スタートからPC1まではこちら
PC1 VILLAINES-la-JUHEL217㎞ 19日1:29
PC1での休憩はジュースを飲むことにとどめ、再びバイクにまたがって出発した。まだ自分の周りを走っているのはA~E組のライダーとタンデムやベロモービルだけだ。後ろの90時間組に追いつかれていないことから全体の中でもいいペースで走れている。当初の計画よりも僅かに遅れていたが、太陽が昇ればパワーが出るので焦る必要はない。夜明けまでは不意に眠くなったりするのでペースを上げることよりも無理のないペースを維持することを意識して走り続ける。
PC2 FOUGERES306㎞ 19日5:46
ここではコーラとアップルパイを食べた。出走前の計画ではブルべ中の補給食の大半を日本から持ってきた補給食で補う予定だった。しかし、持参した補給食のみだと飽きてくるので眠気覚ましも兼ねて軽食コーナーを利用した。
日本の8月なら4時半頃には明るくなるが、フランスの場合は2時間ほどそれが遅くなる。日の入りが遅いのと同様に日の出もゆっくりだ。この写真を撮影したのは8月19日午前7時。日本なら5時前くらいといわれても違和感がない。街の人々の動きも同様で、フランスの午前7時は日本の午前5時頃と同じような空気が流れている。
PC3 TINTENIAC360㎞ 19日8:18
この時間になると太陽が昇り始め気温も上昇するのでペダリングに力が戻ってくる。下の写真のようにPBPでブルべカードに押されるスタンプは個性豊か。PCに着くたびにどんなスタンプがもらえるのかが楽しみになっていた。
そしてここTINTENIACでは最初のサポートを受ける。PCから5㎞圏内であればサポートカーとのコンタクトが許されているのでPCと同じ街中でサポートカーに待機してもらった。サポートしてもらうのはここまで消費した補給食、飲み物の補充、そして昼間は不要な防寒具関係を預ける。補給食と飲み物がサポートで補充できるのでPCではブルべカードのスタンプとトイレを済ませるだけでよくなった。ただ、先頭を争うような走りをしているわけではないので結局のところPCでは腰を下ろして休憩するし、朝、昼、晩の3食はレストランの食事を使った。レストランは90時間組の場合、行列が出来て並ぶだけで時間を取られるということだが、80時間組の場合は待っても5分程度なので日本のブルべでコンビニに入るのと大差がない。なので自分のような時間帯で走っている場合、サポートカーが付いても大幅な時間の短縮にはあまりつながらなかった。それよりも、長い道のりでPCで待ってくれているサポート隊の存在自体が心の支えになったし、スピードを維持するモチベーションにつながった。今回、1200㎞のあいだ知り合いはおろか日本人参加者にほとんど会うことが無かったので、PC到着後サポートに合流し食事をしながら会話が出来たのは本当に助かった。
【ウェアの話】
PBPは昼夜問わず走り続ける。昼間は20~25℃で日本に比べて湿度が低く、サイクリングをするには快適な気候。宿に泊まっておいしい時間だけ走るなら日本の初夏と変わらない服装で事足りるが、ブルべで時間制限がある以上そうはいかない。PBPは標高500m以上の峠を越えることはないので凍り付くような寒さはないが、それでも夜間や早朝は5℃以下まで気温が下がる場所もある。8月だからと油断して軽装で出走するとDNFになりかねない。寒さ、暑さへの耐性は人それぞれなので一概には言えないが夜間の寒さ対策はPBPを完走するうえで重要なポイントになると思う。
自分の場合は半袖ジャージ、半袖インナー、半指グローブ、ビブショーツ、薄手のウールソックスを基本の服装にして、気温に応じて長指グローブ、アームウォーマー、レッグウォーマー、ネックウォーマー、レインジャケットを重ね着して気温差に対応した。想定したのは最高気温25℃、最低5℃程度。6月に参加したBRM622紋別600㎞と同じ組み合わせを使った。ウェアはスタートからゴールまで同じものを使用し、途中で着替えはしていない。自分の好みだが、肌に触れる衣類はビブショーツを除きメリノウール製のものを使用した。防臭効果に優れているのと、汗や霧などで濡れても冷えにくいので長距離サイクリングに適した素材だと感じる。
①基本の組み合わせ
②日没前や明け方
①にアームウォーマー、レッグウォーマー、反射ベストを加える。暑くなったら写真のようにベストのジッパーを開け、アームウォーマーをまくって温度調整。
③夜間、早朝
長指グローブ、レッグウォーマー、アームウォーマー、ネックウォーマー、反射ベストのフル装備。
これでも寒い場合は反射ベストの下にレインジャケットを加える。レインパンツも持参したが使う機会がなかったのでサポートカーに預けた。
冬用のウェアを持っていくほどでは無かったが、寒さは眠気や低体温症を誘発するので防寒具に関してケチってはいけない。暖かいウェアで走っていて暑くなればジッパーを開けたりインナーを脱いで体温調節ができるが、寒さは着込むことでしか根本的な解決はできない。日本であれば夜間でもコンビニが開いていて、レインコートなどを入手できるがPBPの場合それは期待できない。夜中に広大な畑の一本道で寒さに震えないためにも防寒対策は重要だ。
TINTENIAC出発後、気温とともに自分の調子も上がってきた。ペースの合う参加者同士でグループができるのでそれを利用しエネルギーを節約しながら距離を稼げる。交通量は少なく、見渡す限りの畑と牧草地の中を進んでいく。
PC4 LOUDEAC445㎞ 19日12:12
全体の3分の1を消化。補給食は十分に持っているのでブルべカードにスタンプを貰い、長居せずに出発。
Saint-Nicolas-du-Pélem488㎞
ここはPCではないので止まる必要はないが、トイレと気分転換がしたかったので10分ほど休憩。
