アイズの独り言

今回の旅行でイデアルの工房を訪れる前に、実はジルベルトゥにもお邪魔してきました。

ジルのお店はポンドヴォー(Pont de Vaux) というリヨンやスイスのジュネーブに程近いフランス東部にあります。パリからTGVで最寄り駅まで1時間半、そこから車で30分。そう、結構な田舎街なのですよ。今回、訪問を打診したときも「駅まで迎えに行くよ。」と言って頂いていたのですが、その後の旅のスケジュールを考えて駅でレンタカーを借りる事にしました。

 

車を走らせて街に入るといろんな事が思い出されます。

初めてジルベルトゥを訪ねたのは1998年の6月でした。小さなレンタカーでフランス中の自転車屋さん巡りをしていて、その途中で立ち寄ったのが最初でした。それこそ、前回の「イデアル」のお話と重なりますが、それまでのツーリング車に欠かせないバッグのブランド「ソローニュ」の製造を引き継いだフランスのショップがあると聞いて覗きに行ったのです。ブランド名は「ソローニュ」から「ジルベルトゥ」に変わりましたが、あの伝統的なスタイルと製法はそのままに完全工房内でハンドメイドされていて、大切なものがちゃんと守られている事に安堵したものでした。それに、中ではバッグだけでなく、ジルベルトゥブランドの自転車、しかもツーリング車をメインにフレームも製作されていました。親方や日本のマニアが好むエルスやサンジェなどとは違う、質実剛健な作りの物ですが、当時は既にロードバイク全盛、フランスでもツーリング車を扱っているショップはとても珍しいものだったのです。

 

1998年6月

写真はジルベルトゥの店の前に立つ40歳の親方。ちゃんとネクタイ締めてますね~。

 

1998年6月

ほら、こんなレンタカーで2000キロ近く走り回っていたんですよ~。 手元にあるのはミシュランのロードマップですね。リクライニングもしないシートで地図とにらめっこしながら旅してました。「あらー。あれからもう20年も経つんだ。。」と、我ながらしみじみ。

 

で、それから数年はたびたびお訪ねしてはバッグのあれこれを相談したものでした。ジルのオリジナルのバッグは基本的に夜間も走るブルベが盛んなフランスらしく安全面と機能面が重視されていて、夜間走行のための目立つ反射テープやワンタッチで脱着できるプラスティックのアタッチメントの仕様になっています。ですが、グランボアはヴィンテージの自転車にも合わせられるよう、昔ながらのデザインに拘りつつ、現代でも使いやすい仕様にアレンジしてもらっています。たとえばフロントバッグはサイドポケットの膨らみがエルゴレバーの操作の邪魔にならないようスリット式にしてもらったり、セパレートパニアバッグには輪行時に持ち運びしやすいよう取っ手を付けてもらったり。今も定番として販売している半円形のサドルバッグは初めて見せてもらったときはフロントバッグだったんですよ。それをベルトやフラップの位置を調整してサドルバッグにしてもらいました。トートバッグショルダーバッグなども見本を持ち込んで作ってもらったものです。。いずれももう、10年を遥かに超えるロングセラー商品となりました。。

ジルはジルでグランボアが初めて2005年に650Bタイヤのシプレを製作したときにはフランスでいち早く取り扱ってくれましたし、2008年に訪問したときには発売前のサドルのプロジェクトの話を聞かせてくれました。

 

 

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イデアルのお話の後でちょうど良いのでピックアップしますが、グランボアで定番で取り扱っているジルベルトゥのサドルはツーリング車や街乗りに似合うアラヴィアスパンマリーブランモンテの4種類。いずれも上質な革を使用し、分解交換可能なベースとクラシックにもモダンにも使えるオリジナルのデザインが大きな魅力です。それに、イデアルとは違ってステンレスやチタン、プラスティックなどがベースに採用されていますので軽いのも特徴です。

 

特にこのコルク色は今も昔も他に見た事がなく、私的にはお気に入り。どんな色にも合わせられて自転車をとても新鮮でスタイリッシュに仕上げてくれるように思います。使用感もとても良いです。馴染みやすくヘタリ難い。私たちがジルのサドルのプロジェクトを聞いたのが2008年、そして、ようやく発売されたのは2011年になってからでした。じっくりと時間を掛けて開発し、製品化されたのが伺えます。

 

ジルベルトゥの製品の良いところは製品のクォリティの高さだけでなく、長く使える工夫がされていることです。バッグもどんなボロボロのものを修理に出してもきちんと直してくれますし、サドルはリベット一つまで補修部品を提供しています。

