JBTマシーンあれこれ その1ステンレス車
ジャパンバイクテクニークからもう1ヶ月が過ぎ来ました。ようやく滞留がちだった仕事もスムーズに流れるようになり、落ち着いて振り返ることができます。
今回のJBTはコロナの影響で前回に比べてエントリー台数は少なくなってしまいしたが、全体的な質のステップアップがなされたと思います。
グランボアではステンレスチューブを使ったランドナーと前回2019年のJBTにオープン参加ながら出走した車体に後付けの電動アシストユニットを搭載したebikeランドナーで参加しました。
まずはステンレスチューブをつかったグランボアのランドナーですが、ステンレス製のランドナーフレームはほとんど聞いたことはありません。大分以前からステンレチューブは存在するのですがなぜでしょうか。コロンバスXCRやレイノルズ953といった老舗ブランドのステンレスチューブも存在するようなのですが、ほとんど入手は困難な状況になっています。今回使用したチューブは現在唯一と云ってよい米国のステンレスチューブメーカーKVAのMS3というチューブセットです。06/0.4/0.6とかなり肉薄ながらステンレスらしく固くしっかりしたチューブです。これを今回仕入れて分かったのですが、ステンレスチューブがそもそも高額すぎます。普通のクロモリチューブの7~8倍ほどの価格がします。その割にはチタンのように大きく軽量化ということにはなりません。やはり素材のコストがフレーム製作者に嫌われてしまって市場から消えつつあるようです。
チタンやステンレスなどの非クロモリ素材のチューブは一般的にはTig溶接で組上げていくのですが、ステンレスは専用の銀ローを使用すればフィレット(ラグレス)で製作することもできます。ただフィレットであればこれまた高価な銀ローも相当量使うことになります。
ラグやクラウンなど必要なステンレス部材も見当たりません。グランボアではエンドやクラウンも普段ERモデルで使用しているものと同じデータで304ステンレスからレーザー加工で製作しました。ロードバイクでしたら必要のないカンチブレーキ台座も作る必要があります。通常のカンチ台座をばらして広げて、展開図を起こしこれもステンレスの板からレーザーで抜き、折加工をするための切削を施してから箱型の台部分を用意して、さらにステンレスの丸棒から削りだした円柱部分と組み合わせ、銀ローでしっかりと固定して仕上げます。
すべての直付け小物をステンレスで用意したところでフレームの製作に取り掛かれるのです。
ステンレスはクロモリに比べて熱による延びが大きく、低温で素早くローを回す必要があります。またちょっとでも加熱しすぎてしまうと表面が酸化してしまって銀ローがのらなくなってしまいます。そしてトーチの取り回しには注意が必要です。固いステンレスではチューブ同士を接合した後で芯だしなどのための修正することもできません。正確で均等な火入れを要求されます。
銀ローは柔らかくステンレスのチューブは固いので仕上げのために削っていくことは真鍮ローよりは容易です。ただ塗装しないで鏡面仕上げの状態にしようとするとかなりの手間を強いられてしまいます。今回もまずチューブ状態でバフ掛けを行って、フレームになってから再度磨いてみましたが、鏡面と呼べるまでには至りませんでした。次は知り合いのステンレス加工屋さんに訊いてから鏡面仕上げを実現したいと思います。
ステンレスチューブの大きなメリットとして塗装しなくても錆びないということがあります。確かにステンレスは錆びないのですが、銀ローは経年による変化として黒ずんでくると聞いています。確かに昔の100円銀貨は黒っぽくなっていたと思います。実際銀の含有量がどの程度なのかは知りませんが、1ヶ月ではまだ変化はありません。
今回はフロントフォークもステンレスで製作しましたが、これがとてつもなく硬くて、普段クロモリφ23のブレードで製作しているフォークであれば冷間でも簡単に曲げられるのですが、まったく曲げることができませんでした。そこで以前あるビルダーさん聞いたことのある熱間での曲げにチャレンジしてみました。そのビルダーさんによると熱間でバケツをR合わせに使って曲げることができたというのです。グランボア特製の2本曲げベンダーにセットしたままトーチで炙って素早く曲げてみたところ、確かにあっさり曲がってくれました。ところが今度は曲がりすぎてしまい失敗です。やむなくクラウンを炙ってブレードを外して、新しいブレードを用意しての再チャレンジで狙い通りのRを出すことができました。こう書くと簡単にリカバリーできたように見えますが、1本1万円以上するブレードを2本ダメにして、さらには新たに入手したステンレスブレードは当初のブレードよりかなり短くギリギリのところでものにすることができたので、今回の一番の難所でした。
