3月6日。宿には有料ながら石造りの広い自転車置き場があった。カードのルームキーを使って頑丈な戸を開け閉めすることができる。自転車を取り出して準備する。8時30分カステルノーダリを出発。
お宿は運河の畔に立っているのですぐに走り出すことになる。街の南を通る運河に沿って走る。
この街には大きな船溜まりというか港があり、シーズンには多くのバカンス客で賑わうのだろうクルージング船が何艘も係留されている。永延とつづく大木の並木の木陰の運河をゆったりと進むクルージング船での食事を楽しむだろうか。でも今は閑散としている。
船溜りのを過ぎて直ぐにSaint-Roch「サンロック」水門がある。ここは4段になった水門でかなりの高低差がある。ポプラの大木に両側を挟まれていて緑の季節にはさぞ美しかろうという場所である。下った一番下の水門直下の水たまりにカモが3羽浮かんでいた。そこから街を離れ郊外へ出る。
郊外の運河はあちこちで水が抜かれて護岸工事をしている。
対岸では重機を持ち込んでの工事のようである。場所によっては草ボウボウの道を行かなければならない。
最近工事が終わったと思われる個所はまだ支柱に守られた並木の若木が並んでいる。快適なダートが続く。
カステルノーダリから30~40分ほどの走ったあたり、耕されたばかりの畑が広がりその向こうの丘の上に白く輝くピレネーの山々を望むことができる。
途中にしばしば現れる石造りの橋も運河の水面に美しく映える。その向こうは水門である。
運河のわきの休憩所には自転車使って運河を楽しむ人たちのための設備も用意されていて工具やポンプが使える。
ここはCanal du Midiのサイクリングロードなのだ。
まもなくお昼という頃にCarcassonne「カルカソンヌ」の街に入った。レストランを捜す。
街の中心まで来てようやく自転車をそばに置いて食事できそうなレストランを捜し当てた。やれやれ。
カルカソンヌはお城で有名な観光地である。30年ちかく前に車でフランス一周ビンテージパーツ捜しの旅をしていて高速道路から見えた大きなお城の姿に引き寄せられて立ち寄ったことがある。今度は自転車に乗ってまじかにその姿に接することができた。3kmの城壁に囲まれたこの城はその内部に領主の館と教会そして多くの民家を復元し保存している。城壁と館の尖塔がいくつも立ち並ぶその威容はヨーロッパ中世のお城はかくあらんと示している。前回内部をじっくりと見学していたので今回は遠くから眺めるだけである。
ここでカルカソンヌまでは40kmほどしか走っていないことに気が付いた。今日の予定はLe Somailという小さな町の宿である。そこまでまだ60km以上を残している。午後はしっかりと走っていかなければならないと決心して走りだす。
フランスはやっぱり大陸である。大きくうねった地層が露出した山がしっかりとした鉄と石で作られた橋の向こうに見える。
ブドウ畑に挟まれた運河の道をひたすら走る。この辺はブドウ畑だらけで、どうやらワインの一大生産地のようだ。私は下戸で全くワインの知識はないのだが、Languedoc「ラングドッグ」というこの地域はお手軽なワインの産地として有名なのだそうだ。
とにかく広い。これだけ長いこと走っていると当然生理現象も起きる。でもトイレがない。シーズンオフの今は運河沿いに設けられた施設のトイレはほぼ閉まっていてなかなか用を足すことができない。休憩できそうなレストランも営業していないのだ。カルカソンヌから40kmほどのところにちょっとした湖があるのでそこまで行けばと頑張って走って湖畔を捜すがトイレはない。ここでGoogleMapが役に立つ、「Toilettes publiques」を検索する。その湖から運河を挟んだすぐそばの街の中の公衆トイレをたちどころに示してくれた。
日が暮れてきた。途中に長めの迂回路がありワイン畑の中を走らせるのだか、長く伸びた自分の影を追ってせっせと走らなければならない。運河沿いの小さな町のシャトーの尖塔が夕日に染まっている。
宿まであと1kmというところで日没した。
18時40分。なにはともあれ到着である。あ~疲れた。宿の近所で唯一営業していたレストランで食事して就寝。
本日のコースほぼ全線ダートであった。
【七夕セール】
日時 7月7日(日)12時頃から18時頃まで
いつものとおり、すべての店頭商品が店頭価格から1割引きとなります。
(※工賃、ご予約品、取り寄せ品は対象外です)
いつもと少し違うのは店頭に並んでいる商品でしょうか。