ジュースを飲み干し、バナナはポケットに入れて出発。あと40㎞弱で次のPCだ。
緩やかに登り、緩やかに下る道が続く。時折ダンシングを織り交ぜるが、これは加速の為ではなく休むために腰を上げている。
CARHAIX-PLOUGUER521㎞ 19日16:17
ブレスト前最後のPCに到着。サポートカーはまだ到着していなかったので80㎞先のブレストに備えてミートソースパスタを食べた。食べ終わるころにサポート隊が到着。今後の予定について話し合い、ブレストPC5㎞圏内にホテルを確保してあるので場合によってはホテルでの仮眠をとることも視野に入れて走ることにした。ブレストの市街地は複雑なのでサポートカーによる補給は無し、ホテルでの仮眠をしなければサポート隊と会うのはまたこの場所になる。
PCのすぐそばにサポートカーが止めてあったのでPCを出た後、車内で休憩。。ここまでほとんど仮眠をとっていないので車のシートが心地よかった。
サポートカーでの休憩はしっかりと眠れた感覚はなかったが、疲労は軽減された気がしたのでブレストまでの約90㎞もペースを落とさずに走ることができた。この区間もトレインに加わって省エネ運転。人の後ろにつきっぱなしだとボンヤリしてくるので時折前を牽いたりもした。
ブレスト手前のRoc Travezelが本コースの最高標高地点。電波塔のようなものが見えてくる。360度遠くまで見渡すことができてまるで地の果てのような場所だった。
Roc Travezelを過ぎるとブレスト市内まで下りる。どうにか真っ暗になる前にブレストと大西洋を拝むことができた。
PBPの折り返し地点であり、僕自身初めての大西洋だったのでこの景色には感動した。まるでゴールしたかのような写真を撮影して暫し感傷に浸る。
PC手前では私設のエイドステーションが出ていた。ほかの参加者の流れに乗って自分も一休みしそうになったが、PCまであとわずかなので先に進んだ。
ブレスト市内をPCに向かって走る。ブレストの市内は坂が多く、海岸からPCまで登りっぱなしだった。日本で例えるなら長崎だろうか。
BREST610㎞ 19日22:10
ようやく折り返し地点のPCに到着。昨日のスタートから29時間が経過している。60時間以内に完走するならば後半のペースダウンも加味して25時間程度での到着を計画していたが、向かい風の影響か時間がかかっている。ブレストではスタンプを貰ってトイレを済ませ、時間は惜しいがレストランでしっかりと夕飯を摂った。
バイクスタンドに並ぶ自転車のメインは80時間組だが、90時間組のプレートを付けた自転車も増えてきた。
これで往路のページがスタンプで埋まった。
手前のCARHAIX-PLOUGUERでもパスタを食べたが既に4時間近くが経過しているのでレストランで食事。バゲット、マカロニ、蒸し鶏、サラミ、ニンジンサラダのセット。疲れているとなんでも美味い。
ブレストには1時間ほど滞在し、眠気も感じていたがパリに向かうべく暖かいレストランを後にした。
③に続く…
こんにちは、スタッフの前野です。8月18〜22日にフランスで開催されたパリブレストパリ1200km(以下PBP)に参加してきました。
PBPと言えば、ブルべをやっていれば一度は耳にしたことがある言葉でしょう。PBPとはParis-Brest-Parisの略語で、パリと大西洋沿いの港町ブレストを往復する1200㎞ブルべです。その歴史はツールドフランスより古く、現在は4年に1度開催の世界中からランドヌールが集うブルべの祭典です。
今回、自分はビルダーの競技会CONCOURS DE MACHINES 2019(以下CDM)にエントリーしたグランボアのライダーとしてPBPを走りました。PBP出場の経緯に関しては少し特殊ですが、普段は普通に働きながら休日を使ってブルべやサイクリングを楽しむ一般的なランドヌールです。そんな自分が見たPBPを紹介します。
【コース】
現代のPBPのスタートはパリではなく、パリから少し西に位置するランブイエです。ランブイエと大西洋に面する港町ブレストを往復する1219kmです。(下のマップは実際に走ったGPSのログです。)
【出走時間について】
普通のブルベは制限時間が一律に決められていますがPBPの場合は80、84、90時間から参加者が選択します。制限時間が短い80時間は18日午後16時から順番にスタートし、その後に90時間組がスタート、84時間組は翌朝のスタートとなります。
今回、自分もこの写真の特別車両枠(CDM参加車両、タンデム、リカンベント、ベロモービル等)90時間F組で17時15分にスタートするはずでした。しかし、事前に日本で本登録する際にCDM主催者側からCDM参加チーム出走時刻変更がこちらに伝わっておらず、80時間E組17:00スタートになりました。1200㎞の制限時間が80時間と90時間では時間の使い方が大きく変わってきますが、CDMで得点を稼ごうと思うと80時間以内のフィニッシュは必須だったので走行計画に影響はありません。(CDMは80時間を境に15分刻みで速い場合は加点、遅い場合は減点)
【現地での試走 8月15、16日】
フランスにはスタートの4日前に到着。15,16日は時差ボケ解消と身体を慣らすために計200kmほどランブイエ近郊を走りました。
ランブイエに到着した15日は18~20時過ぎまで70㎞程走行。写真のように見通しの良い道路が続き、往路は西からの向かい風であまり速く走れませんでしたが、復路は追い風となり、ものすごい速さで帰ってくることが出来ました。実際にPBPのコースを走ってみると風向きは大きな要素であることを実感した次第です。試走以降、18日からの風向き予報から目が離せなくなりました。
