アイズの独り言>

いよいよオリンピックが始まりました。

普段はこれといってスポーツ観戦するわけではありませんが、やはりトップクラスの選手たちの真剣勝負はどれも感動的です。これからしばらくは楽しみですね。開会式も素晴らしかった。何度も訪れた街のあちこちが舞台として使われていて楽しいし、雨もなんのそののその演出は何ともフランスらしい。また総集編できれいにまとめられるでしょうからまた見たいと思います。

 

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さて、この春に訪れたフランスでグランボアで扱いのある2つのサドルメーカーを訪問してきました。

先日それぞれから入荷もあったところですし、紹介したいと思います。

 

 

イデアル -IDÉALE-

フランスのトゥールーズにある完全手作りのサドルメーカーです。

もともとは1890年から100年近く操業した超有名サドルメーカーですが、大量生産品が市場に流通する時代の波にのまれ1984年にいったん廃業したメーカーでもあります。日本でも古くから自転車を愛好する方にとっては今も憧れのサドルとして愛され続けています。

そのイデアルが復活したのが2017年、ちょうど私たちが最初のコンクールでフランスにいた時に新生イデアルもブースを出していて、声をかけていただいたのが始まりです。

今回の訪問は2018年に工房に初めてお邪魔してから6年ぶりです。あの時とは同じ敷地内ですが、共有していた建屋から占有できる建屋へ引っ越し、機械だけでなく、一緒に働くパートナーも増えていました。

 

イデアルの拘りや製造工程については2018年のレポートを見ていただくとして、今回はアルミリベットの慣らし方を教わってきました。

「必ずきれいなハンマーでリベットを少しづつ慣らすんだよ。」

日本でアルミリベットの縁がわずかに指にあたる場合があるのですが、そんなときの解決方法を実演してくれました。

 

 

この6年の間にたくさんのサドルを世界中に販売し、有名ブランドとのコラボ企画もこなし、今年中にはいよいよ新しいモデルも発表できるかも、とますます意欲的です。また、サドルのほかにキャリアや新しい試みにもチャレンジしているとの話も聞けました。変化していくイデアルも楽しみですね。

 

 

お馴染みの#90。

丈夫なフルグレインレザーを使用していますが、イデアル独自の鞣し技術で新品でも体にスッと馴染んでくれます。

スチールベースのモデルのリベットはいずれもIDEALE刻印入りの小鋲となります。重さは大体580グラム前後。

 

 

こちらは2019年のコンクールでグランボアのために製作してくれたチタンレールのアルミリベットモデル。重さはなんと380グラムほどです。

 

 

ナチュラルカラーのレザーに銅の大鋲を合わせてみました。アルミリベットのものより少し重くはなりますが、とてもエレガントです。

ご希望の方には追加料金4,400円で承ります。

 

 

 

 

また、大鋲にオリジナルの刻印を入れることも可能です。


ここちらは追加料金8,800円。

今の円安の影響で価格がかなり上がってしまい、とても良い物なのに多くの方に気軽に使っていただけないのが寂しいところです。ですが、「今」手に入る本物のレザーサドルを是非手に取って、その良さを実感していただきたい。だからこんな時代でも頑張って在庫を持つようにしています。これからご紹介するベルトゥ製品につきましても同様ですが、彼らや我々が不誠実な高値を付けているわけでは決してありません。物の価格は国を移動させるだけで変動するものですが、今はそれがとても大きいのです。

 

 

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ベルトゥサイクル -BERTHOUD Cycles-

親方たちの世代にとって、「ソローニュ」と呼ばれていた帆布製の自転車用バッグが馴染みがありますが、それらの製造を引き継ぎ、バッグやサドル、ステンレス製の泥除け、バーエンド、バーエンドミラーなどを製造している主に自転車部品を製造販売しているメーカーです。私たちとの付き合いはソローニュから引き継いだGilles BERTHOUD (ジルベルトゥ)時代からで、帳簿を調べてみると1998年が取引の始まりです。当初はフロントバッグなどのほかに、マハックのフーデットレバーやサンプレのダブルレバーなど、フランスメーカーのデッドストック品や、日本国内では手に入らないレストアに必要な様々な小物や道具なども融通してもらっていました。また、ジルベルトゥはグランボアのタイヤを最初にフランス国内で販売してくれた問屋さんでもありました。