自転車はたくさんの部品で構成されていて、その部品のひとつが欠けても乗り続けられない物なのです。グランボアではグランボアで新たに作る自転車のためと、部品や補修パーツの供給が無くなってしまい乗れなくなってしまった自転車のために、結局様々な部品を自ら開発せざるを得なくなりました。ですので、ジルベルトゥのようなメーカーがフランスで元気に頑張っているのは本当に心強いのです。目新しさや流行に流されない、むしろ自ら流行を生み出してゆく、そんな強さがジルベルトゥにもあると思っています。

 

 

 

 

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さて、今回はなんとその2008年にお邪魔してからの10年ぶり。その10年の間にジルベルトゥは新しいオーナーに代替わりしていました。

 

左からフレームビルダーのバンサン、新しいオーナーのフィリップ、この4月にパリからチームに参加したばかりのクレメン、親方、イザベル。昔からジルのお店でお会いしていたのは彼女だけとなりました。ですが、バンサンはジルベルトゥに来るまではグランボアとお取引のあるオランダのショップでお仕事をされていたそうで、グランボアのことも良くご存知でした。それにフィリップさんはパリブレストパリに5度も出場経験があるそうですよ。すごいですね。グランボアのタイヤ、特に26Cを愛用されているとの事。嬉しいです。

 

 

そんな新しくなったジルベルトゥではいくつか新しい商品も発売されています。

CNC加工機を自社で持つジルベルトゥが作ったバックミラー。バーエンドに取付ができて、ミラーはボールジョイントで様々な角度に調整できます。何より小ぶりでスタイリッシュなのがいいですよね。後ろを振り向くのがツライ年代には必須アイテムかもしれませんよ!

 

 

そして、ボトルケージに収まるシンプルなツールバッグ

トーストラップを使えばサドルの下にも固定できる優れもの。開口部はベルト式なので中のものが飛び出す心配もないですね。お色はグレーと黒がございます。

ミラーとツールバッグは既にオンラインストアでも販売を開始していますがただ今の在庫はツールバッグの黒が1点のみとの事。もう、間も無く再入荷してまいりますので楽しみにお待ちください。

 

 

あと、こちらはラックバッグというもの。

大きさは半円形のサドルバッグと同じくらいですが、バッグと一体になっている2本のベルトでフロントキャリアやリアパニアなどの座面に固定して使います。

フィリップ考案のバッグだそうで、「ほら、こうやって使うんだよ。工具とチューブと、あとランチを入れると丁度良い大きさだろ?」と。

うーん。。日本のおむすびやカップヌードルはちょっと無理ですけど、エナジーバーやバゲットのサンドイッチだったら大丈夫かな?? でも、カッコイイですよね。最小限の荷物もレーサーウェアのポケットをパンパンにして運ぶんではなくて、キャリアを使って自転車に運ばせる。朝サイやお馴染みのツーリングコースのときには重宝しそうですね。ベルトが面倒かなとも思いましたが意外と大丈夫でした。

こちらもオンラインストアでの取り扱いが決まりました。間も無く販売開始しますね。

 

という具合にとても意欲的に新商品の開発に取り組まれていて、今後がとても楽しみ。

 

Merci! Team Berthoud!

つちやはるみ


2018.03.20

イデアル復活!

フランスのヴィンテージ自転車が好きな方なら必ず憧れるブランドのサドルがあります。

 

IDEALE (イデアル)

 

1990年代後半まではかろうじて製品が流通していたようですが、最後の製品は全盛期の製品とはまったく違う品質のものへと変わってしまい、そのうちにその名を聞かなくなってしまっていました。それが、なんと、フランス人の手によって復活を果たしたというのです!

 

かつての良い製品や良いブランドが無くなってしまったという悪いニュースばかり耳にしてきた私たちにとって、それはとても嬉しいニュースでした。それも、当時の職人に何年も掛けて手ほどきを受け、完全ハンドメイドでの復刻というではありませんか! これは是非、製造現場を見てみたい。昨年のコンクールのときにすでに面識は出来ていたので、メールで打診すると快く受け入れてくれ、「それなら、取って置きの作業を見てもらえるように準備しておくよ。」とのこと。いやー。嬉しいな。

 

***

新しいイデアルの工房はフランスの南西部の町、トゥールーズにあり、フレッドとカティアのご夫婦2人で営まれています。フレッドは現在45歳、以前はパリでインターネット関連のお仕事をされていたそうですが、ある日思い立ち、職人の道へ。