16日は前回2105年までのスタート地点サンカンタンのナショナルヴェロドロームへ。今回のスタート地点は牧歌的な雰囲気のランブイエですが、パリに近いサンカンタンは高規格道路が通り、ショッピングモールがあったりして街の雰囲気が異なります。実はヴェルサイユ宮殿もこの近くにあるので行きたかったのですが時間の都合で諦めました。
【PBPの路面状況】
路面の状態は比較的良好ですが街中には石畳や舗装の割れが散見され、細いタイヤで走るには少しリスキーな場所もあります。CDM号も予備車もエアボリュームに富んだ650×38Bタイヤを履いているので試走もPBP1200㎞もパンクとは無縁でした。
実はタイヤの選択は直前まで親方と悩んだ部分で、今年完走したブルべのほとんどをチューブレスで走った自分は試作品の650×38or42BチューブレスレディタイヤでPBPを走ることを希望していました。しかし、飛行機でチューブレスレディタイヤを空輸することで生じるリスク(空気を抜くことでビードが落ちる可能性、ビードが落ちなくてもシーラントの気密保持層が壊れることで空気圧が安定しなくなる可能性がある、チューブレス空輪の経験が無いのでトラブルの予測がつかない)とCDMの得点で重要な重量面で試作チューブレスレディタイヤ+シーラントの組み合わせと超軽量タイヤ650×38Bグランボアエキュルイユ、SOYO製試作650B用ラテックスチューブ、パンク対策シーラント少量の組み合わせに重量面で大きな差がなかったことから信頼性を重視して試作チューブレスレディタイヤ+シーラントではなく、超軽量650×38Bタイヤ+シーラント入りラテックスチューブの組み合わせに決まりました。
同時にリムも他社製品のチューブレスレディ対応のものからグランボアパピヨンWアイレット28Hに組み替えています。ホイール単体での重量はパピヨンWアイレット28Hに組み替えたことで増加しましたが剛性感に優れ、荒れた路面でも安心して突き進める信頼性の高いパピヨンリムに、前述の超軽量タイヤシステムを組み合わせたことで信頼性と乗り心地、軽やかさを併せ持った足回りが出来上がりました。特に乗り心地と転がり抵抗はチューブレスレディタイヤと同等かそれ以上に好感触で、パンクに対してはラテックスチューブ内に注入したシーラントが対応してくれるのでパンクに対する不安も少ないです。万が一シーラントで防ぎきれないパンクが発生した場合は普通のチューブと同様にパッチで修理するかチューブの交換で済むのでチューブレスのトラブルに比べたら煩わしさも少ないです。
【PBP走行計画】
8月18日17時ランブイエをスタート、翌朝到着するPC2まではサポート無しで走行。ブレスト手前のタンティアックからサポートを受けつつ走り、21日午前5時までにゴールする計画でした。尚、睡眠に関してはどこで取るかは決めておらず、眠くなったら1~2時間程度寝ることにしました。
トータルの目標は60時間。60時間に目標タイムを設定した理由はGWに走ったBRM502京都1000kmのタイムが59時間台でこれは補給や休憩に多めに時間を割いた上でのタイムでした。高い峠が無く、参加者が多いPBPでは他者と協力し合うことで巡航速度が上がり、PCではサポートを受けられることが決まっていたので自分にとって無謀でない目標時間だと考え60時間としました。
【17日】
前日はPBPの車検と事前受付、CDMの車検と展示。
車検と事前受付は混雑が予想されたので早目に受けられるように午前8時過ぎに会場に到着。この時はまだ列も短く、殆ど待つことなく車検とフレームバッジ等の受け取りを済ませることができました。30分も経つと列は3倍近くに伸びていました。
詳細はこちらの記事で。
【18日】1200㎞ブルべが始まる
午前中は宿でリラックスして過ごす。昼頃まで眠りたかったがベッドで横になっても興奮からか深い眠りにつくことは出来なかった。昼食は稲荷寿司とちらし寿司。やっぱりお米を食べるとホッとするし元気が出る。
こちらはスタート時に携行する補給食。計画では400㎞弱約18時間をサポート無しで走るため、そこまでの食事は日本から持ってきた補給食で補う予定だった。そのため1本200kcal前後のバーを多めに携帯した。今回使用するフロントバッグは6月のJBTで使用した試作モデルの進化版。BRM622紋別600㎞での雨中走行などを経てバッグの生地は防水仕様に変更されている。そしてJBT版で既に使いやすかった上蓋の補給食ポケットは、ジッパーの開け閉めがより簡単なものに改良されており今回も補給食の管理に役立った。メインの荷室にウェアや手袋と一緒に補給食を入れると走行時の振動や衝撃で小さい補給食が底の方へ移動してほしい時に見つからなくなることが多々ある。このバッグの補給食ポケットはそういったストレスから解放してくれる。
昼食後15時過ぎに車で会場入りし自転車を組み立てて最終チェック。何せこれから1200㎞を共に走る相棒だ。スタート前から不安要素があっては困るので念入りにチェックした。前日のCDM展示の際にチェーンオイルをふき取っていたので念入りに塗布する。今回も使用するチェーンオイルはフィニッシュラインセラミックウェットルーブ。今年に入ってからすべてのブルべで使用していて滑らかにチェーンが回り、雨に当たらなければ600㎞差し直す必要がないところが気に入っている。
スタート待機場所に到着。たくさんのランドヌールと自転車で埋め尽くされている。そこで2月のBRM216小倉300㎞でお世話になったAJ福岡のBさん(いちごオレの方)と会うことが出来た。お話を聞けばなんとモンサンミッシェルに寄り道するそうだ。コースを外れてモンサンミッシェルまで往復80㎞の追加!やっぱりこの会場に来てる人たちは普通じゃない。スタート時刻が近づくとE組の待機列に並び、出発を待った。
