アイズの独り言>

北海道に自転車を持っていくのは6回目でした。今までの自転車旅行のなかで、いつも輪行で通り過ぎていた場所がありました。そして汽車の窓から見える景色を眺めながら、ここで降りて、あそこにいってみたいなぁといつも思っていました。今回、お休みをいただくことになって最初に頭のなかにうかんだ景色がその風景でした。だから、行き先はすぐに決まりました。

目指すは釧路湿原です。そして道東に行くなら前回の自転車旅行中に訪れたクレヨンやさんにも再訪したいと思いました。
8月21日~26日の6日間の旅程で、どんなところに泊まって、どんなふうに走ったのか、何を持って行ったのかも記録しておきます。
 
 
 
■旅程と滞在先
「身軽に気軽に」自転車旅行をするために、キャンプはしないことにしました。
内陸の摩周あたりから、もしくは、東の端っこ根室のほうから、釧路湿原に向かって走っていこうとざっくり決めました。幸いどちらも道路の近くにJRが通っています。途中でトラブルがあって走れなくなっても駅まで行けばなんとかなる場所で、私にはぴったりだと思いました。スタート地点となる一日目の宿は、札幌に着いてからの気分と天気予報を見て決めました。お盆明けだったこともあり、何軒か宿のある町だったら当日予約でも大丈夫だろうと思っていました。1日目、汽車で新千歳から輪行すると道東に着くのは夜8時ごろになるので、駅のそばの民宿を予約しました。それ以降の宿は、当日のお昼ごろに検討をつけておきました。北海道には、ライダーハウスやとほ宿と呼ばれる相部屋の旅人宿があるので、今夜の宿がなくて困る心配はほとんどないと考えていました。実際、宿が取れなくて困ったという日はありませんでした。
最後の2日間だけは、釧路湿原で連泊すると決めていたので事前にユースホステルを予約しておきました。
滞在したかったところにはユースを含めて2軒しか宿がなかったのです。
 
 
■自転車と持ち物
自転車はグランボアのTypeER、650Bのランドナーピスタッシュ号です。タイヤは36Bリエールのスタンダード、チューブはレールでした。フロントバック+鞄が1個で大丈夫だと考えたので、親方にお願いしてピスタッシュにリアキャリアを付けてもらいました。

フロントバックはコンクールモデルの試作を使わせてもらいました。ツーリングマップル、ノート、貴重品、カメラのフィルム、食べ物と飲み物、工具類、レインウェア上着が入っています。途中で買ったお土産とか、あとで食べようと思って買ったパンや、下る前にさっと着たい長袖の上着などもフロントバックにどんどん入れるので、いつもフロントバックが膨らみます。でも、このフロントバックはとても使いやすくて気に入りました!詳しくはまた次に触れますね。
リアキャリアに積んである鞄の中身は、衣類とお風呂道具だけです。衣類は、着ているものを含めて3日分を用意しました。途中で洗濯しながら旅行します。鞄の上にくくりつけてあるのは前日の洗濯物です。お天気だったので、乾かなかった洗濯物は干しながら走りました。ズボンは、長ズボン+CCPさんのクロップドの2本です。寒い時用の防寒具として、ルイゾンボベの長袖も持って行きました。嵩張らないのでちょうど良かったです。基本的には半袖でちょうどよい気温でしたが、アブにまとわりつかれることもあるので長袖長ズボンがあって良かったと思うこともありました。
ライダーハウスに泊まるつもりだったので寝袋を持っていくかは少し悩みました。ライダーハウスは基本的には素泊・寝袋持参で1,000円程で泊まれる旅人宿です。ふとんを貸してくれるところもありますが、ふとんが無くても1日くらい大丈夫だと思い、持って行きませんでした。とほ宿は、相部屋の家族的な民宿という風情の宿が多くて、安心してふとんで眠ることができます。
 