こうしてフレームとフォークが形になったのがJBT開催の10日ほど前でした。さらにキャリア製作担当の伊藤君が初めてのステンレス製ながらほぼ2日でパニアキャリアを製作しました。パーツ構成は今回延期開催となっていたためすでに昨年のうちからほぼ用意しており、フレームの仕上げ担当且つ今回のライダーでもある前野君がせっせと作業を進めてくれてギリギリの9日に彼による試乗ができました。私としてものその乗り味に大変興味がありJBT前に試乗してみたかったのですが、私自身が今度はグランボアebikeのライダーとして参加するため、前日にはヒルクライム部分だけでも試乗をするために前日に現地入りして後日の楽しみとしました。
走りについてはヒルクライムセクションをグランボアebikeに続いて2番目にクリアすることができましたので、健脚ライダーにも十分にこたえられるフレームであると思います。それより気になったのはダートでの下りでチューブの硬さ故に振動吸収が十分にできるかどうかで、特に今回の課題のペットボトル4本をそれぞれ左右のフロントサイドに積載しての走行でしたので、フロントフォークにかかるストレスの大変大きくなっていました。結果としてライダーの感覚としても堅いけれどもしっかり振動吸収してくれるということでした。このことはJBT後に私が乗っ見て確認しましたが、身体に帰っ来るようなストレスになる振動は感じられず、ステンレス車の独特の乗り味であると判断できました。
このステンレスグランボアJBT号は私自身の主力ツーリング車として使用していきます。すでに数台のバックオーダーをいただいており、さらなるフィードバックのご意見を聞きながら製作していくことになります。オールメッキのクロモリフレームの製作が困難になっている現状で錆びないステンレス車でポリッシュ仕上げにしてモノトーンの自転車を製作することは魅力的な選択肢であると思います。
2022 カタログ
前回のブログでお知らせしたハンドメイドバイシクル展も瞬く間に過ぎ去り、もう2月を迎えようとしています。皆様お元気でしょうか?
2年ぶりのハンドメイドバイシクル展では、さすがに例年並みの人出にはならなかったようですが、久しぶりに関東のお客様や同業の皆様にお会いできて大変有意義だったようです。しかもYouTube配信で親方が登場したりして、いろいろ心配してましたが京都にいても楽しいひと時でした。
ありがとうございました。
さて、そのハンドメイドバイシクル展に間に合うよう制作したカタログがまだ少し残っています。いつものように店頭に来られた方や通信販売をご利用いただいた方には無料配布しています。
カタログのみご希望の方には200円でお送りしますのでご遠慮なくお申し付けください。今回からオンラインでご注文いただけるようにしました。
2021年カタログも少し残っていますのでご興味のある方はどうぞ。
間もなく春号を用意しますね。
*****
【アトリエ最前線】
昨日はハンドメイドバイシクル展でも展示させていただいたSさんの自転車の納車がありました。
入念に試乗されるSさん。変速の瞬間の写真ですが、「???」な方も多いのでは。
さあ、近づいてきましたよ。足の内側からレバーアプローチするお点前はKGST流! ワイルドです~。
(大丈夫! 意味が分からないのが普通です)
カンパニョロ最初期の変速機、カンビオコルサを搭載したヴィンテージロード!
しかも、8年前にもほとんど同じ仕様の自転車をご注文いただいていて今回で2台目なのです。違うのはフレームの製作者の違いを表すヘッドバッヂの色やロゴの色、ラグの形。
赤がIRIBE。緑が親方。
それにしても、ホント、Sさんたちは自転車遊びの達人ですね。
これからもお二人の信頼に応えられるよう頑張ります!
いつも仲良しのお二人、ついにペアの自転車を手に入れられましたね。これで自転車の取り合いにならないかな??