代は変わってもかれこれ四半世紀以上のお付き合いなのです。

ですのでこの26年の間ですと、何度もPont-de-Vouxにあったジルベルトゥには訪れたことがあり、ジルのご自宅にも宿泊したことがあるのですが、数年前にオーナーが変わり工房の場所も移動したBERTHOUD Cycles (ベルトゥサイクル)は今回が初めてです。

リヨンから車で2時間、FLEURVILLE (フルールヴィル)。日本語にすると「花の村」、美しい名前ですね。

古いレンガ造りの建屋を利用した素敵な工房です。建屋のレストアに1年近くをかけたと話してくれました。訪れたのは実は日曜日で、ベルトゥサイクルはお休みの日でした。ですので無理にはお願いしなかったのですが、若い女性ながらバーエンドやバッグミラーといったCNCでの加工製品を専門に担当しているマージョリーとサドルの製造責任者であるクリストフがお茶とクッキーを用意して待っていてくださいました。

一通り、工房内を案内してもらったのですが、実はほとんど写真がありません。というのもお休みに開けていてもらっているという、なんか変な気を使ってしまったのかな。あとから「失敗した~。。」と悔やんでいます。

 

日本では圧倒的に帆布製のバッグ類が有名ですが、新素材を使った軽量バッグも開発していますし、帆布のバッグのデザインも少しづつモダンに変わりつつあります。縫子さんもジルベルトゥ時代からのベテランが今も働いているそうですが、その方もあと数年で定年退職するとのこと。今はその仕事を引き継ぐ若手の育成に力を入れているそうです。

 

ベルトゥのサドルもとても高品質のレザーを使用し丁寧に作られています。ベースに合成樹脂を使いイデアルに比べるとモダンな印象です。

アラヴィアスパンはいずれも同じ形ですが、アラヴィがチタンレール、アスパンがスチールベースとなっています。最近ではアスパンの穴あきモデルを取り扱い始め、オンラインストアからでもご注文いただけます。マリーブランは一応女性用としていますが、長さが短くなっているだけで形状はアスパンやアラヴィと同じです。男性でも小柄な方に向いているサドルです。そのほかにも街乗り用のモンテや、よりレーシーなモデルのガリビエなども、少しお時間を頂戴できれば取寄せも可能です。興味のある方はお問い合わせください。

 

 

オリジナルの完成車も展示してありました。

フレームも専属のビルダーが製作しているそうです。

 

 

 

 

これはコンクール出走車ですね。2017年だったかな。

こうやって見ると、ベルトゥサイクルはグランボアとよく似た総合完成車メーカーなんです。

 

 

*****

ベルトゥサイクルの後はまた車で移動して今度はジャンビェールのお宅にお邪魔してきました。

ジャンピェールって覚えてますか?

とっても色っぽい自転車の写真を撮るフォトグラファーです。(余計わかりにくい??)

今はパリから離れ、のんびりと第2の人生を歩んでいるとのこと。自転車は以前ほど熱心ではありませんが、唯一グランボアの自転車は大事にしてくれていました。

一晩お世話になって、積もる話をし、お互いの健康を祈りつつ、私たちは翌日パリに戻ったのでした。

 

 

 

 

つちやはるみ

今回の旅行でイデアルの工房を訪れる前に、実はジルベルトゥにもお邪魔してきました。

ジルのお店はポンドヴォー(Pont de Vaux) というリヨンやスイスのジュネーブに程近いフランス東部にあります。パリからTGVで最寄り駅まで1時間半、そこから車で30分。そう、結構な田舎街なのですよ。今回、訪問を打診したときも「駅まで迎えに行くよ。」と言って頂いていたのですが、その後の旅のスケジュールを考えて駅でレンタカーを借りる事にしました。

 