 
■心配事
今までの自転車旅行と違うのは、ひとりで自転車旅行をするということでした。ひとりで自転車旅行をするにあたっての心配事がいくつかありました。一番の心配事は、飛行機輪行中に自転車が壊れることと、走っている最中のパンクでした。飛行機輪行で起こりやすい故障とは、なにかの衝撃でエンドが曲がって車輪がはまらなくなることだとはるみさんにお聞きしました。そしてパンク修理とチューブ交換です。今までパンクをほとんど経験せずに自転車に乗ってこられたので、パンク修理に自信がありませんでした。昔の記憶を紐解くと、チューブ交換のときにタイヤをリムにはめることができずにとても難儀したという嫌な記憶だけうっすらと残っています。それに、チューブ交換に失敗してバンッ!と大きな音をたててチューブが破裂するのを何度か耳にしているうちに、チューブ交換への苦手意識が蓄積されていきました。
親方にお願いして昼休みに輪行とチューブ交換、パンク修理を練習しました。一番懸念だったチューブ交換ですが、思っていたより簡単にタイヤをはめることができてびっくりしました。タイヤの着脱には少しコツがいるようです。これは、慣れた人の手のひらの使い方を横で見て真似をするのが一番早く上達できると思います。
リアキャリアを付けてもらったので、輪行はいつものロード320を使う縦型輪行(サドル&変速機が下)ではなくマルトを使って横型(サドル&ハンドルが下)で。電車に乗せるときと同じように輪行しますが、前後輪のエンド金具を付けることと、輪行袋に収納する前に干渉しているところはないかいつもより入念にチェックをしました。あとは、輪行中に袋の中でステーが暴れないように、ガード側のダルマのあたりを縦長のフレーム巻で固定するアイデアをチョコ君にもらいました。ペダルは、輪行ペダルではなくてスニーカーでも踏める一般的なフラットペダルです。片側が逆ネジになっているので焦っているとどちらにスパナを回せば外せるのか、わけがわからなくなります。店長から「ペダルははずすときのほうが電車の時間が気になって焦るでしょ。左ペダルも右ペダルも、チェーンステー側に回したらはずれると覚えるといいよ。」とアドバイスをもらいました。どっちが逆ネジだったっけ・・・と考えるより、よっぽど分かりやすいと思いました。
スタートの町に到着。自転車を組み立てて、どこも壊れていなかったと分かったときはホッとしました。
 
 
輪行は、人のやり方から自分に合うものを取り入れていくのが上達の一番の近道だと思います。もし、初めてのランドナーをオーダーしたものの、輪行やパンク修理に不安があって、行きたいところへ行くことが出来ないでいる方、ぜひアイズバイシクルに相談してください。オーダーのときだけでなく、納車のあとにも長くお付き合いさせていただきたいとスタッフを全員が思っているんですよ。

釧路湿原までの旅行編はまた次に!

なっぱ (2021年退職)

8月の4週目にお休みをいただき自転車旅行に行ってきました。行き先はまたも北海道。6日間の日数で道東を満喫するために、北海道へは飛行機を、道内ではJRの特急も使いながら、めいっぱい遊んできました。

 
 
 
格安の運賃で飛行機に乗れるLCC。格安なぶん、急な変更ができなかったり荷物のサイズや個数に厳しい制限があるなど、融通がきかないというデメリットがありますが、やっぱりなるべく交通費は抑えたい。。そこで関西-新千歳の便が出ているいくつかのLCCの中から、ジェットスターを使って飛行機輪行をすることにしました。ジェットスターを使った理由は、飛行機の発着時間と運賃が希望の範囲内だったことと、自転車を受託荷物とするときの規定が明瞭で分かりやすかったことです。また、店長もジェットスターで輪行をしたことがあり、とくに問題なく輪行できたと言っていたこともジェットスターを選んだ理由の一つでした。道東まで行くなら女満別や釧路の空港まで飛行機で飛んだ方がもちろん早いですが、やっぱり運賃がだいぶ高かったのと、特急を使ってもなお6時間ほど汽車に乗りっぱなし(もちろん途中で何度か乗り換えます)という北海道ならではの時間がけっこう好きなので、新千歳発着の方が良いと思いました。
せっかくなので、体験談を書いておこうと思います。
 
 
 