作り直しの変速レバーは早急に取り掛かりますね。
ありがとうございました。
*****
ハンドメイドで展示させていただいた2台の納車を済ませ、親方は少しリラックスモードですが、またすぐ再始動です。次は事故にあわれてしまったOさんのフレームの再生だそうですよ。
お知らせいろいろ
また、雪ですねぇ。
自宅の庭もようやく地べたが見えたと思ったらまた雪に覆われてしまいました。。。
カンビオコルサなどの棒式変速機で遊んだダートの並木もこの通りです。
皆様、暖かくしてお過ごしくださいね。
豪雪地域の方は特にご注意ください。
*
*
*
で、お店はというと、さすがに雪が積もったりは無いですが、チラチラと舞っていて風が冷たい!
体感的にはこっちの方が寒いかも。。。
ですが、今、アイズの店内は熱いんです!
というのも来週はこれ。
去年はオンライン開催だったんですが、今年はいよいよ例年通りに東京の科学技術館での開催が決まっています。しかも、もう、来週末!
グランボアも出展予定で昨日ようやく2本目のフレームがメッキ加工へと進みました。
うーん、間に合うのか?
それより、予定通り開催されるの?
製作中なのは特徴的なエンドを使用した一台。
もし、開催されるとしたら親方はビルダーとしてトークショーにも参加する予定ですのでグランボアとしては久しぶりの盛沢山イベントなのですが。。トークショーではランドナーの魅力について存分にお話しさせていただく予定です。
おっと、YouTubeで配信されるそうです!!
オミクロンがあちこちにいるようですので是非にとは言いにくいのですが、健康で体力に自信のある方、感染予防をしっかりされてご来場くださいませ。
ご来場いただけない方はYouTubeをご覧ください。
*****
【お礼とお詫び】
年始早々、お年賀状をお送りいただきましてありがとうございました。今年はもう、早々に年賀状の準備をあきらめてしまい、どなたさまにもお返事を差し上げておりません。申し訳ありません。。。
お送りいただいた年賀状はどれも楽しく拝見しています。
少し紹介しますと、、。
猫を虎に見立てたユニークなイラストに、緻密な点描の自転車のある風景。
毎月定点撮影された富士山の写真。
力強い虎の版画。
美しい山並みに臨むツーリング中のサイクリストたち。
どれも手の込んだ力作ばかりです。
そして、こちらはお馴染みの橋本画伯からのお年賀状。
凄い~!!!
北海道に行かれていたんですね。
一枚のはがきの中で表現するアイデア一杯の傑作です!
ありがとうございました!
それにしてもまた北海道に行きたくなるわぁ。
年末セールのお知らせ
わぁー、いよいよ12月に入ってしまいました!!!
皆様お元気にお過ごしでしょうか?
早くも一年が過ぎようとしています。
こちらはと言うと、いろいろと大小さまざまな問題はあって落ち込んだりもしますが、反面、嬉しいこともあったりで正に悲喜交交。喜んだり、悲しんだり、怒ったり、笑ったり、元気に過ごしています。何より、皆「元気」ですのでそれが一番ですよね!
*****
さて、しばらく店頭でのセールは自粛していましたが、この12月は以下のように開催することにしました。ただし、通常、店頭セールは一日のみでしたが、今年は2日間で計画しています。できるだけお仲間とは分散してお越しいただけるとゆっくりしていただけると思います。ご遠方の方には通販でのセールも企画していますので是非ご利用ください。
【店頭セール】
日時 12月11日(土)と12月12日(日)10時頃から18時頃まで
店頭商品すべて店頭価格から1割引きとなります。ただし、ご予約品やお取り寄せ品、修理などの作業工賃は対象外となります。
更に、5,500円以上お買い上げのお客様には粗品進呈!