最初のテントでブルべカードにランブイエのスタンプを貰う。
スタートゲートの前で17時にを待つ。
17時、E組のスタート時刻だ。1200㎞の旅が始まる。
スタートすると大集団が形成され周囲の流れに乗って進んでいく。1車線をフルに使って走る集団でブルベを進めるというのは国内ではあり得ない状況だ。まるでTVのツール・ド・フランスで見るプロトン。参加者間の間隔がかなり近いので周囲の動きに同調して走り続ける。今ここで変な動きをして前輪をハスったり追突されれば自分だけでなく後ろを走っている大勢の参加者を落車に巻き込みかねない。
スタート直後は緊張してかなりナーバスになっていたが、徐々にリラックスして走れるようになり集団での走行を楽しむ余裕が出てきた。ただ、集団のペースは速く、とても1200km保つとは思えないスピードだ。流れに乗っていれば付いていけるスピードなのと集団から離れて一人になった場合、この日は西風が強く吹いていたのでスピードがかなり落ちることは確実だった。なのでこの時は多少速くても集団の中で過ごすことを選んだ。
118km地点のMORTAGNE-au-PERCHEに到着。グロスアベレージは29kmhを超えていた。
ここはスタンプを貰う必要があるPCではなく、補給食や水などが調達できるサービスポイントだ。ここまでオーバーペース気味の集団についてきたので自転車を降りると体が悲鳴を上げた。乗車中は気が付かなかったが無理をしていたようで屈むことすらままならない。ここで必要な動きは水の補給だけだったが強い疲労感から10分以上動けなかった。15分後にスタートしたF組のタンデムや弾丸のようなベロモービル、そしてコンクールマシンに参加しているRossmanCyclesのハーンさんが早くも追いついてきた。自分も水を汲んでようやく再スタート。こんな所でのんきに休憩していられない。まだ100㎞しか走っていないのだ。
118㎞地点MORTAGNE-au-PERCHEから217㎞地点VILLAINES-la-JUHELまでの約100kmもノンストップで走行するつもりだったが、眠気覚ましのためバーでコーヒーを飲んだ。まだ一晩目だが前走者のテールライトを見ていると吸い込まれるように眠くなる。自分は完走することが最優先事項なので多少のタイムロスはあってもリスクは消していかなければならない。そんな訳でバーの灯りに寄せられたのだ。
結局ここではコーヒーのオーダーや地元の人と話したりして10分ほど使ったが価値のある時間だった。
【19日】
約8時間で217㎞地点のPC1VILLAINES-la-JUHELに到着。時刻は深夜1時過ぎといったところだ。ハイペースで走り続けてきたのと眠気で既に疲労感がにじみ始めている。夜は本当に辛い。
まだ残り1000㎞。とんでもないブルべに参加してしまったと思いながら椅子に座って缶ジュースを飲んだ。
②に続く…
こんにちは、スタッフの前野です。先日開催されたオダックス近畿主催のブルべ、BRM727守山300㎞に参加してきました。PBP前に走るブルべはこれで最後です。
コースは琵琶湖大橋東側をスタートし、途中越と江文峠を経てて京都市街地へ。市内を抜けて老の坂峠、亀岡、天引峠、丹波篠山、加東を通って姫路へ行き、復路とほぼ同じ道で帰る300㎞です。普段のブルべは早朝スタートのことが多いですが、今回のスタート時刻は18:30。走り始めてすぐにナイトランを迎えることになります。2週間後のパリブレストパリのスタートも17:00でフランスの場合は日の入り時刻が遅いので少し条件は異なりますが夜スタートの練習になるのでは?と思いエントリーしました。コースプロファイルも細かなアップダウンの連続で100㎞あたりの獲得標高約1000mという点も丘陵地帯を走るPBPに近い気がします。
ちょうどこの日は台風6号が紀伊半島に接近していてスタート時刻に雨が止むかわからないような状況でした。午前中は普段通り過ごして昼食を済ませた後から部屋を暗くして仮眠ができるように整えました……が、結局台風情報が気になりしっかり眠ったのは1時間ほどで、スタート地点の守山へ向けて走り出しました。自宅からスタート地点まで30㎞ほど。これからブルべで走る江文峠と途中越えを通って琵琶湖大橋へ。空は曇っていましたが雨に合うことなくスタート地点のピエリ守山に到着。飲み物と補給食を買い足して、ブリーフィングと車検を受け18:30にスタートしました。
琵琶湖大橋は行き帰りの自走とブルべでも往復したので4回渡りました。向こうに見える施設がスタート地点です。
途中越え、江文峠は凄まじい湿度の中通過。京都産業大学近く、原峠の先にあるコンビニが通過チェックなのでゼリー飲料を買って長居はせずに再スタート。京都市内に入って丸太町通りのあたりで強い雨が降り出しました。
20時ごろで交通量が多く、雨の降る京都市内通過が一番神経を使いました。普段見慣れた景色もブルべ中だとちょっと新鮮?
雨は老の坂の登りに入るころには止み、モワッとした湿気が残りました。今回、通過時間の制限があるチェックポイント(PC)はなんと2か所だけ。1つ目は154㎞地点の姫路、2か所目は289㎞地点の京都です。普通のブルべだったら50~60㎞に一か所はPCが設定されているものですが、今回は止まる必要があるのはPC2か所と通過チェック1か所(通過時間制限なし)の計3か所のみ。今回はロードバイクで走っているので補給食はともかく、水は2時間に1回は補給する必要がありました。(ボトルケージ2つの内1つはツールボトルに割り当てているためフレームに固定できる水は700mlのボトル1本のみ)コンビニに入って飲み物を買おうとすると余計な時間がかかるので自販機で補給は済ませました。
0:57姫路のPC1に到着。この先京都のPC2まで100㎞以上停車する予定が無いので補給は多めに!
