油断大敵
長かった梅雨が明けた途端、すさまじい暑さとなっていますが、皆様お元気にお過ごしですか?
何年か前にドバイ経由でヨーロッパに渡った時に、40℃以上の気温の中を歩いた経験がありますが、「歩いてると死ぬぞ。」と、ほんの数キロの間に数台のタクシーに声をかけられたことを思い出します。40℃に迫ろうかという外気温なんて、そのころの日本では考えられない気温だったのに。。。
そんな暑さが一気に厳しくなりだした先日、1年ぶりに高山村を訪ねてきました。高山村と言えば、昨年JBTが開催された場所です。本当はもう少し早く行きたかったのですが、なんせ今年と去年ではずいぶん事情が変わってしまいましたからね。。。
で、その時少しサイクリングしたんです。
以前、前野が1000kmブルべの報告で紹介した、長野県中野市の高社山の麓を南北に貫く街道「たかやしろ、見晴らし街道」。親方はあの写真を見て、是非走ってみたいとずっと話していました。
今回、親方が組んだコースは、道の駅「北信州やまのうち」に車を置いて目当ての街道を往復するだけのコース。ざっと見て、片道20kmほど。大きな峠も無いし、午前中に京都から長野まで移動して、昼食後から走ったとしても余裕のコースと算段していました。
ところが、、、。
暑かった。。その日の最高気温は34℃、しかも街道沿いは果樹園で、風もほとんどなく陽当り満点です。おまけに私は甘く見すぎていて、ジーンズにTシャツ姿、しかも帽子を忘れてしまい、タオルを巻いてしのいでいました。平坦だと思っていたコースは小さなアップダウンの連続で、迷路のような果樹園に入り込むと辻々で止まっては地図を確認する必要がありました。もう、あっという間にフラフラしてきてしまい、軽い熱中症のようになってしまったのです。。。
幸い、早めにリタイアを決めたので自力で回復させることができましたが、せっかく久しぶりにお宿に泊まったというのに食事もそこそこに8時には眠ってしまいました。。。
もうね、グリルでじわじわ焼かれているような感じ。
皆さまも短い距離だからと侮らず気を付けて。
「たかやしろ、見晴らし街道」春か秋がお勧めです。
アイズバイシクルではOS1を常備しています。
万が一、お近くで熱中症の予兆を感じたときには迷わず駆け込んでください。
おまけ。
長らく欠品状態のサンエクシードの変速機が入荷しました。少々見た目に変化はありますが、機能面は変わりません。クランクは170mmのみ欠品中ですが、9月中には再入荷の見込みです。
おにゅう峠に行ってきました
こんにちは、スタッフの前野です。
7月23日に予定されていたコンセントレーションおにゅうは残念ながら雨予報の為中止。僕自身すごく楽しみにしていて、数日前におにゅう峠へ下見に行ったほどなのですが雨ではどうしょうもありません。
コンセントレーションおにゅうの中止が決まった22日の午後から天気予報をチェックしていると、23日明け方は本降りの雨、昼にかけて止んできて午後は曇りの予報でした。雨になるべく当たらないよう京都市内を出発する時刻を少し遅めの10時とし、おにゅう峠へ行くことを決めました。
ルートは江文峠、途中越、花折峠、おにゅう峠を経由して東小浜駅がゴールです。帰りは輪行です。
京都市内からおにゅう峠へ向かう場合の個人的な定番ルートは花背峠、能見峠を越えて久多を経由して朽木へ入るのですが、能見峠は舗装工事の為通行止め。
なので今回は江文峠、途中越え、花折峠(トンネル)を越えて梅ノ木町を経由し781号線でおにゅう峠を目指します。京都市内は路面も乾いていたのですが大原あたりからウェットに。雨も小雨ですがパラパラと降っていました。
同行してくれたのはアルバイトとしてアイズに来てくれている井越君と元バイトのI君です。

花折トンネルから梅ノ木町の分岐まではゆるやかな下り勾配。タイトなコーナーもなく見通しが良いので滑空する鳥になった気分でほとんど漕がずに進みます。
今回も自転車は2017年のコンクールマシンの際に製造された親方製フルオーダー軽量フレームの1本。
気が付けば3年、様々なところに行きましたが不具合なく体の一部のように走ってくれます。
タイヤサイズは650×42B(3bar弱で使用)。軽量650Bチューブレールを使用することで見た目の重厚感とは裏腹にとてもスムーズに転がります。特に今回のような険しい山道を走る場合は大きなエアボリュームと安定感、乗り心地の良さが最後まで走り切る自信を与えてくれます。