■京都⇔関空 エアポートリムジン
飛行機の時間は8時25分発。京都からは始発のはるかに乗ってギリギリ間に合う時間です。自転車を持っている分歩く早さも遅くなるし少し不安でした。ほかの手段を調べると、関空行きリムジンバスでも一定の要件をクリアできるものあれば自転車を乗せてもらえると書いてあるのを見つけました。さっそく電話で座席を予約(京都⇒関空へのバスは予約制)し、電話口の係の人に自転車を預けたいと伝えました。「折りたたんだ状態で、専用の袋に収納しておいてくださいね」ということでした。
自転車は、バスのトランクルームに寝かせた状態で入れられます。「変速機のほうを上にして入れてください。上に物を置かないでください」と伝えました。京都⇒関空は予約制なのでトランクルームのスペースも余裕があり問題なく収納してもらうことができました。復路の関空⇒京都は先着順での乗車になります。自転車は寝かせてトランクに入れてもらわないといけないので、とても場所を使います。「混雑する時間帯は自転車をトランクルームに入れるスペースが確保できないことがあるので、乗車を見合わせてもらわないといけないこともある」と係の人に言われました。自転車一台だったので問題なく積んでもらうことができましたが、友達と二人で自転車を持ち込むことなどはリムジンバスでは出来ないと思いました。

バスはターミナル直結なので、乗ってしまえばとても楽です。ちなみに、自転車を預けるにあたって別途料金はかかりません。
 
 
■チェックイン
ジェットスターのカウンターへ行ってチェックインします。ここで自転車を預けます。ジェットスターのカウンターでチェックインをする際に、コワレモノ扱いのタグを付けてもらいます。「寝かせた状態で運ぶときは変速機のほうを上にして置いてください。」と告げると、係の人が紙に「この面を上に」と書いて輪行袋に貼ってくれました。関空でも新千歳でも同じように対応してくれました。

航空券はジェットスターのホームページから購入しておきました。その時に受託手荷物15kg以内-1個分のオプションも一緒に付けておきます。たしか片道1,600円くらいでしたが、これは運賃タイプによって変動するようです。空港でチェックインの時に受託手荷物を申し込むこともできますが、料金が割高になるようです。航空券購入と同時に受託手荷物オプションを付けておくほうがお得です。受託手荷物はサイズの規定があり、そのサイズを超える荷物は大型荷物扱いになり、プラス2,000円の料金がかかります。ホームページには大型荷物に該当するものの例として自転車(一辺の長さが1mを超える場合)、サーフボード、楽器、釣り竿、ゴルフバック等が挙げられています。
 
 
■保安検査
関空では、自転車を自分で保安検査場へ持っていく必要がありました。保安検査場の「職員・大型荷物専用」の列で自転車を預けます。新千歳では、チェックインカウンターで自転車を預けました。どちらも赤外線のトンネルを通さずに、輪行袋を開けて、目視でチェックしてもらいました。ペダルを外していること、タイヤの空気を抜いていること、そしてハンドルがフレームと平行になって固定されていることをチェックしてもらいます。あとは輪行袋のなかに入れていた工具類もチェックされました。パンク修理用のゴムのりを持っていたのですが、これは没収されてしまいました。ゴムのりは引火性があるので持ち込むことが出来ないそうです。
飛行機に自転車を乗せた経験が今までに1度しかなく自信が無かったので、こちらの記事を参考にしながら、事前に親方にも相談してER輪行の横型バージョンで輪行をしました。
※輪行に自信が無い、最適な輪行方法を習得したい方はぜひ9月第二日曜日の朝サイへご参加ください。輪行をテーマに、午前中だけのちょこっとサイクリングに行く予定です!
 
 
■引き取り
問題なく到着地で受け取ることができ、破損もありませんでした。飛行機を降りたあと、荷物引取りターンテーブルのところへ行くと、すでに自転車は部屋のすみっこに置いてありました。
ターンテーブルに乗せられることなく、誰かがここまできちんと運んできてくれたみたいです。
 
 
 
リムジンバスとLCCを利用して自転車旅行。組み立てて走りだすまでは、どこか壊れていないだろうかとドキドキしていましたが、どこも破損せず、とても調子よく走ることができました。空港スタッフさんの自転車の扱いにも特に問題を感じませんでした。きっと自転車を飛行機に乗せる人は、そんなに少なくないのだと思います。とても慣れているように感じました。ひとりで飛行機輪行をするなら、次もリムジンバスとLCCを利用すると思います。
大好きな北海道を、静かに興奮しながら堪能してきました。この方法なら、ひとりでもまた行けそうです。

なっぱ (2021年退職)

10月に入り、グッと秋らしくなってまいりました。サイクリングには良い季節ですね。

2週間前のお休みに、お天気良いのを確認して、大分県は久住高原まで1泊ツーリングしてまいりました。流石に九州は車で弾丸するのはツライ。。だけど九州にもいってみたい。。そこで、新幹線と九州の鉄道網を駆使して、カーサイと変わらない「良いとこ取りツーリング」してきましたよ!