亀岡に入るころ夜が明ける。
前日の昼寝のおかげでひどい眠気に悩まされることはありませんでした。しかし、滝のように流れる汗と不快な湿気が一晩中続いたせいでこの頃には早く家へ帰ってシャワーを浴びることが走り続けるモチベーションになっていました。
しっかりした食事を摂らなかったせいで江文峠でガス欠寸前、途中越えのピークまで残り200mほどでハンガーノックになりましたが、残りは惰性で下って8:08に307㎞地点のゴールに到着。
13時間38分で完走です。
ゴール後は楽しみにしていたオダックス近畿の300㎞ピンバッジをゲット。今年最初に認定を受けた300㎞はAJ福岡の小倉300だったのでようやくオダ近ピンバッジコレクションが増えました。写真のプリンは主催者の方からのご褒美です。完走後の身体にしみわたりました。ごちそうさまです。
今回、300㎞の認定時間としては自己ベストでしたがハンガーノックの原因になった補給の管理など課題も残りました。PC間の距離が長く停車回数が減り、気温が高いので固形物を食べる頻度が下がって飲料を多めに摂る傾向がありました。PBPでは補給食を口にする頻度を増やす、持参する補給食を今一度精査するなどの対策をして最後まで踏み続けられるようにしたいです。
今回のブルべは650Bランドナーではなく700Cロードで走りました。
タイヤは乗り心地と走りの軽さを優先してセールヴェルテ700×28Cエキストラレジェを選択しています。
700×28Cのエキストラレジェモデルは28㎜幅でありながら、軽量でしなやかなケーシングのおかげで平均210gという一般的な高性能23Cタイヤ並みの軽さです。エキストラレジェのしなやかなケーシングは振動吸収性と路面追従性が良く、スピードと快適な乗り味を高次元で両立しています。また、細幅のタイヤに比べるとエアボリュームがあるのでリム打ちパンクも発生しずらいです。
ちなみに自分はフロント4.5bar、リア4.8barほどで運用しました。空気圧の決め手は突き上げや振動がきつくない範囲で、ダンシングをしてもタイヤが潰れないくらいを目安にしています。高圧にしすぎると突き上げと振動がきつくなりタイヤの良さがスポイルされてしまうので、少し低めぐらいがいいと思います。
グランボアのエキストラレジェタイヤはダート走行には不向きですがランドナーでの使用に限らず、速さと快適さが求められるブルべやファストランをする方に最適のタイヤです。
クリアランスに余裕のあるディスクブレーキのフレームにはよりエアボリュームがある700×30Cエキストラレジェがいいですよ。こちらも30Cで250gと超軽量です。
リムブレーキロードバイクの場合、28Cタイヤはチェーンステーやブレーキキャリパーとのクリアランスが足りない場合もありますので現状のタイヤ幅とクリアランスを事前にご確認ください。
これでPBP前に予定していたブルべは全て終わりました。あとは8月18日17時のスタートまで準備を続けることです。
今年1月から走ったブルべです↓
BRM102神戸600㎞DNF
BRM112淡路200㎞
BRM216小倉300㎞
BRM309近江八幡200㎞
BRM323高松600㎞
BRM420近江八幡400㎞
BRM503京都1000㎞
BRM622紋別600㎞
BRM727守山300㎞(今回)
こんにちは、スタッフの前野です。ジャパンバイクテクニークの翌週に北海道で開催された600kmブルべに参加してきました。
今回参加したのはオダックスジャパン北海道主催のBRM622紋別600㎞。8月のパリブレストパリ前最後の600㎞ブルべとなります。コースは信号が少なく、PC以外で余計な停車をする必要がないので補給さえ失敗しなければ完走は容易なコースです。そして前回の記事でも書きましたが信号だけでなく獲得標高も少ないので2016年8月の宗谷600㎞で記録した25時間49分の更新を狙って北海道へ向かいました。
コースは札幌市郊外の丘珠空港近くからスタートして富良野、美瑛などを経由してオホーツク海に面する紋別まで行き、名寄、士別、雨竜を経由して帰る607㎞の道のりです。
6時過ぎにスタート地点に到着。ブルベカードを受け取りブリーフィング、車検のいつもの流れです。スタート地点では2016年の宗谷600kmでお会いしたAさんと3年ぶりに再会!!3年前はロードレーサーでしたが今回の愛車は旭川の蝦夷サイクルのスポルティーフ。それもオールメッキです。DHバーが着いているのが北海道のランドヌールならではですね。
7:00にスタートして10㎞程走ったところで本格的な雨に。ここから紋別に到着するまでの大半を雨の中走ることになります。
単独で千望峠を越えて上富良野町へ。
ウェット路面をグループで走ると先頭以外は前走者の水しぶきを浴び続けます。前走者と走行ラインをずらせばいいのですが、前に2人、3人いるとラインが重なりどうしようもありません。空が晴れていても路面が濡れていたら、雨が降り続けているのと変わらないくらい濡れます。砂利交じりの泥水が口に入ってくることもあるので雨に打たれているよりも不快です。これは前後フルサイズのマッドガードがあっても完全には防げず、リアのマッドガードに路面すれすれの長さがあるマッドフラップを付けて初めて解決されます。今回は600㎞のほとんどを単独で走ったのであまり問題にはなりませんでしたが、仲間と走るときはリアにもマッドフラップが必要だと感じました。
千望峠上富良野側の下りは小雨の中。
美瑛名物パッチワークの路は大雨。晴れていたら最高の景色をバックに自転車の写真を撮れたことでしょう。
牛の横断で小休止。本州では遭遇しない光景です。
雨の音しか聞いていなかったのでこちらを見ながらモーモー鳴いている牛さんに和みました。
紋別手前70㎞地点でスマホが水没。スマホケースとして使っていたジップロックの口を開けたままにしていたのが原因でした。
紋別に到着。ここまで310㎞を13時間。まあまあのペースで折り返しまで来ましたが雨で消耗して立て直しが必要だったので予定外のホテル泊です。風呂、夕食、衣類の乾燥、睡眠で7時間ほど滞在しました。水没したスマホも乾燥させてどうにか使える状態に。