久多からおにゅう峠入口まで続く781号線は若干の登り勾配ですが走りやすい快走路。車の往来も少なく、おにゅう峠に行かなくてもおすすめのサイクリングコースです。
おにゅう峠の入り口、小入谷に到着。峠はひらがなですが、滋賀県側の地名は小入谷。実は福井県側にもおにゅうという地名があって、遠敷と書きます。小入と遠敷、両地域の境にある峠なのでどちらかの漢字を当てはめるのではなく、間を取ってひらがなで「おにゅう峠」と名付けたのでしょう。

滋賀県側の林道小入谷線は全線舗装されています。序盤の勾配がきついですが景色のいい林道です(晴れていれば…)

林道小入谷線を少し進んだあたりで今回のコンセントレーションおにゅうに参加表明をされていたFさんにお会いしました。輪行で小浜の方へまわり、走って京都を目指すコース取りをされたそうです。
ソーシャルディスタンスを意識しつつ少しだけ談笑。小浜側の林道は舗装工事をしていて通行止めになっているのですが、自転車は問題なく通してもらえたということで、僕たちも小浜側へ下ることに決めました。(当初は滋賀県側を往復し、近江今津あたりから輪行で帰る予定でした。)

標高を上げるとガスが濃くなっていきます。幻想的な雰囲気。
こういう景色が見れるから雨の中走るのも大好きです。

おにゅう峠の定番フォトスポットに到着……!

何も見えません。真っ白!!

晴れていれば下の写真のように登ってきた尾根伝いの道を見下ろすことが出来ます。
紅葉シーズンの早朝は雲海と紅葉のコラボレーションが楽しめます。

大雨の影響で路面には大量の落石。気を抜かず走りたいところです。
サイドカットにも注意!

濃霧の中標高830mおにゅう峠に到着!京都市内から約4時間、達成感があります!!

このようにガスで真っ白。晴れていれば遠くまで見渡せるのですが、この幻想的な雰囲気も悪くないです。
二人が立っている地面の舗装が切り替わっています。そこが県境です。
アスファルトが滋賀県(右側)、砂利が福井県です。(残念ながら今回の工事でここもアスファルトに舗装されてしまうようです。)

おにゅう峠には立派な石碑があります。
平成15年とあるのでまだ歴史の浅い峠ですが、京都からアクセスしやすく走りごたえがあって眺めもいいので何度も訪れたくなる峠です。

舗装される前におにゅう峠の砂利路面と記念撮影。
井越君(右)は砂利のおにゅう峠に惹かれて今回のサイクリングに参加してくれたので少しでも雰囲気を味わってもらえてよかったです。

しばらく下った下根来の集落でニホンザルを発見!器用に岩を飛び越えて対岸へ渡っていました。

京ハ遠テモ十八里……

帰りは東小浜駅から輪行して京都へ帰りました。なんと約3時間!
京都駅の雑踏を避けるために敦賀経由でなく東舞鶴経由です。

輪行袋は、オーストリッチウルトラSL100。
昨年初めて手にしたときは正直耐久性について疑問があったのですが、頻繁に使用したにも関わらず破れもなく使えています。何よりこぶし大の大きさと約200gの軽さのおかげで気軽に持っていくことが出来るのが気に入っています。サイズ感はオーストリッチL-100などの縦型輪行袋に準拠しているのでグランボアTypeERやフォーク抜き輪行のランドナーなど、様々な自転車に使っていただけます。
そして輪行バッグにぶら下げているのはオーストリッチとコラボしたグランボアサコッシュ。
SL-100輪行袋と同様の生地を使用したこちらも軽量コンパクトなサコッシュです。サイクリング中のバッグに入りきらない補給食や輪行中の身の回り品を携帯するのに役立ちます。畳めばスマートフォンより小さくなります。レジ袋も有料化になった昨今ですからフロントバッグやツールバッグに1枚忍ばせておくと役立つシーンは多いですよ。