お気づきの方もいらっしゃるとは思いますが、只今、店頭にエルスの完成車が数台ございます。また、エルスだけでなく、サンジェやマラストーニなど、それぞれいつもだったら市場に出ることのない博物館級のコンディションのものばかりが店内のメインのスペースを占めています。また、パーツ類もとても珍しい希少なものも入荷しています。今回はそういった貴重なヴィンテージ品も対象となりますので是非是非お見逃しなく。
確かに売りたい方が多い時代ですが、買いたい方にとってもとてもいい時代です。これまででしたら探しても見つからない、手に入らないものが流通しだしましたから。
また、この春の展示会で展示したブラックランドナーも特価にて販売予定です。価格は当日のお楽しみ。他にもいろいろ準備して皆様のお越しをお待ちしていますね。
どうぞ、この七夕が良い縁結びの場になりますように。
もちろん、通販セールも予定しています。ご遠方で店頭セールは無理という方はオンラインストアの七夕セールをお待ちください。期間は7月8日月曜日から14日までを予定しています。
とはいえ、ヴィンテージ品はどれも一点限りのものばかりです。どうしても入手したい方はセールを待たずにお買い上げいただくことをお勧めします。オンラインストアにて販売中です。
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それと、先日ご紹介しましたランブイエのフロントバッグですが、既存のリクセンカールのサポーターがサイズもぴったりでそのまま使えそうです。ただし、バッグを固定するダボの代わりになるモノが必要なのですが、、、。
サドルバッグ用のVIVAのバッグループを流用してみました。いかがですか?
リクセンカールが使えないかお尋ねくださったSさん、ありがとうございました。これにてバッグ単体でのご注文もお受けいたします。あ、それと、バッグの黄色いマークはRambouilletのロゴだけのシンプルなものに変わる予定です。もう少しシックなイメージになりますよ。
(スミマセン、ランブイエのバッグは七夕までにご用意できません。今回はセール対象外です。)
梅雨を目前に控えて美山はとても気持ちのいいお天気です。
「あー、去年の今頃は北海道ツーリングの真っ最中だったよな。」と仕事をしながら思い返し、今すぐにでもチケットを取って出かけたい衝動に駆られそうです。でも、そこはグッとこらえてこのブログを書いています。今年は既に春に2週間もフランスに出かけたしね。しかも、まだツーリングレポートも完結していない。今はまだロングツーリング自粛期間中です。。。
さて、今日は新しいバッグシリーズのご紹介です。
その名も「ランブイエ 2019」。
2019年に参戦したフランスのコンクールマシンが開発の元になったので、アンベール2017に続きコンクールの開催場所を製品名としました。
5年前のちょうど今頃、このバッグの元になるバッグを試作してたんですよね~。なんだかついこの間のような気もしますが、5年もたってしまいました。コロナの時代が無ければもう少し早く形になったかもしれませんが、それはもう、言いっこなし。やはり、その期間は作ってくださるところを見つけるのも難しかったし、細かな打ち合わせだけでなくテストに出かけるのも難しい時代でした。おかげでゆっくり時間をかけてしっかりテストできましたし、納得のいくものになりましたよ。
コンクールで試作したバッグ
中々豪快な使われ方です。
北海道でも。
与論島ツーリングでも。
フランスでもしっかり使い込みました。
で、出来上がったランヴイエシリーズ
全てのバッグとサポーターを合わせても1キロもありません。
走行中は全ての荷物は自転車に持ってもらえますが、輪行時には逆に自転車を含めたすべての荷物を私たちが持たなければなりません。ですので、「軽くて丈夫」がこのシリーズの大きなテーマです。
【フロントバッグ ランブイエ2019】
中身がない状態だとご覧の通りぺったんこです。これは使わない時の収納場所が助かりますね。
「えー、フロントバッグに見えない!」
そんな声が聞こえてきそうですが、自転車に着けるとこのとおり。
コーデュラスペクトラナイロン×リップストップナイロン
軍用品やアウトドア用品ではもう、当たり前のように使われている軽くてとても丈夫な生地を採用しています。軽くて丈夫、そう、軽くて丈夫がキーワードです。なので、バッグの形を整えるようなケースはあえて用意しませんでした。その代わり、専用のサポーターでステムに固定し、バッグは荷物を詰めることによって形が整うようになっています。