自分が到着したときはまだ少なかった自転車もチェックアウト時にはこの通り。コースレイアウトとPCの配置的に紋別で宿をとる人が多かったようです。
【2日目】
3時半にホテルから再スタート。空が明るくなり始めていました。今回、ライトの明かりを頼りに走ったのは初日の約1時間だけ。いつもなら夜明けの瞬間に感動するものですが、今回は寝ている間に明るくなってしまったので600㎞を走っている感じがしません。オホーツク海の日の出を見ながら海岸線を興部まで進み、そこから内陸の名寄へ向かいます。
先週ヒグマが出没したようです。川の対岸や遠くから見てみたいと思いますが鉢合わせは勘弁……
1日目と対照的に快晴。灰色一色に見えていた景色は鮮やかに色付き最高のサイクリング日和になりました。ただ、日影がほとんど無いコースで日焼け止めを塗りなおさなかったので真っ赤に焼けてしまいました。
二日目は最初から最後まで単独で走り続けて33時間34分でゴール。当初の目標25時間台前半のゴールは出来ませんでした。雨の中24時間ぶっとおしで走り続ける力は今の自分には無く、1日目の状況から判断してホテルに入ったのは適切な選択だったと思います。もし紋別で宿に入らず走り続けていたら、かなり苦しい600㎞になったのは確実です。同じ状況で数年前の自分なら、紋別のホテルに入った時点で心が折れてDNFの電話をかけていたと思うので冷静に立て直せるようになったのは成長したと思います。今回の雨天走行の経験を今後の装備や走り方に活かし、PBP本番で悪天候に見舞われても乗り越えることが出来そうです。
京都から北海道に行くにあたり関空から新千歳まで飛行機輪行しました。飛行機輪行用にハードケースやクッション材付の輪行袋を持って京都から関空までを電車で輪行するのは荷物のサイズ的に困難なので、普段と同じ軽量輪行袋で飛行機輪行をすることにしました。
飛行機輪行が普段の輪行と違うのは自分以外の人が自転車を運び、場合によっては横置きになる可能性があることです。以上を踏まえて使用した輪行袋はオーストリッチSL-100 。最近はウルトラSL100ばかり使っているので出番がなかったのですが、より強い生地を使っていて安心感があるので抜擢です。それに加えてフロントフォークには日東の用心棒を装着しています。これも万が一横置きになった場合などにエンドが歪むのを防ぐためです。ペダルとリアメカは外しておきます。フレームとホイールの隙間に衣類の入ったスタッフバッグを詰めて、残りは電車で輪行する時と変わりません。
空港に到着したら自転車は預け荷物としてカウンターで手続きをします。ちなみに今回利用したのはANA。
重量とサイズがチェックされますが、受付の人も慣れているのか特に煩わしいことはありませんでした。一点注意する必要があるのはスプレータイプのチェーンオイルやバーナーのガス缶などは預けられません。この辺りは細かい規定があるので空港で預ける前に航空会社のホームページなどでチェックしておくとよいでしょう。
飛行機に輪行袋が積み込まれていきます。このように横倒しになる場合があるので、受付時に横倒しにする場合の向きなども確認されました。新千歳空港到着後、ベルトコンベアではなく係員の方が直接輪行袋を運んできてくれます。ちなみに行きの飛行機では僕以外に2人が普通の輪行袋で自転車を預けていました。
行き帰りとも袋の破れや自転車の損傷はなく、前述のとおり自転車を丁寧に扱ってもらえるので行動範囲を広げてくれる普通の輪行袋を使った国内線の飛行機輪行は今後も積極的に利用したいと思いました。LCCや航空会社によっては対応も変わってくると思いますが、飛行機輪行に対して高いハードルを持つことはないと思いますよ。今度はほとんど走ったことがない東北に飛行機輪行で行きたいです。
【今後の予定】
8月18日のPBPまであと1か月になりました。PBP前最後のブルべは滋賀県守山市から姫路市を往復する300㎞。スタートが夜というPBPのスタートに似た条件なので本番を想定した時間割を組んで確実に完走したいです。
そして守山300㎞が終われば残るはパリブレストパリ(CONCOURS DE MACHINES 2019)のみ。残りの時間を大切にしてフランスで納得のいく走りが出来るよう頑張ります。
BRM727守山300㎞
8月18日 PBP1200㎞
こんにちは、スタッフの前野です。
先月のBRM420近江八幡400㎞でSRを獲得できたので満を持して初の1000㎞ブルべとなるBRM503京都1000㎞に挑戦してきました。今回は写真多めでお届けします。
スタートは京都の三条大橋、ゴールはなんと岩手県花巻市です。1000㎞ブルべの制限時間は75時間。600㎞までのブルべは平均速度15㎞/h以上で完走できる制限時間に設定されていますが、1000㎞は制限時間が緩和され、約13.3㎞/h以上で完走できるように設定されています。(厳密には600㎞以降の制限時間が緩和されています)
スタートは5月3日午前5時。制限時間をフルに使うと花巻に着くのは6日の午前8時になります。今回、走行プランとして計画したのは60時間以内のゴール。8月のパリブレストパリ1200㎞は並行開催されるCONCOURS DE MACHINES 2019にグランボアのライダーとして参加する予定です。PBPは60時間を目標に計画しているので、今回の1000㎞は今まで経験したことがない長時間走行に慣れる意味もあります。以上の理由から今回の1000㎞はPBPの目標時間と同じだけ走ることを目的として、目標タイムを60時間と定めました。60時間以内のゴールは平均速度16.7㎞/h以上で走れば達成できます。16.7㎞/hというと普通の日帰りサイクリングなら余裕で達成できそうな速度ですがこれには信号、休憩、仮眠などで停車する時間も含めた平均速度なので、行程が延びるほどに難易度が上がっていきます。
今までの経験から、夜間は速度が低下するのは確実なので元気な昼間に距離を稼いで夜間の休憩時間を確保することにしました。