「最も近道根来坂越え」シンプルな標語です。
まだしばらくは以前のように大勢で集まってサイクリングに行くのは難しいかもしれませんが、その時々の状況に応じて自転車を楽しんでいけたらいいと思います。
コンセントレーション おにゅう
先日ようやく府県を越えた移動が解禁されて、いままで行くことがままならなっかったツーリングができるようになりました。でもまだまだ油断はできません。どこから感染が拡がるのかわかったもんじゃありません。でもこんな時だからこそ私たちサイクリストが参加できるイベントをずっと考えていました。誰かが何かを始めないとみんながサイクリングを再開できないのじゃないかと・・・
密閉・密接・密集の「三密」を避けて出来ること、私がフランスで経験したイベントにありました。「CONCENTRATION NATIONALE」FFCTの主催するイベントでフランスのリヨンとサンテチェンヌの間にある col de Pavezin に集まるというイベントです。集まる場所と時間帯だけが決められていて三々五々各自が好きなコースを走って集まって好きな時に帰って行くのです。以前美ヶ原に集まって走るサイクリングイベントを“Concentration to Utsukushigahara”と銘打って行っていましたが、あの時は集合から解散まで一緒に走って行動出来ましたが、今回は峠に集まるという一点イベントです。もちろんソーシャル・ディスタンスを保っての集合になります。
さて先週府県を越え走りに行ってまいりました。福井県小浜市と滋賀県朽木村の県境のおにゅう峠。かつては根来坂といって小浜から京都を結ぶ鯖街道の一つでしたが、平成になって林道が開通して自転車での峠越えが容易になった峠です。舗装もされていて、雲海と紅葉が美しいとのことで自動車やオートバイで訪れる人も結構いるようです。天気が良ければ日本海を望むこともできるとのこと、これは一度は行ってみなくてはと思い出かけたのです。
小浜の港に車を置いて海から峠まで25km弱で標高差820mを上るコースです。登ってしまえば帰りは下るだけのピストンコースですが、上りごたえはありました。のんびりのんびり上って2時間半、昼食を麓のレストランで取ってからでしたので峠に着いたときには雲が出てきてしまい海を望むことは出来ませんでしたが、適度に木陰があって初夏の日差しも避けることができ、沢沿いの路を涼しく登ることができました。そうそう、まだ小浜側の峠近くは未舗装路が2kmぐらい残っていますが、結構しっかりしたダートでした。

このおにゅう峠はスタッフのチョコこと前野君のお気に入りで、先日も京都から走って行って走って帰ってきて180km超、獲得標高は2800m弱というコースをケロリとこなしていました。昨年も京都を夜中に出て早朝に見られる雲海を楽しんでいました。
おにゅう峠を走るのに最も定番的なコースは熊川宿の西の入り口にある無料駐車場に車をデポしての周回でしょうか、一周70kmです。車を使っての最短距離では小浜側はお水送りで有名な鵜の瀬から走り始めることもできますし、朽木側では麓の針畑から走り始めることもできます。もちろん京都から走って小浜側におりてから輪行で帰ることもできますし、逆に東小浜まで輪行して走り始めてもよしというところでしょうか。ま、いずれにしてもアプローチが大変ですが・・・いろいろなコース取りが可能です。
というこのおにゅう峠にお昼の1時から3時まで、お好きなコースで、お好きな時間においでいただくというイベントです。日時は7月23日の海の日です。峠のてっぺんに集まるというだけのシンプルなイベントですが、それぞれの楽しみ方に応じて好きなコースをお気に入りの自転車で走ってください。コースに不安のある方はどうぞ遠慮なくご相談下さい。密にならずみんなで楽しみましょう。当日アイズはお休みします。
Concentration ONYU
ブルべレポート BRM315近江八幡200㎞
こんにちは、スタッフの前野です。
先日開催されたオダックス近畿主催のブルべBRM315近江八幡200㎞に参加してきました。
まず結果から言うとDNF。完走していません(^^;) 何故こうなったのか簡単に紹介していきます。
自分にとって昨夏のPBP以来のブルべ。事前準備のコース確認やキューシートの印刷、参加申込書の記入など去年は淡々と行っていた作業が新鮮に感じました。今回の目的は200㎞の認定獲得と4月に控えているグループで走るブルべ“フレッシュ”にむけて走力を向上させること。徐々に長時間の走行に体を慣らして4月を万全の状態で迎えるためです。この日はブルべ200㎞+自宅から近江八幡駅まで往復約100㎞を自走することにしました。なのでセルフ300㎞ブルべということです。
コースはJR近江八幡駅前をスタートして→ 日野 → 御杖 → 曽爾 → 伊賀上野 → 信楽 → 近江八幡に戻る206㎞。獲得標高は3000m越えで高い峠はないものの登りが多いコースです。
当日の天気は午後から崩れる予報。ただ、予報と照らし合わせた自分の計画では8時にスタートして17時ごろゴール、自走で2時間半かけて帰宅しても雨からギリギリ逃げ切れる算段でした。走行時間が短く獲得標高が3000m超の登りが多いコースなので余分な荷物は持つ必要が無いと判断し700Cロードで出走しました。荷物を減らすために今回は輪行袋、レインジャケットも持っていません。コースに含まれる地域に京都まで輪行で帰りやすい駅が少ないこと、200㎞ブルべは基本的に日没までにゴールできるので何かトラブルがあった場合でも対処できる可能性が高いということもロードに決めた理由です。
計画段階の僕は忘れていました。3月中旬と言えど気温は低く、天気は必ずしも予報通りにならないことを。
4時過ぎに起床、5時に自宅を出発し大原→途中越え→琵琶湖大橋経由で近江八幡駅に向かいました。大原では気温計が̠−2℃を指し末端に痛みを感じる寒さ。それでも途中越えを琵琶湖大橋へ向けて下るころには陽が昇り暖かさを感じるようになりました。