そして、その形は伝統的なバッグとさほど変わりません。
マップケースがあって、マップケースの下にもポケットがあって、バッグの前後左右にもポケットがある。でもね、それぞれの使い勝手に工夫を凝らし、グランボアならではのアイデアをたくさん盛り込みました。
マップケースはちゃんと5万図が収まるサイズで、開閉はベロクロ式です。これは変わらない。でも、マップケース下のポケットは厚さが30mmもあるので、これまでとは比べ物にならない収納力です。ツーリング中に使う頻度の高い携帯や財布の他に、タブレット端末や小型カメラ、エナジーバーなどたっぷり入り、開閉しやすいファスナーで出し入れもスムーズです。PBPなどの長距離ブルべでは走行中にも食事をしようって人もいるそうで、コンクールの課題に盛り込まれていたのです。それで思いついたのがこの形だったわけですが、使ってみると普通のツーリングでもすごく便利! ちょっとしたことでいちいちバッグ本体を開けずに済むので、もう、これがないと困るくらいです。
バッグ本体は巾着式にしました。
軽くて丈夫な生地は柔らかくもあり、大き目のスタッフバッグのようにしなやかに開閉できます。本体内部にもハンドル側にスリット式のポケットがあり、大きな袋の中で迷子になりがちな小物の整理に役立ちます。また、本体と前ポケットとの間には、半円形のバッグの底まで拡がるスリットスペースがあり、A4サイズのパンフレットなどを折ることなく収納可能です。実は、これはどうしても欲しかったスペースでした。これだけのことで旅先でのハガキやパンフレットを綺麗に持ち帰ることができるようになるんです。しかも、ここにグランボアのパンフレットくらいの物を入れておくとちょうどバッグの形がスッキリ決まります☆
バッグ前面のポケットはよくある形。
でも、蓋の開閉には強力マグネットを採用しました。薄い生地だから可能なわけですが、使ってみると片手で開閉できてとても便利です。
その蓋の内側には更に薄いパラシュート生地でファスナー式のポケットを作ってもらっています。チケットやパスポートなど、取り出しやすい貴重品スペースとして重宝します。サイドのポケットはスリットタイプですが、薄いパラシュート生地で下の方だけタックを取っています。中身が無いときはぺったんこだけど、物を入れることによってポケットが下の方だけ膨らみ、中のものが飛び出しにくくなる仕組みです。走行中に出たちょっとしたゴミを入れることを想定しています。
バッグの後ろ側のポケットは通常の位置に2つあります。ですが、外からでも中身が分かるようにメッシュ生地を使い、開閉はこれまた巾着式です。
専用のサポーターは軽くて錆に強いステンレス製です。バッグ本体に縫い付けてあるパラコードとサポーターのダボでしっかり固定します。
サポーターはコの字型でサイドの先端には返しが付いていて走行中にバッグがじわじわずれてしまう事もありません。
フロントバッグ寸法
バッグ本体 W250×H220×D150
バッグ上蓋 W250×H30×D150
重さ
バッグ本体 193g
ショルダーベルト付 238g
ショルダーベルトとバッグサポーター付 313g
価格
バッグ+ショルダーベルト1本 44,000円
ステンレス製専用サポーター 11,000円
※当分はバッグのみの販売しない予定です。
製品は国内製造で一点一点ハンドメイドしていただいてます。少人数でとても丁寧に作ってくださる工房ですが、たくさん入荷することはまずありません。それに専用サポーターもアイズバイシクルの工房でこれまた一点一点製作することになっています。お待たせすることもあるかもしれませんが、どうぞご了承のうえ、余裕をもってご注文下さいますようお願いいたします。
まずはフロントバッグから発売開始しますが、次の入荷は8月頃の予定です。
ご希望の方はオンラインストアよりご注文下さい。ご予約で承ります。
また、ランブイエシリーズに使用する生地には撥水性がありますが、縫い目には止水処理をしていません。完全防水ではないことをご理解の上ご使用ください。
店頭でサンプルはご覧いただけます。
皆様のご来店お待ち申し上げます。(^^)/
待ちに待ったリムがようやく入荷して参りました!!!
今回もたくさん届きましたが、何とかリムメーカーのご厚意でハト目無しのモデルも少数で作ってくれました。
ですので、パピヨンヴィンテージもご用意することができましたよ。
アトリエ長が検品しながら店頭在庫用に整理してくれています。
これでしばらくは大丈夫。(^^)
お待たせしました!