車を走らせて街に入るといろんな事が思い出されます。

初めてジルベルトゥを訪ねたのは1998年の6月でした。小さなレンタカーでフランス中の自転車屋さん巡りをしていて、その途中で立ち寄ったのが最初でした。それこそ、前回の「イデアル」のお話と重なりますが、それまでのツーリング車に欠かせないバッグのブランド「ソローニュ」の製造を引き継いだフランスのショップがあると聞いて覗きに行ったのです。ブランド名は「ソローニュ」から「ジルベルトゥ」に変わりましたが、あの伝統的なスタイルと製法はそのままに完全工房内でハンドメイドされていて、大切なものがちゃんと守られている事に安堵したものでした。それに、中ではバッグだけでなく、ジルベルトゥブランドの自転車、しかもツーリング車をメインにフレームも製作されていました。親方や日本のマニアが好むエルスやサンジェなどとは違う、質実剛健な作りの物ですが、当時は既にロードバイク全盛、フランスでもツーリング車を扱っているショップはとても珍しいものだったのです。

 

1998年6月

写真はジルベルトゥの店の前に立つ40歳の親方。ちゃんとネクタイ締めてますね~。

 

1998年6月

ほら、こんなレンタカーで2000キロ近く走り回っていたんですよ~。 手元にあるのはミシュランのロードマップですね。リクライニングもしないシートで地図とにらめっこしながら旅してました。「あらー。あれからもう20年も経つんだ。。」と、我ながらしみじみ。

 

で、それから数年はたびたびお訪ねしてはバッグのあれこれを相談したものでした。ジルのオリジナルのバッグは基本的に夜間も走るブルベが盛んなフランスらしく安全面と機能面が重視されていて、夜間走行のための目立つ反射テープやワンタッチで脱着できるプラスティックのアタッチメントの仕様になっています。ですが、グランボアはヴィンテージの自転車にも合わせられるよう、昔ながらのデザインに拘りつつ、現代でも使いやすい仕様にアレンジしてもらっています。たとえばフロントバッグはサイドポケットの膨らみがエルゴレバーの操作の邪魔にならないようスリット式にしてもらったり、セパレートパニアバッグには輪行時に持ち運びしやすいよう取っ手を付けてもらったり。今も定番として販売している半円形のサドルバッグは初めて見せてもらったときはフロントバッグだったんですよ。それをベルトやフラップの位置を調整してサドルバッグにしてもらいました。トートバッグショルダーバッグなども見本を持ち込んで作ってもらったものです。。いずれももう、10年を遥かに超えるロングセラー商品となりました。。

ジルはジルでグランボアが初めて2005年に650Bタイヤのシプレを製作したときにはフランスでいち早く取り扱ってくれましたし、2008年に訪問したときには発売前のサドルのプロジェクトの話を聞かせてくれました。

 

 

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イデアルのお話の後でちょうど良いのでピックアップしますが、グランボアで定番で取り扱っているジルベルトゥのサドルはツーリング車や街乗りに似合うアラヴィアスパンマリーブランモンテの4種類。いずれも上質な革を使用し、分解交換可能なベースとクラシックにもモダンにも使えるオリジナルのデザインが大きな魅力です。それに、イデアルとは違ってステンレスやチタン、プラスティックなどがベースに採用されていますので軽いのも特徴です。

 

特にこのコルク色は今も昔も他に見た事がなく、私的にはお気に入り。どんな色にも合わせられて自転車をとても新鮮でスタイリッシュに仕上げてくれるように思います。使用感もとても良いです。馴染みやすくヘタリ難い。私たちがジルのサドルのプロジェクトを聞いたのが2008年、そして、ようやく発売されたのは2011年になってからでした。じっくりと時間を掛けて開発し、製品化されたのが伺えます。

 

ジルベルトゥの製品の良いところは製品のクォリティの高さだけでなく、長く使える工夫がされていることです。バッグもどんなボロボロのものを修理に出してもきちんと直してくれますし、サドルはリベット一つまで補修部品を提供しています。

自転車はたくさんの部品で構成されていて、その部品のひとつが欠けても乗り続けられない物なのです。グランボアではグランボアで新たに作る自転車のためと、部品や補修パーツの供給が無くなってしまい乗れなくなってしまった自転車のために、結局様々な部品を自ら開発せざるを得なくなりました。ですので、ジルベルトゥのようなメーカーがフランスで元気に頑張っているのは本当に心強いのです。目新しさや流行に流されない、むしろ自ら流行を生み出してゆく、そんな強さがジルベルトゥにもあると思っています。