近江八幡駅前でいつものようにブリーフィングを経て8時スタート。今回のブルべはPCが2か所、フォトチェックが1か所、通過チェックが1か所の計4か所の通過証明が必要です。まずは18㎞地点のフォトチェックから。

フォトチェック後はアップダウンの多い伊賀コリドールロードをパックになって飛ばします。

67㎞地点のコンビニでパックから外れて以後単独走行に。今回のコースは普通なら気が付かないような林道が数か所組み込まれていて刺激的でした。この写真の後、下り区間もかなり荒れていて泥除けのない自転車はドロドロになりました。

95㎞地点の通過チェックは道の駅に設置されているスタンプをブルべカードに押します。

伊賀上野から信楽に抜ける御斎峠(おとぎとうげ)の登りから天候が怪しくなってきました。

みぞれ混じりの雨がポツポツ・・・まだ想定内です。

御斎峠の峠には句碑があります。ちなみに峠の石碑は伊賀上野側、峠の少し手前にあります。

信楽に下ると路面はウェット。PC2で紅茶を飲んで暖を取ります。朝ドラ効果と思われる交通量の多さに驚きながら湖南市へ抜ける今回最後の登り、アセボ峠にかかります。峠を登り始めてすぐに空が暗くなり雨が降り始めました。標高を上げていくと雨はみぞれ交じりに打ち付け全身を冷やし始めました。

多少の雨なら上半身はメリノウールのウェア、下半身はビブタイツの撥水効果で気にならないのですが今回の雨とみぞれには完敗。持ちこたえていたビブタイツに水が浸透し始めると一気に冬の寒さに。そして下りではフロントのマッドガードとフラップが無いので路面から跳ね上げた冷水でシューズもあっという間に水浸しになりました。

アセボ峠を下りきって湖南市に入るころには雨も上がっていたのですがこの時すでに17時過ぎ。ゴールの近江八幡方面に向かう交差点のコンビニでいったん止まりこの後どうするか考えました。現在地は190㎞地点でゴールまで16㎞。ゴールまで走るのは問題ないのですがその後が大変です。ゴール後近江八幡から自宅まで54㎞を走れば帰宅は確実に21時過ぎ。ここでやめて自宅まで最短コースを走れば約40㎞。まもなく日没を迎えて気温が下がるのに服は濡れていて防寒具もなく、頼みの綱である輪行袋も持っていません。今回のブルべはPBP出場がかかっているわけでもないし、風邪を引いて翌日動けなくなるリスクを取る価値は無し。残り僅かですがブルべはここで中断し、自宅まで最短ルートで帰ることに決めました。
湖南市からは近江大橋、山科を経由して京都市内へ。大津に着いた頃には寒さで指先の感覚が無く、補給食の包装も開けられないほどでしたが牛丼屋で夕食を摂って復活。20時過ぎに帰宅することが出来ました。
ブルべの認定こそ取れませんでしたがこの日は自走で54㎞+ブルべと自宅まで合わせて233㎞の計287㎞を走ったので満足です。DNFした後はしばらく気持ちも沈むのですが今回は清々しい気分です。

使用した自転車です。タイヤは昨年7月のブルべから使用している700×28Cエキストラレジェ。パンク修理、サイドカット対策のタイヤブート、チェーントラブル、各部の調整に対応できる工具に加え、補給食や増えた荷物を携帯するためのグランボア印の軽量サコッシュをシートチューブのツールケースに入れています。サコッシュは朝、自宅から自走する時におにぎりを運ぶのに役立ちました。ブルべ中は必要なかったのでツールケースの中へ折りたたんで収納。今回はしませんでしたが輪行時に身の回りの携行品などをまとめるのに便利です。携帯工具はトピークのラチェットロケットライトDX+。フルセットでは携帯せずラチェットハンドル、エクステンションバー、4~6㎜のビットとチェーンツールビットのみを携行しました。