 

【往路】
JR京都駅(発7:20)→新幹線ひかり491号→小倉駅(着9:56/発10:09)→特急ソニック11号→大分駅(着11:38/発11:58)→九州横断特急64号→豊後竹田(着13:01)→自転車→宿(標高853m地点)

 

 

自宅からの電車移動、概ね6時間を経て、昼過ぎに豊後竹田の駅に降り立ちました。

駅の到着メロディとして流されている「荒城の月」を背に、すぐ右に折れ、飛田川沿いを緩やかに上って行きます。4-5%勾配の2車線道路は走りやすいのですが、その分、 スピードを出した車も結構走っていて、油断できない道でもありました。 天気は良く、日差しはまだ夏を感じさせるほど。季節は京都と比べるとちょうど1ヶ月遅れといった感じで、田畑を見れば黄金色の稲穂は収穫直前で美しい盛りでした。緩やかに上る、見晴らしの良い高原道路はハイシーズンの週末などはさぞかし賑わっているのでしょう。ですが、この日は阿蘇山の噴火が報道されてちょうど3日目。直前まで行くかどうか悩んでいましたが、勢いで決めました。

噴火だけではなく、今年の4月におきた熊本地震の影響をそこかしこに残すやまなみハイウェイを1泊2日で大人旅してまいりました。

 

 

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自宅を出発したのは朝の5時半。電車4本乗り継いでの輪行三昧スタートです。親方、未だ眠そうです。

 

 

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大分駅。九州に入ると車両の色が本州とは違っていて新鮮です。

 

次の列車は真っ赤な車両の九州横断特急64号。

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「かあちゃんの幕弁」。ワンコインのこのお弁当、とっても美味しかったです。

 

 

豊後竹田の駅にも予定通り到着。

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「はーるーこーろーのー。。」に見送られていよいよツーリング開始です。

 

 

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残念ながらこの日は久住山は雲の中。

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スピードを出した車が時折走る2車線道路をできるだけ避けて旧道を走ります。そのほうが遠回りでも良い景色と出会える確立は格段に上がります。

ですが、緩やかですが、走り始めてからずっと上り坂。30キロ弱の距離でしたが、終盤かなり堪えました。。。

 

 

 

 

それでも、ようやく、この日のお宿があそこに!

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なんとか夕暮れまでに辿り着けました。

 

【STRAVAデータ】

走行距離 26.9km

獲得標高 880m

走行時間 2時間34分 (寄り道含まず)

 

 

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【複路】

宿(標高853m地点)→自転車→湯布院駅(発16:06)→JR久大本線→大分駅(着17:01/発17:10)→特急ソニック50号→小倉駅(着18:37/発18:49)→新幹線のぞみ62号→京都(着21:16)

 


2日目の朝。高原に面したバルコニーから賑やかな鳥の声が聞こえてきます。そっと外に出てみると鳥の姿はいくつも見つけられませんでしたが、朝霧に包まれた広大な景色に息をのみました。これまで訪れたことのある南仏にも、イタリアはトスカーナにも決して劣らない、堂々としたすばらしい景色!

「あー、思い切って来て良かった」

いつもより高めの交通費や宿泊代も大目に見れるほどのものでした。

 

 

大きなリゾートホテルの宿泊客はこの日はたったの5組との事で、お部屋がバルコニー付にアップグレードされていました。

そのバルコニーからの景色がこれです。

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祖母連山でしょうか。

 

 

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レゾネイト久住

今回のコースで駅からの距離がちょうど良かった。健脚の方なら5キロ先にももう一軒、更に10キロほど行くと国民宿舎もありましたよ。

 

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この日はお天気も良く、久住山もバッチリ姿が見れました。

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そして、しばらく行くとこちらも朝もやに浮かぶ阿蘇山が!