朝9時。トゥールーズ・マタビオ駅前。今日からいよいよ本格的に走り出す。
今回のコースは世界遺産のミディ運河「Canal du Midi 」に沿って走る自転車道を使って地中海に至るコースだ。ミディ運河は17世紀にボルドーのワインをスペインから通行税を徴収されるジブラルタル海峡を経ずしてイタリアへ運ぶために造られた。トゥールーズから地中海までの240kmの起伏の多い地形を100超える水門を設けて船の通行を可能にしている。ただ最高地点の標高は200mほどしかないので運河に沿って走ればきついのぼりはない。
本日の予定は75km先のカステルノーダリ「Castelnaudary」である。駅前にもミディ運河は流れているのだが、時間に余裕がありそうなのでちょっと市内を散策することにした。まずは市役所前の広場へとハンドルを向け走り出す。
立派な市役所である。中には名画が展示されていてさながら美術館の様とのこと。たださすがに絵画鑑賞の時間は取れそうもない。ちょっとだけ市内の取引先のお店にも立ち寄ってみる。
昨晩のレストランでイデアルのフレッド氏から強く勧められたポンヌフ 「Pont Neuf 」からスタートすることにした。 パリにも同名の橋があるがパリと同時期の17世紀にできた橋で、大西洋とそそぐガロンヌ川にかかっている。ミディ運河はこのガロンヌ川とつながっていることによってボルドーのワインを地中海へと運ぶことが出来たのだ。
ミディ運河に向かう。広い路面電車道を通ってトゥールーズの大学前まで来てトイレがあったので立ち止まっているとお嬢さん方に声をかけられた。とてもきれいな自転車ね。と
写真を撮っても良いかと尋ねられ、どうぞと答えて色々説明してあげた。うれしかった。
公園のような大きなロータリーを経てようやく運河沿いの道に入ることが出来た。
郊外へ向かって続く運河には大小の舟が停泊していて、永いこと停泊していているように見える舟も多い。幾隻の舟のからは煙が立ち上っていてどうやら住居代わりに使われているようだ。
大木となった並木が延々と続いている。
もうお昼を過ぎているのに延々と運河の並木は続く。今はシーズンオフで本当にひと気がない。当然運河沿いに点在する施設もほとんど閉まっていた。昼食をとれる場所を捜していると運河対岸の道路脇に車がたくさん留まったレストランを発見。1kmほど先の橋を渡ればたどり着けそうだった。
おそらく地元の人が利用するレストランであろうと見当をつけて恐る恐るドアを開けると手招きする人がいる。ここのオーナーさんのようである。大勢のお客さんで賑わっていてフランスでは珍しいタコ料理の昼食をとることが出来た。
この運河沿いの自転車道はもともと帆以外の動力の無かった時代に馬などを使って船を引っぱって動かすために作られた道とのことである。数kmおきに高低差を補うための水門が現れる。そこでは僅かに道がのぼりになるが全く苦にはならないのだが、水門はいくつもいくつも現れる。しかしそのうちに今回のピークは越えてしまった。
シーズンオフの運河はあちこちで護岸工事が行われている。そのため運河沿いの道には機材の運搬のための車両や重機が入って荒れた個所があった。
昨夜の雨で泥道となったこの道でトラブルが起きた。その荒れた路面を無理くり走っていてサイドバッグがキャリアから外れて泥除けを巻き込んだのだった。このサイドバッグは現在開発中の軽量バッグのプロトタイプで、今回のトラブルを踏まえての更なる改良を重ねることになった。
直ぐに泥道からは脱出できたので、泥除けを取り外して修理を試みた。ER輪行用の泥除け取り付けなので容易に泥除けをはずす事はできた。
手ごろな大きさの太めの枝を拾ってきて泥除けの裏から押し出すようにして少しずつ直していく。さいわい大きな亀裂はなくタイヤとのクリアランスが出せるところまで戻った。なんとかこれで走り続けられるようにはなった。
運河の干上がった工事区間にはたびたび出くわした。工事区間の入口に迂回路の指示があれば安全を期してその道を選んだ。
迂回路をたどると一段上がった丘に導かれたりするのであるが、そこにはひろびろとした牧草地だったりする。
宿に着いてから跳ね泥を浴びた自転車を整備していると日はとっぷりと暮れてしまった。夕食のため人気のない街の夜道をレストランまで歩く。目指すはこの地方の名物料理のカスレ「Cassoulet」インゲン豆と鴨の煮込み料理である。
夜の運河は寂しげだ。でも豆でおなかは満たされた。これで明日も走れる。




































































