アイズの独り言

2017.07.27

コンクールマシン参戦記 各部品に関する報告その2 -変速機の破損とその要因について-

Ⅰ.概要

コンクール本戦第一日目、約200km地点にてリア変速機が破損し、修復不可能な状態となりました。パイロットチョコ君はチェーンを切断し、シングルギアにさせることによって残りの18kmの行程を走破しました。

 

本項では変速機が破損した要因について究明すると共に、私の見解を申し上げたいと思います。

 

Ⅱ.変速機のモデファイについて

変速機はマイクロシフトR47をベースに当店で加工を施したスペシャルモデルを使用しました。

加工点について説明します。まず可能な限り分解して、肉抜き箇所はケガキを入れてから穴を空けました。更にボデーを削り込んで全体的に丸みを帯びたフォルムへ成形しました。成形することによっては軽量化だけでなく他のパーツとの(雰囲気を合わせるという意味での)釣り合いを取りました。

 

ケーブルのアジャスターボルトはボデーのネジを切り直すことによってダイアコンペのアルミ製に変更し、ストッパーボルトはチタン製のキャップボルトに交換しました。

最も大きな改造箇所はピポットです。肉抜きによって露出したスプリングはエンドに空けた穴に直接掛けています。これによりスプリングのテンション調整金具を省略しました。往年の変速機であるカンパニョ―ロスポルトも同様の機構を設けており、ここからヒントを得ました。

プーリーは、オリジナルをベースに加工しました。まずコンクールのみの使用を前提としてブッシュを軽合金製に交換しました。更に両サイドのプレートを省略し、代わりに防水対策としてプラスティックのシールを装着しました。

以上がモデファイした内容です。これを踏まえて破損した変速機を分析したいと思います。

 

Ⅲ.所見

先ず、破損した時の変速機の状態を確認しましょう。肉抜きしたピポット部分は破断し、本体は後輪ガードステーに巻き込まれていました。この状態から肉抜きに伴うピポットの強度不足による破断が原因のように見受けられますが、プーリーケージ(以下ケージ)を観察しますとケージは左右に広がっていることが確認できます。

パイロットの証言によりますと、第五チェックポイント(190km地点)で下車した際にケージが広がりチェーンがテンションプーリーから脱線していたようです。その為この地点でチェーンを掛けなおし、ケージを補修しています。

つまりプーリーとケージに何らかの異変が起こっていることが考えられます。

 

Ⅳ.考察

そこで持ち帰った変速機を確認しますと、プーリーにガタツキが確認できました。(元来多少のガタはあるものですが、破損後は大きくなっていました。)

ではプーリーガタツキの原因について究明したいと思います。

 

持ち帰ったプーリーを分解してみるとブッシュには異常が認められませんでしたが、プーリーの内径が僅かに広がっていました。

チェーンは変速によってローギヤに入れた時、内側によじれると同時にプーリーはチェーンによって外側に引き寄せられます。特に可動範囲の大きい10S 以上の場合、チェーンのよじれは大きくなるでしょう。今回のコンクール1日目のようなロー側のギヤの使用頻度が高いコースの場合、傾いた状態で回転するプーリーへ甚大なストレスがかかったと想像できます。またプーリーを安定させる為のサイドプレートを省略したことは、ガタツキを助長させる一因となったと考えられます。

 

Ⅴ.結論

以上より考えられる変速機の破損の要因は、プーリーのガタツキによって脱線したチェーンが、プーリーとケージの間に詰まり変速機を後方に巻き上げ、その結果ピポットに大きな負荷が生じ破断したことであるでしょう。

多段化した今日の変速機事情において、当問題の主たる解決策はプーリーとケージにあると思われます。例えばベアリングプーリー等、性能を重視した部品の採用や或いはプーリー自体の構造の研究が必要でしょう。またケージについても適性の寸法や、強度についての吟味、脱線等のトラブルが起きた際の二次的なトラブルを引き起こさないような構造等、変速機計量化において模索すべき課題を残しました。

 

コンクールマシンへの参戦で実戦的な軽量車を製作することにあたり、ほぼすべての部品にトライアル的な試みを採り入れました。その中でランドナーに必要とされる強度とそのバランスについてより深く考えさせられると同時に、ランドナーの新たな可能性が見えてきたように思います。このコンクールでの挑戦で得ることができた様々な課題を今後の自転車製作に繋げられるよう一層努力したいと思います。

大介店長 (2018年退職)

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