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うっとり。

 

引くとこんな感じ。

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阿蘇五岳。左手の根子岳をお顔にお釈迦様に見立てて、涅槃像とも言われるそうです。

 

 

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標高を上げてもずっと見えていますよ。

 

そして本日の最高点。

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牧ノ戸峠。

 

 

それにしても自衛隊の車両の多かったこと。

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追い越しは紳士的でしたが、やはり大きな車両が横を通るときはちょっとドキドキ。。

 

 

やまなみハイウェイは親方が18歳のときに訪れた事があるんですって。

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その頃はもう少し見晴らしよかったと思ったけどな。。(親方)

そりゃそうですよ。もう、40年近く経つんですから、その頃植えた小さな木の苗も大木になっている年月ですよ!

 

 

 

途中、南由布院に抜ける脇道を下り、帰途に着きました。

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由布岳もきれいでした。

 

【STRAVAデータ】

走行距離 57.6km

獲得標高 1354m

走行時間 4時間 (寄り道含まず)

つちやはるみ

【国際航路にあこがれて】

一昨年のサハリンツアーで稚内―コルサコフ航路に乗船し、サハリンツーリングを経験しました。それ以降フェリーを利用したツーリングに旅情を感じ、旅の計画を模索するうちにウラジオストク航路の存在を知りました。

その名もイースタンドリーム号。

韓国のDBSクルーズフェリー社が運航する、境港を出港し韓国の東海(トンヘ)に一時寄港し、2泊掛けてウラジオストクを目指す国際フェリーであります。

このレポートは鉄道とフェリーでランドナーを運び、シベリアの大平原を走ろうとした男の話です。

 

 

 

【輪行して境港へ】

出発の朝、自宅より千本通りを下り、二条駅から輪行します。朝のラッシュ時間と重なりそうなので特急券を購入し、きのさき一号に乗り込みました。

 

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輪行袋は最後尾の座席の後ろに置くと邪魔になりません。

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10時頃城崎温泉に到着。時間に余裕があったので城崎温泉で途中下車し、一の湯に入浴することにしました。これも輪行旅行の楽しみの一つです。炎天下の中、大阪へビザを取りに行った事など旅の準備のことを思い出しながら湯につかり、旅が始まっている事を実感します。

 

12時頃真っ赤なキハ48は山陰本線を西に向かって出発しました。空はどんよりとしていて雨も降りだします。スプリングの利いた座席が気持ちよくて、うとうとしていると、気づいたら鳥取に着いていました。鳥取駅で下車し、今度は境港行のリムジンバスに乗ります。29人掛けの中型バスでしたが乗車したのは同行の友人と私の二人だけでした。

 

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境港国際旅客ターミナルに到着したのは日暮れ前。フェリーに乗船する人もさぞ少なかろうと思っていましたが、ターミナルは韓国人の団体であふれていました。定員480人の船に400人乗るそうです。韓国では有名な航路なのかもしれません。

 

受付で運賃2万4千円(内自転車運賃2千円)を支払い、船内に自転車を持ち込めるよう交渉しました。通常は預け手荷物扱いでコンテナに積まれるそうです。輪行袋を担いでイミグレーションを通り、桟橋からタラップを上がって乗船します。

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そして、定刻前に船は静かに出港しました。

 

 

 

【東海ポタリング】

船の受付嬢が部屋にやって来て点呼を取っています。時間は朝8時半頃。どうやら他の日本人を探しているようです。デッキに出ると東海の港町が見えていました。

 

やがて東海港に入港し韓国人から順番に下船します。我々も韓国に入国し、ターミナルで自転車を組み立て、出港までポタリングを楽しむことにしました。海沿いを北上し、東海市街へ向かいます。東海は東海岸の田舎町だけあって交通量も多くなく、右側通行であること以外は日本と同じように走れました。自転車道がある場所もあります。

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スーパーで刺身やカップ麺を購入してターミナルに引き返しました。市内には鍾乳洞があるそうですが時間がなく断念しました。今回は2時間ほどでしたが韓国の雰囲気を楽しめました。東海から上陸して韓国ツーリングをするのも面白いかもしれません。

 

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東海からは完成車のままフェリーに持ち込むことにしました。ランドナーをひいてイミグレーションを通過するのは緊張しましたが、特に問題はありませんでした。タラップからランドナーを担いで乗船すると車両甲板に案内してもらいました。中には中古のプリウスが沢山停めてあります。これからロシアで活躍するのでしょう。

 