【通販セール】
12月13日(月)から12月19日(日)まで。
オンラインストア掲載中の商品すべて表示価格から1割引きとします。ただし、ご予約品やお取り寄せ品、修理などの作業工賃は対象外となります。
こちらも5,500円以上お買い上げのお客様にはささやかなプレゼントを同梱してお送りいたします。
世界的なパンデミックが始まってほぼ2年、イベントもセールも自粛していましたので、長らくお会いできずにいる方も結構おられます。
そんな皆様に久しぶりお会いできることを楽しみにしています。欠品中のものも多数あってご要望にお応えできないものもあるかと思いますが、是非遊びに来てくださいネ。
そして、マスク、手洗いなど感染対策もお忘れなく。
*****
【アトリエ最前線】
先日納車した一台です。
フルオーダーのモデルですが、セミオーダーでおなじみの輪行が簡単なERフォークを選択されました。そしてブレーキはレーザーミラン。
スペーサーが入っているように見えますが、リングの裏側もピカピカですのでBBとクランクのロックリングが映り込んでいるだけなんですよ。先日SNSでコメントいただいて私たちも初めて気づきました。
シクロ仕様のヴィンテージが2台続いたあとのフロントシングル+スラム。
これも大変素敵です。
【完成車のオーダーをご検討中の方】
12月中に完成車のご注文をご成約いただいた方にも記念品をお贈りします。只今の納期は8か月ほど。ご相談にはご予約いただけますと大変助かります。
お仕事アラカルト
9月になってしまいました。
皆さま、お元気にお過ごしでしょうか。
私たちは相変わらずバタバタと忙しく過ごしています。ただ、なんとなく滅入ることもありますよね。だって、巷はネガティブなニュースであふれすぎていますから。
今はパラリンピックに感動しながら元気をもらっています。自転車も良いのですが、特に車いすラグビーや車いすバスケットに夢中です。昨日初めて見たブラインドサッカーやボッチャもすごい競技ですね。オリンピック以上に楽しんでいます。
さて、まずは入荷のお知らせ。
しばらく欠品していましたサンエクシードのクランクが入荷しました。これがないとちょっと焦ります。これでしばらく安心です。また、マイクロシフトのフロント変速機はショートのみですが入荷しています。ヴィンテージの自転車もひっそりとアップされていますよ。隠された名車も出ています。ブランド名に惑わされないでぜひ一期一会の出会いを見つけてください。
グランボアのオンラインストアはこちらです。
***
そしてグランボアのアトリエの最前線。
もう、ギャラリーページの更新に手が回らなくなってしまってお仕事紹介ができていないまま。。。スミマセン。ちょっとブログで最前線をご紹介しますね。
先日納車したセミオーダーモデルはエートルホワイトをスペックしたさわやかなカラーリングが光るER650。
グランボアでは定番の部品構成ですが、ベルトゥのサドルやシュエットセンタープルブレーキ、シートチューブ直付けテールなどオーナーのこだわりが随所に見られる一台です。基本的に650Bのセミオーダーフレームはカンチブレーキ仕様でテールの直付け台座なども無いのですが、ご希望の方にはスペック変更も可能です。
実はこの自転車は社会人となって2年目の若者からのオーダー。アイズでバイト経験のあるT君ならではの一台です。うれしいなぁ。たくさん乗って、楽しい思い出をたくさん作ってね。
筆記体ロゴを希望される方が多い中、ゴシックロゴは新鮮です。
私もゴシックグランボア大好きです。
**
さて、こちらは先日納車しましたフルオーダーの一台。私たちはなかなか海外旅行が難しい時代ではありますが、この自転車は海を越え、アメリカのお客様のもとへ旅立ちました。「私は何年もこんな自転車を待っていたんだ。」、試乗を終えたオーナーの最初のインプレッションはこれ以上ない嬉しいものでした。
フルオーダー親方フレームはグリーンのヘッドバッヂ。特徴的なふっくらしたシートチューブの蓋は鍍金で際立たせています。
筆記体のロゴは手書きでの文字入れが可能です。
42BのタイヤをしっかりカバーするドロヨケはGB650ML。本所さんのモデルのH50Cでもカバー可能ですが、カバー力とボリュームある仕上がりが好みの方はこちらがおススメです。
****
こちらは現在進行形。
仮組を済ませたばかりのシクロランドナー仕様のフルオーダーモデル。みんな、ヴィンテージ好きの方はシクロランドナー大好きですよね。
仮組で動作確認と修正をした後、フレームのメッキの為の研磨やパーツのレストア作業に進みます。完成までまだもう少しかかります。
*
さて、バスケが始まりました。
今日はこの辺で。