるかな?

 

 

#japanbiketechnique #ジャパンバイクテクニーク

つちやはるみ

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