晴天の中、船は東海港を離れていきます。東海は韓国海軍が置かれる軍港で、軍艦も多数みられました。船内を見わたすと乗客数は前日の半分以下になっていました。

明日はいよいよロシアに上陸です。

 

 

 

 

【ウラジオストクへ上陸】

デッキで大陸を眺めながら韓国カップ麺を食べているとウラジオストクが近づいてきました。「東方征服」という厳つい名のその街は、ボートで釣りを楽しむ人や海辺でくつろぐ人も見え、1958年から1991年まで軍事的な重要港として外国人は立ち入ることができなかったことなど想像がつかないほど穏やかで美しく見えます。着岸から1時間半程経ちようやく下船の指示が出ました。タラップから桟橋へランドナーをひいて下ります。ついにロシアに上陸しました。

 

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ウラジオストク港

 

東海の時と同じようにイミグレーションへ進みます。ガタイの良いお姉さんが灰色の大型動物を連れてきて、ランドナーと体の匂いを嗅がれます。お姉さんによるとおとなしそうに見えるそれはウルフだったそうです。

 

駅前のキオスク(ロシアでは小型商店を指します)で地図を手に入れ、ピロシキも買って食べました。ロシアのピロシキは具材が多様でひき肉のものやホウレンソウ、卵、ジャガイモ、サラダ入りなど、どれもおいしくいただけました。

 

ウラジオストクは長崎の様に坂の多い港町で、交通量もかなり多く自転車では走りにくいです。ひやひやしながらホテルにたどり着きチェックインをします。英語はほとんど通じなかったので苦労しましたが自転車を建物の中に入れてもらえるようにお願いしました。今回はアイロン部屋に置かせてもらいましたが輪行袋にいれて部屋に持ち込むという手段もあります。安い部屋でしたがテレビが2つもある立派な部屋で、設備は日本のホテルと変わりませんでした。街を散策し、夕食にレストランでポトフと5cmほど厚みのある焼鮭を食べました。豪快なロシア料理でスタミナをつけます。

 

 

 

【シベリア鉄道輪行】

朝食付きだったのでホテルのカフェで食事し、駅へ向かいます。国土の広いロシアは国内で時差がありモスクワとウラジオストクでは7時間の時差があります。鉄道の時間はモスクワ時間で統一されており、駅構内の時計もモスクワ時間を指していました。我々が乗る001番ロシア号は11時2分発でしたが切符には4時2分と記載されていました。

 

赤いベレー帽の車掌さんに切符を見せ乗車します。1等室のコンパートメントは輪行袋2つを入れても問題ない広さで特に気を使うことはありませんでした。定刻に列車が走りだすとパンやチョコレート、ジュースなど次々に出してもらい、更には立派な食事まで用意してもらいました。車窓からは海やシベリアの大平原がゆっくりと流れ大変優雅です。あっという間にウスリースクに到着し、車掌さんが呼びに来てくれます。わずか2時間だけでしたが夢のような時間でした。

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【ウスリースク】

水色が爽やかな駅舎のウスリースク駅に降りました。列車を見送り駅前で自転車を組み立てます。人慣れた犬がその様子を不思議そうに眺めていました。キオスクでウスリースクの地図を手に入れてホテルに向かいます。道も広くウラジオストクよりは走りやすいです。

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ウスリースクは中国、北朝鮮方面からの鉄道の合流点で交通の要所であり、またロシア陸軍の基地がある軍事都市でもあります。街をまわってみましたが調べていたとおり観光するような場所はなく、観光客の姿も見えませんでした。しかし、観光地化されていないリアルな街の様子がうかがえて私はその街並みに好感を持てました。

 

 

 

【シベリア大平原】

 

時計の針が10時40分を指しているのに気づき飛び起きる。到着が遅れることを覚悟しましたが、その時計の針は止まっていました。実際は7時前でした。ゆっくり仕度をして8時前には出発。玄関前にはホテルに泊まっていた高校生の団体が整列しており、彼らに見送られます。

 

街はまるで冷蔵庫のようにひんやりとしていて霧もかかっていました。これが大陸かと身をもって感じながら市街地を抜けます。交通量は極端に減り、路面もダート道(未舗装路)になりました。戦車でも走ったのではないかと思うようなガタガタ道や、ダイナミックな砂利道の丘を超えます。でもショックの吸収性がよいエートルタイヤが路面を捉えてくれるので大丈夫。ウテスノエの集落を抜けるころには霧も晴れてきました。