「なぜサドルだったんですか?」と聞くと、少し笑って、「サドルは未だ誰もやってないと思ったんだよ。それにもっと簡単だと思ったんだ。」と照れくさそう。確かに、思い立ってから今年で丁度7年、技術の習得だけでなく、失われた工具や道具、型なども一から用意する必要がありました。工程を一通り見せてもらいましたが、よくぞ途中で諦めたりせずここまで成し遂げてくれたものです。

 

 

革の選別。

イデアルのサドルに使用される革はいずれもフル グレインレザー (Full grain leather)で、オーク樹皮から作られた天然のタンニンの溶液に12ヶ月間漬けてなめしています。 イデアルが必要とする革の強度と美しさを得るためには1881年から続くこの伝統的な鞣しの技術が重要なのだとか。また、サドルの硬さには乗り手の体重75キロを境に2種類用意されていますが、その識別は革の厚さではなく、質によるものとのこと。一枚の革の切り抜く場所によってその質は異なり、その識別こそ一つの技術なのです。ですので、カットの仕方は現場では見せていただきましたが、撮影はNG。

 

 

 

 

カットされた革にはこの段階で識別番号が振られ、製品管理のための台帳に登録されます。そして、丸1日水に浸されたのち、型を使って基本の形に成形され、再び丸一日かけて乾燥させます。手前にあるのがその段階のサドル。
フレッドは私たちに分かりやすいようにいくつかの段階の半加工品を準備しておいてくれました。

 

 

 

 

成形したサドルを更に整えていきます。

さまざまな器械や道具を駆使してあの形が出来上がるのがお解りいただけるでしょうか。

 

 

 

そして、形が決まったらあの刻印が押されます。

サイドにはお馴染みのイデアル90のマーク。そして座面にはルブールのサイン。

このルブールのサインはルブール考案の技術で革の「慣らし」が施されている証です。通常、革のサドルを自分の体に馴染ませるにはしばらく乗り込む必要があり、その間固いサドルの上では痛い思いをする事が多いのですが、この工程を入れることでそのつらい期間が短縮されるのです。確かにこの工程の前後の革の状態を比べさせていただきましたがまるで違うのです。この工程をどう日本語で説明するべきか難しいところで、ここでは「慣らし」としましたが、英語でBreak-inと表現されることを考えるともっと強い言葉でもいいような気がします。「革の腰を砕く」それぐらい言っても良いのかも。

その工程がこの刻印を入れた後専用のグリス(サドルにも付属しています)を使って行われるそうですが、実際は見せてもらえませんでした。現在、この技術を習得しているのはフレッドとその師匠のみ。門外不出、一子相伝の技術つてところでしょうか。

 

 

 

 

さてベースですが、これもフレッドとカティアによって鉄板から手作りされていました。

鉄は硬いのでカシメるのも時間がかかり大変。それでもしっかり丈夫にしなくては。ここで定期的に製作して鍍金屋さんで鍍金してもらうそうです。

 

 

 

 

革とベースをリベットで止めていきます。

イデアルのバックプレートの装着。出来上がりつつあるサドルが愛おしそうなフレッド。

 

ベースを工具を使って入れ込んで形は出来上がり。

 

 

まだ揃っていない道具があり、今のところ、月産20個だそう。これを聞いてちょっとビックリしました。。。既にお手元にある方は本当にラッキーですね。ショッピングサイトでも在庫を上げるとすぐ売れてしまい、なかなか在庫を維持する事が難しいのです。。。ご希望の方はどうぞ根気良くお待ちくださいませ。来週、また少し入荷する予定です。

 

アイズでは既に親方と私とチョコがテストを兼ねて使用していますが、3人とも乗りはじめから痛みも違和感も無く既になじんでいたかのような乗り心地を味わっています。特にチョコは昨年のコンクール後から真っ先にサンプル品をブルベなどで長距離使用をしていますがとても気に入っているようです。

ただ、チョコの場合、体重は70キロなので最初はソフトタイプから乗り始めたのですが、雨のブルベ600キロですぐに革の馴染が出始めました。その後ハードタイプも乗り比べしてもらったところ、彼のような使い方だと体重は軽くてもハードタイプのほうが良いようです。ですので選ぶ基準としては。。

  • ソフトタイプ 体重75キロ以下で雨天での使用は稀な方。
  • ハードタイプ 体重75キロ以上、もしくはブルベやロングツーリングなどで雨天での使用もあり得る方。

ぜひ、悩まれている方は参考にしてください。

 

 

 

*****

「そうそう、サドルから異音がするときはここにオイルを少し塗っておくと良いんだ。ただし、両面だよ。」と。

これはシッカリ教わってきました。ですので、サドルから異音が絶えない方は是非ご相談ください。

 

Merci beaucoup, Fred et Katia!