今回、ドロップバッグという荷物預かりのサービスがあります。スタートで預けた荷物をスタッフカーでゴールまで運んでもらえるサービスで、タイミングが合えばPC1、PC5、PC7で預けた荷物にアクセスできます。着替えなど花巻到着後に必要なものは全て預けたので、自力で運ぶ装備は600㎞ブルべとほぼ同じです。
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5月3日 1日目
午前4時過ぎ、京阪三条駅近くで車検とブリーフィング。5時ちょうどにスタート。蹴上、山科、小関越えを通って琵琶湖の湖岸へ。さすが1000㎞、参加者は皆SR獲得者なので小関越え程度では集団はほとんどばらけませんでした。
スタートから79.2km地点PC1ファミリーマート米原駅西店まではグロスアベレージ27㎞/h越えの爆速集団で7:52に到着。PC1出発後しばらく単独で走っていましたが、岐阜の市内で後ろから来た集団に混ぜてもらい、165㎞地点PC2道の駅平成に11:42に到着。改元直後で道の駅平成はお祭り状態。通過証明になるレシートを取得するのに少し時間がかかりましたが楽しいPC2滞在となりました。
岐阜の山中を進みます。
岩屋ダムの自販機で給水。もう一本のボトルに水はあるが、自販機で冷えたジュースがおいしい。
緩やかに上り続けるので無理のないペース配分で進みます。何せゴールまで800㎞以上残っているのです。
253.7㎞地点PC3ローソン高山久々野店に16:16到着。これから野麦峠を越えて松本まで90㎞コンビニがないのでフロントバッグにぎっしりと補給食を詰めて出発です。ミニあんドーナツ1袋、モナカ2個、おにぎり、そしてラムネ。これだけあれば100㎞以上先のPC4まで無補給でも耐えられるはず。
日没が迫る中、野麦峠へ向かって登ります。途中、気温が下がってきたのでアームウォーマー、レッグウォーマーを着けて寒さ対策をしました。向こうに見える雪山は乗鞍。下呂から一緒になった大阪のYさんと共に進んでいきます。(Yさん撮影)
Yさんの装備は1000㎞を走るには信じられないほどシンプル。カーボンバイクに小さなサドルバッグと小さなバックパックのみのファストランスタイル。ドロップバッグすら使用していません。話を聞いて驚いたのは、3日前まで岡山の1000㎞ブルべに参加していて獲得標高12000mのコースを52時間で完走したそう。滅茶苦茶速い。今日はその疲れが残っていてしんどいそうです。いや、そりゃそうでしょう・・・、中3日で1000㎞2本は強すぎです。
そんなYさんとポツポツしゃべりながら登っているうちに野麦峠到着。日没を迎え、あたりは真っ暗です。峠のお助け小屋で松本までの長い下りに備え、防寒具を着込んでホットコーヒーを流し込みます。
野麦峠からジェットコースターのような下りを経て松本市の郊外に到着。夕飯をしっかり食べることに決まりファミレスに約2時間滞在。休憩後、外に出ると気温が下がって寒さが堪えましたがまだ想定内の気温。ナイトランを続け、386.8㎞地点PC4ローソン大町木崎湖店に1:58到着。
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5月4日 2日目
PC4を出た後、しばらく走ってコンビニで大休憩を取り、木崎湖と長野市の中間、小川村で夜明けを迎えました。朝を迎える瞬間は本当にほっとします。
447.5㎞地点PC5セブンイレブン 小布施雁田店に6;37到着。ここでは補給のほかに、夜間装備から昼間装備への切り替え、ドロップバッグを引き出せたので不要と判断した輪行袋などを預けて軽量化。
小布施のPC5から少し北上した先にある「たかやしろ・見晴らし街道」。交通量は少なく、展望が効いて景色がいいのでおすすめです。
飯山線沿いに走って魚沼市へ向かう。
Yさんと先頭交代をしながら距離を稼ぐ。二人で走ると向かい風や登りでタレる区間の速度を落とさずに走れるのでメリットが多い。
555.8㎞地点PC6ローソン広神並柳店に11:58到着。緩やかなアップダウンが続くが街並みや遠くに見える山がきれいで景色に飽きません。PC6ではパスタで昼食を済ませました。昼食後、走り続けていると食べ過ぎたのか、眠くなったので気分を変えるためにグローブを外してポケットへ。1時間ほど素手で走り、もういいだろうとグローブを嵌めなおそうとしたところ片方が見つかりません。フロントバッグの中も探しましたが結局見つからず、ここからゴールまでの400㎞を夜間を除き素手で走りました。
淡々と走り続け、日没前の18:08、661㎞地点PC7ホテル丸井に到着。新発田の街で中華料理屋を見つけたのでYさんと夕食に入りました。ファミレスや町の飲食店をブルべ中に利用したのは今回が初めてでしたが、補給だけでなく気持ちも落ち着くのでコンビニに飽きたらこういうのもいいかもしれません。岡山1000㎞から連戦のYさんはPC7のホテルに宿泊していくことになったのでここでお別れです。下呂からここまで約400㎞、Yさんの存在には本当に助けられました。ゴール後お会いできなかったのですが、この場を借りて改めてお礼申し上げます。
新発田から山形までは山間部を通ります。割と交通量の多い道でトラックにひっかけられないかひやひやしましたが無事に通過。小国町付近を通過していた深夜は0度近くまで気温が下がり、野麦峠の下りとは比にならないほど寒さに苦しめられました。防寒対策として昼間の装備にアームウォーマー、レッグウォーマー、上下レインウェア、ネックウォーマーにビーニーを被って万全のつもりでしたがこれでも東北の夜は寒かったです。
途中、足湯があったのでたまらず停車。とにかく寒かったのでこれには助けられました。シューズカバーを持ってこなかったのでつま先が寒くて仕方なかったのです。新発田から山形までの約120㎞は寒さと眠気でかなりペースが低下し、この区間にかけた時間は10時間。コンビニでの休憩数回、更には歩道でサドルに跨ったまま寝てしまうこともありました。
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5月5日 3日目
2回目の夜を耐え、蔵王を見渡せる丘で夜明けを迎えました。787.5㎞地点PC8ファミリーマート山形駅東口店に5:03到着。