 

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更に丘を越え目指していた大平原に辿り着きます。思い描いていた果てしなく続く草原に感激します。開放感のある景色を眺めながら昼食にしました。心配していた野生動物も気配すら感じらません。いつまでも眺めていたかったです。

 

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草原を抜けるとシベリア鉄道の線路沿いに南下し、ラズドリノエで主要道路に合流しました。ウラジオストクからハバロフスクを通りモスクワまで続くその道は、まさに高速道路そのものでその脇を走ることになります。路肩は広くありますが舗装されているのは車道の白線までで自転車が走るのはダート道です。大型車の轟音が鳴り響く中ダイナミックなアップダウンが続きそれは過酷な道でした。アルチョームに入るころには慣れてきましたが、決しておすすめできる道ではありません。他に道の選択肢が無いので近郊列車で輪行したほうが良いと思います。

 

アルチョームの街は、花壇が多く綺麗な街でした。公園では子供たちが遊んでいて平和な空気に癒されます。ホテルの場所が分かりにくく迷いましたが、数人の街の人に尋ねてようやく辿り着きました。ロシア人は親切な方ばかりです。

 

 

【アルチョームからウラジオストクへ】

 

 

朝食にホテルのカフェでパンやオムレツを出してもらいました。出発の準備をしていると仲間の後輪がパンクしています。玄関の前でパンク修理をしていると、珍しいのか4,5人その様子を見に集まってきました。受付のお姉さんも煙草を吸いながら眺めています。チューブを交換して出発です。

 

脇にパイプラインが続く道を南に入り、ラズルナヤ方面に向かいます。ほとんど車が通らない道で、アスファルトの上を走ることができました。うっそうとした森の中を進みます。

 

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斜度8%の丘を2度3度越え、海が見えてきました。リゾート地ラズルナヤです。夏場はウラジオストクから海水浴やキャンプをしに多くの人が訪れるそうですが、平日だったせいかビーチは閑散としていました。丁度昼時だったので浜辺でパンを食べ、せっかくなので泳ぐことにしました。どこまでも遠浅の海は地中海のようで日本海とは思えません。クールダウンした所でラズルナヤを出発しウラジオストクを目指します。

 

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交通量がどっと増え道も悪くなってきました。薬品でもこぼしたのかアスファルトに沢山穴があいています。街に入ると車だけでなく歩行者も増え、時には自転車を押さなければなりません。大きな交差点では歩行者と同じように歩道橋か地下道を通りました。やはり自転車で走る街ではありません。街の中心にある中央広場で休憩してホテルに向かいました。

 

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入国した日には気づきませんでしたが中国人団体客や日本人観光客が目立ちます。現在ウラジオストクへは成田から直行便が出ていますので2時間で行くことができますし、気軽にヨーロッパの雰囲気を楽しむことが出来ます。ソ連崩壊から四半世紀経ち、観光地としての一面を見せるようになったウラジオストクは活気にあふれています。自転車には厳しい街でしたが鉄道輪行で郊外や地方に出たらまだまだ可能性のある国だと思います。

 

 

 

【旅の準備】

今回のシベリアツアーで必要とされた準備について紹介します。

1、ビザ申請

現在日本人がロシアへ渡航する為にはパスポートだけでなくビザが必要になります。ビザを取得するにはロシア領事館のオンラインフォームで事前申請し、バウチャーとパスポート、写真、申請フォームを領事館に持っていけば2週間で発行してもらえます。申請・引き取りは代理人でも可能だそうです。

 

2、バウチャー

バウチャーとは予約確認書のようなもので、現地での旅程(特に宿泊先)が記載された書類です。日本の旅行代理店でお願いするかロシアのバウチャー会社、或いはホテルのビザサポート(ホテル予約後メールで紹介があります)で取得できます。今回はホテルのサポートで取得しましたが、とても簡単でした。インターネットで宿泊先の情報を入力し、手数料をクレジットカードで振り込むとPDFファイルがメールに送信されてきます。料金は2千円程度でした。

 

3、ホテル

予約サイトBooking.comとホテルのホームページから予約しました。ホテルの場所やランクも自分で決めることができるので安心です。

 