 

 

 

 

*****

さて、今回はなんとその2008年にお邪魔してからの10年ぶり。その10年の間にジルベルトゥは新しいオーナーに代替わりしていました。

 

左からフレームビルダーのバンサン、新しいオーナーのフィリップ、この4月にパリからチームに参加したばかりのクレメン、親方、イザベル。昔からジルのお店でお会いしていたのは彼女だけとなりました。ですが、バンサンはジルベルトゥに来るまではグランボアとお取引のあるオランダのショップでお仕事をされていたそうで、グランボアのことも良くご存知でした。それにフィリップさんはパリブレストパリに5度も出場経験があるそうですよ。すごいですね。グランボアのタイヤ、特に26Cを愛用されているとの事。嬉しいです。

 

 

そんな新しくなったジルベルトゥではいくつか新しい商品も発売されています。

CNC加工機を自社で持つジルベルトゥが作ったバックミラー。バーエンドに取付ができて、ミラーはボールジョイントで様々な角度に調整できます。何より小ぶりでスタイリッシュなのがいいですよね。後ろを振り向くのがツライ年代には必須アイテムかもしれませんよ!

 

 

そして、ボトルケージに収まるシンプルなツールバッグ

トーストラップを使えばサドルの下にも固定できる優れもの。開口部はベルト式なので中のものが飛び出す心配もないですね。お色はグレーと黒がございます。

ミラーとツールバッグは既にオンラインストアでも販売を開始していますがただ今の在庫はツールバッグの黒が1点のみとの事。もう、間も無く再入荷してまいりますので楽しみにお待ちください。

 

 

あと、こちらはラックバッグというもの。

大きさは半円形のサドルバッグと同じくらいですが、バッグと一体になっている2本のベルトでフロントキャリアやリアパニアなどの座面に固定して使います。

フィリップ考案のバッグだそうで、「ほら、こうやって使うんだよ。工具とチューブと、あとランチを入れると丁度良い大きさだろ?」と。

うーん。。日本のおむすびやカップヌードルはちょっと無理ですけど、エナジーバーやバゲットのサンドイッチだったら大丈夫かな?? でも、カッコイイですよね。最小限の荷物もレーサーウェアのポケットをパンパンにして運ぶんではなくて、キャリアを使って自転車に運ばせる。朝サイやお馴染みのツーリングコースのときには重宝しそうですね。ベルトが面倒かなとも思いましたが意外と大丈夫でした。

こちらもオンラインストアでの取り扱いが決まりました。間も無く販売開始しますね。

 

という具合にとても意欲的に新商品の開発に取り組まれていて、今後がとても楽しみ。

 

Merci! Team Berthoud!

つちやはるみ

なっちゃんの記事に触発されて北海道に行きたくなった人も少なからずいるんじゃないかな。私もその一人、時には一人旅もいいですよね。独身の頃は1人で海外でもホイホイ出かけていたのに、結婚してから旅上手の親方にまかせっきりでした。そのうちフラッと一人で出かけてみようかな。考えるだけでちょっとドキドキしますね。

 

旅先で何かあったらどうしよう。。と思うのは誰もが思うこと。ベテランサイクリストは大抵のトラブルに自分で対応できる人が多いので問題ないかもしれませんが、初心者はなかなかそうも行きません。グランボアのタイヤは国内どこでも1本から送料無料でお送りしていますが、トラブルはパンクだけとは限りません。そんな時、旅先で助けてくれるショップがあれば少しは安心です。グランボアのカタログの巻末にはグランボアとお取引のあるお店の情報を掲載しています。何か旅先でお困りごとがあけば是非尋ねてみてください。

 

 

それに、北海道(札幌)にもグランボアの製品を扱ってくださっているお店があるんですよ。

昨年オープンされたばかりのOldNewさん。カフェも併設されているそうで1杯120円ですって。先日ご注文を頂いたところなのでグランボアのタイヤがそろそろ届く頃です。

是非、覗いてみてくださいね。

 

つちやはるみ

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