つちやはるみ


さくらの蕾がぷっくりふくらんできました。いよいよ春本番まで秒読みですね。
そんな春ど真ん中を狙って開催日を決定いたしました!

【京都タンデム学会】

■開催日 4月8日(日)滋賀県某所

京都タンデム学会は、タンデム走行の認可を記念にはじまった今回で5回目のタンデム一日サイクリングです。関西から日帰りできるサイクリングのプランを立てています。いつもはお店で食事をとることが多い京都タンデム学会ですが、今回はお花見をしながら外でお弁当を広げようと思います。お昼ごはんは各自でご持参ください。輪行でもご参加いただけます。タンデムをお持ちの方はもちろん、ソロでのご参加もお待ちしています!息の合ったペアが走らせるタンデムのスピードに、きっとびっくりしますよ!
※4月8日はアイズバイシクルはお休みです。

・ご参加希望の方は必ず前日までにお申し込みください。
・集合場所、時間は折り返しのお返事でお知らせいたします。
・雨天中止。中止の場合は前日までにこちらのブログでお知らせします。

お花見なんてずいぶんしていません。晴れると良いな。桜が咲いているといいな。ご参加お待ちしています!

なっぱ (2021年退職)


2018.03.12

Spring has come!

日曜日、快晴のラリーグランボア!ご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました!


 
 
昨年納車をさせていただいたお客様や、自転車のイベントに初めて参加しますと言って来てくださっていた方、遠くは関東や四国からも遊びにきてくださいました。そして、常連Nさまはつい最近納車させていただいたばかりのキャンピングで、常連Tさまはハンドメイドバイシクル展でもご覧いただいたスポルティーフでご参加してくださいました!

 
お父様と一緒に走っていたTくんが最年少。持越峠の上にも早くに到着して、まだまだ余裕の表情だったんですよ。

 
今年もご参加いただいた名古屋のカトーサイクルさんと常連Iさま。峠でみなさんのお話を聞いていると、「カトーさんめちゃくちゃ早かった」という声が・・・さすがです!

 
 
持越峠のcafe de Grandboisでは今年もコーヒーとケーキをご用意して皆様をお迎えしていました。K’s sweetsのケーキはとてもおいしくて、今年も大好評でした!

photo by Mr.Ueno

峠の上はあっという間にたくさんの人と素敵な自転車でいっぱいに!

朝は寒かったですがお昼頃には木々の間から日が差して、ぽかぽかと暖かくなってきました。峠でのチェックを済ませて休憩したあとは、山の家はせがわさんへランチに行かれた方、峠の上で持参した自家製パンを召し上がっておられた方もいらっしゃいました。毎年ご参加いただいている方のなかにはご自身でスケジュールを組んで、お弁当を持ってきて沢の池まで行かれたグループも!
ラリーグランボアは短いコースのわりに帰りの受付時間を13-17時とゆったりとってありますので、峠でチェックを済ませて峠印をもらったら、こんなふうにのんびり過ごされるのも良いですね。それぞれにサイクリングを楽しんでいただいて、本当にうれしく感じました。
 
 
 
 
さて、お店に帰ると大抽選会!誰に何が当たるのか、周りの人に見守られながらくじを引きます。みなさまいいもの当たったでしょうか!?

 
 
 
ラリーグランボアは自転車のシーズンインを告げるイベントとして、毎年3月の第二日曜日に開催しています。今年で5回目のイベントですが、もとはというとフランスはパリの老舗自転車店アレックスサンジェの「ラリーサンジェ」のような春のイベントを京都でもやりたいというところからスタートしています。先日のフランス出張でラリーサンジェに参加してきた親方とはるみさん。チェックポイントのための用紙を受付でもらい、チェックポイントとなるエイドステーションでこのようにハンコを押してもらうんだそう。チェックポイントの時間、とても短いですね・・・!
嬉しいことにラリーグランボアにご参加いただく人数も徐々に増えてきました。たくさんの人に来ていただき、自転車を通して人の輪が広がっていくようなイベントにしていくために、来年は峠のチェックポイントの「峠印」のリミットをもう少しシビアにしたほうがいいかな・・・なんて考えています。
 
 
 
夕暮れ時、アイズバイシクルにはたくさんの自転車人が集まって、にぎやかな時間を過ごしました。


毎年、3月の第二日曜日はラリーグランボア!来年もみなさまと一緒に自転車のシーズンインを楽しく迎えられますように!そしてアイズバイシクルではすでに来月の自転車遊びの計画が始まっています。こちらは近日ご案内いたしますので、皆様お楽しみに!

なっぱ (2021年退職)


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