3日目も景色に変化があり、走っていて飽きることはありません。東北は学生の頃、日本海側を走っただけなのですべてが新鮮に感じられました。
888.1㎞地点PC9ローソン大崎鳴子温泉店に10:46到着。PCのコンビニを見落として2㎞程行き過ぎてしまいました。交通量が多く、PCは反対車線側にあったので気が付くのが遅れたのだと思います。
3日目の朝からくしゃみと鼻水がひどく、PC9を出てから体の倦怠感も感じるようになっていました。気分も少し沈んでペースが落ち、60時間以内のゴールが少し怪しい状況に。くしゃみと鼻水で路肩に止まっていると後ろから追いついてきた女性の方に声をかけられました。事情を話すと「薬ありますよ!」とアレルギー薬を分けていただきました。薬を飲んでこの方に牽いてもらう形で再スタート。徐々に調子は戻ってきてゴールに近づくにつれて脚が軽くなっていきました。後になって気が付いたのですが、この時の鼻水とくしゃみはアレルギーではありませんでした。この時、薬をもらってから徐々に脚が回るようになったのは飲み薬より、一緒に走る相手がいたことで気持ちが奮い立ったのが特効薬になったようです。
残り80㎞からゴールまで共に走ったIさんも剛脚。900㎞以上走ってきたのを感じさせないパワフルなペダリングでゴールまで突き進む。こちらの調子が戻ってからは先頭を代わってゴールへ向かいました。
944.2㎞フォトコントロールの厳美渓。GWで人だらけ。
ここまでだいぶ踏んだので60時間以内のゴールには余裕が見えてきました。それにしても最後まで一人で走っていたらペースを上げることはなかったと思うのでIさんと合流できたのは本当に助かりました。
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陽が傾いてきた16時29分、1008㎞地点ホテルグランシェール花巻に到着。タイムは59時間29分でほぼ計画通りゴールすることができました。初の1000㎞完走は意外なほどにあっけなく、楽しく終えることができました。多くのブルべはスタート地点に戻ってくるコースレイアウトですが、今回はゴールが遠く花巻ということで普段よりも旅情を感じる3日間になりました。
そして、1000㎞という壁を越えたことで、PBP1200㎞に自信をもって臨めそうです。
ゴール後、緊張が解けたのか体の倦怠感が急に増して夜は寝込みました。夜間の寒さで風邪をひいていたようです。休暇はまだ2日あったので、ブルべ翌日は仙台あたりまでツーリングをしようと目論んでいたのですが次回のお楽しみとなりました。
今回の1000㎞で効果を実感できた物をご紹介。
今までブルべを走る際に悩まされていたのがチェーンの油切れでした。普通のサラサラしたチェーンオイルを使うと200〜300km程度(モノによって差はありますが)でチェーンの油膜が切れてきて音鳴り、抵抗を感じるようになりその都度停車して注油していました。逆に、ドロっとしたものは潤滑性能は長持ちするのですが汚れを拾いやすくチェーンとスプロケットが真っ黒になって輪行袋を汚したり、掃除に手間がかかるのが難点でした。そんな両立しなかった長距離の使用に耐え、尚且つある程度汚れにくい製品を見つけました。
今回使用したフィニッシュラインのセラミックウェットチェーンルブは1000kmブルベの最後までチェーンを滑らかに潤滑し、汚れは写真の通り最小限。今回、3日間晴天だったこともありますがこれだけの距離を走って途中で注油をしなかったのは初めてです。ルブ自体は白いトロミのある液体で潤滑性能が長持ちするだけでなく、チェーンノイズが静かで非常にソフトな感触になります。ノズル型の容器はスプレータイプより無駄が少なく、丁寧に作業が出来るので扱いやすいです。
いいことばかり書きましたが、本当にこれといったネガティブ要素がないのでPBPもこのルブを使うと思います。
値段も手頃なのでブルベやツーリングに試してみてはいかがでしょうか。
それと、今年のブルべ200~1000㎞全てを共に走ったTypeER650Bの長距離走行におけるメリットも再確認することが出来ました。今使っているフレームは2年前にフランスで開催されたコンクールマシン参加時に2本制作された親方製軽量フレームの内の1本で、10000㎞以上舗装未舗装問わず様々な道を走りました。
カイセイ4130Rを使用したしなやかなフレーム、硬すぎない剛性感のクロモリステムとフランス型ランドナーバー、大きなエアボリュームの650Bタイヤなどが組み合わさり、非常に快適な乗り味と安定感をもたらします(自分が使用しているTypeERはセミオーダーモデルとパイプやジオメトリが若干異なります)。特にハンドルは途中でグローブを無くして400㎞近くを素手で走りましたが、ゴール後も手の痺れは無く快適でした。
フレームと色が違うフォークは1月の淡路200㎞の後、オフセット違いのものに交換しています。オフセットを短くしたことでロードバイク寄りのハンドリングを手に入れ、極上の乗り心地はそのままに30㎞/h近辺で巡行するのが楽な自転車になりました。走りの軽さを支えるタイヤは2月頃からチューブレスで運用して3000㎞近く走行。ツーリング、ブルべ用途に於けるチューブレスのメリット、デメリットがわかってきたのでそのうち紹介出来ると思います。
自分のようにランドナーで速く走りたい場合はTypeERのセミオーダーではなく、フルオーダーで走り方に合わせてフレームを設計した方がいい場合もあります。土、日は自分の4号車を店先に置いていることが多いので身長170㎝近辺の方であれば試乗していただくことも可能です。オーダーで悩まれている方はどうぞお気軽にご相談ください。
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次のブルべは北海道で開催されるBRM622紋別600㎞です。この600㎞はタイムを意識して3年前のBRM806宗谷600㎞で記録した25時間49分の更新を狙って走ります。
【今後のスケジュール】
6月15,16日第一回ジャパンバイクテクニーク
BRM622紋別600㎞
BRM727守山300km
8月18日パリブレストパリ1200㎞