4、鉄道、飛行機、フェリーの予約

シベリア鉄道はロシア鉄道のホームページから会員登録して予約することが出来ますが、今回はtutu.ruというロシアの旅行会社から予約しました。座席の指定も可能です。航空券は航空会社のホームページから、フェリーはフェリー会社に電話して予約しました。

 

5、地図

プランニング用に事前に東京のロシア書籍専門店から通販で購入しました。現地では駅前キオスクで最新のものが安く手に入ります。

 

6、装備

キャンプの予定がなっかたので最小限の着替えと、最低限の工具を準備しました。さらに路面状況を考慮して予備タイヤを持っていきました。グランボアタイヤは折りたためるのでかばんのそこに入れておくと安心です。*国内でしたらアイズから局止めかご宿泊先にお送りすることも可能です。

 

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ウスリースク駅にて

 

今回のツアーは輪行無しでは実現できませんでした。旅の可能性を広げてくれる輪行ツーリングに貴方も出かけてみませんか?

 

 

 

 

大介店長 (2018年退職)

お盆の入り、相変わらず暑い日が続いていますが、明日は第1回、アイズの朝サイクリング。思いの外反響があり、バラエティに富んだメンバーと一緒に走れそうで、楽しみです。参加表明してくださった方、どうぞお気をつけてお集まりくださいね。

 

 

さて、先日は常連Nさんの自転車の納車でした。

 

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実はこの自転車、新車ではありません。最初にお作りした一台を、Nさんはその時その時の好みや使い勝手に合わせて組み替え、大切に、とことん楽しんでくださっているのです。

 

この自転車を最初にNさんにお納めしたのは2006年の春、当時のグランボアの入門モデルの650Aランドナーとしてお納めさせていただきました。もう、10年が経つのですね。。ついこの間のように感じていましたから、私たちもファイルを調べなおして少々びっくりしました。。お納めした当初は北海道などをツーリングされて、旅先から写真をいただいたりしていました。その後、いろいろ見聞を広げられるにつれ、2009年にはお好みのヴィンテージパーツを搭載したマニアックな42Bランドナーへと大幅なスペック変更をお手伝いさせていただきました。Nさんが持ち込まれたカンパニョロのレコードのハブやらユーレの変速機などを前に親方が苦心していたのを覚えています。

そして今回、テーマは「輪行が簡単なキャンピング車」。さて、どのようなモディファイが施されたのでしょう。

 

 

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今回のオーダー、初めはフレームを分割して簡単に輪行ができるデモンタ仕様に、というお話から始まりました。ただ、現時点でフレームのデモンタ加工をするということになると、再塗装や工賃も含めて、少なく見積もっても15万円~の費用がかかってきます。また、フレームそのものを加工しなければいけないので納期も不安定です。そこで、デモンタ同様、いや、それ以上に簡単に輪行できるグランボアのランドナーType ER化はどうか??ということになったのです。

 

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ER(輪行簡単)機能をプラス!

要するにフロントフォークとフロントキャリアを差し替えることによってType ERに生まれ変わったのが、今回のNさんの輪行簡単(ER)ライトキャンピング車なのです。ただし、ERパニアはまだ試作の段階で、私のER700用(センタープルブレーキ用)のものしか形になっていませんでした。今回、Nさん用にカンティ台座用のものを新たにデザインし、親方自ら製作したものを搭載しています。また詳細はギャラリーページでお披露目しますね。

 

ER化するには、フレーム本体はそのままに、フロントフォークをセミオーダー用に用意してあるER仕様のものに差し替えるだけですので納期はそんなにかかりません。費用はフォーク本体とその塗装・ERキャリア、泥除けの加工、組立工賃を含めて10万円位~でしょうか。

 

輪行をツーリングに取り入れる事ができれば旅の幅がグッと広がります。それに、いままで大切に乗ってきた自転車はこれからも長く乗っていきたいもの。こんな方法で自転車を一新するのも一つの手ですよね。

ER輪行って何? という方。是非、ムービーをご覧ください。

 

 

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Nさん、いつもありがとうございます。

入門モデルといえば比較的不憫な扱いを受けるものが多い中、こんなにも大切に乗り続けてくださって本当に嬉しく思っています。更に磨きがかかっている健脚のNさんのお供がこれからもできますように。どうぞよろしくお願いします。ただいまお預かりしてます大物も頑張って仕上げますね。

 

 

 

つちやはるみ

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