夏ならこの装備でも問題なくゴールまで走って自走帰宅できたと思いますがこの時期は雨具、輪行袋などの保険を掛けておくべきでした。

ハンドルはリーチが短いアナトミックシャロー形状のグランボアモダンマースバー。日東M106と同様の形状ですがバルジ加工のハンドルです。アルミに焼き入れがされたハンドルに比べるとしなりを感じやすく長時間の走行に適した優しい握り心地です。

変速レバーはダイアコンペのパワーラチェットタイプでカンパニョーロヴェローチェ10速の前後メカを動かしています。こちらのレバーはインデックス式ではなくフリクション式ですが、ラチェット機構のおかげでリアメカのテンションに負けることもなく絶妙な具合です。実際に使うまでは10速をインデックス無しで変速させることに懸念があったのですが調子よく変速が決まります。
Wレバーにするとダンシング中や荒れた下りでの変速が困難になり走行性能の向上という点でメリットはほぼありません。
それでもWレバー特有の「レバーを動かしてシフトケーブルを引いて(緩めて)変速機を移動させ、チェーンが変速した瞬間のショックがWレバーを介して指に伝わる」一連の流れ。これは電動変速やデュアルコントロールレバーでは味わえないものです。これが味わいたいが故にWレバーに変えました。このアナログな操作感はハマりますよ。
さて、次に予定しているブルべはBRM328近江八幡300㎞。もちろん次回はフロントバッグに雨具と輪行袋を入れてランドナーで走ります!
ランドナーで走るPBP2019 ③
前回までの記事はこちら
【Brest 610km ~CARHAIX-PLOUGUER 693㎞】
Brestのコントロールではレストランで食事を摂り、周りの話し声や雑音が気になったが15分程テーブルに突っ伏して目を閉じた。

仮眠と言えるかは微妙だったが多少は眠気がとれたのでレストランを後にした。扉を開けて外に出ると気温が下がり肌寒い。ここに到着したときにアームウォーマー、レッグウォーマーを付けたので更にネックウォーマーも追加して夜間走行に備えた。そう、夜間走行用に用意した装備がもう一つあって、ベルクロでヘルメットに装着するヘッドライトだ。明るいホワイトLEDと優しい光の暖色系LEDを切り替えられるもので、主に手元やキューシートを照らすために使用する。昼間は重りでしかないので外してフロントバッグにしまい、夜間走行時のみ装着する。PBPのコースにつづら折れの下りはないので無くても走行に支障はないが、無いとちょっとだけ不便。そんな存在の装備だ。
BrestのPCを出発すると市街地を下り基調で一気に走り抜ける。街は寝静まっているが、自分と同じくパリへ向かうランドヌールと今まさにBrestに到着したランドヌールがフリーの音を響かせている。

街の外へ出ると往路より北側の道路を走ってPBP最高地点へ向かう。月が明るく前には前走者のテールライトがぽつぽつとゆらぐのが見える。実を言うとこの時、すでに睡魔に侵され始めており、前にライダーがいると視線はテールライトへ吸い寄せられしばらくすると意識が飛びかけることが度々あった。効率よく進むためにトレインに加わりたかったが意識が無くなりそうだったので途中立ち止まってハンドルに突っ伏したりもした。誰かと先頭交代をしたほうが速く走れるけれど後ろに回ったとたんに眠たくなる。睡魔は一晩目よりも強くなっていて厄介だった。


ブレストに向かう往路の集団とすれ違う。ベルを鳴らしたりしてお互いを励ます。この延々と続くライトの列は過去の参加者のブログなどで言及されていたのでなんとなく想像はできたが実際に目にすると感動した。

夜の街は寝静まっている。それでも自転車にちなんだ飾りつけや私設のエイドステーションなどが必ず一か所はある。

【CARHAIX-PLOUGUER693㎞ 20日5:11】スタートから36時間11分


補給をして出発する。暖かい食べ物が嬉しい。サポートの3人も眠そうだ。

空が青みがかってきた。

ようやく夜明けを迎えた。霧が出ていて走っているとアイウェアやアームウォーマーに水滴がつくほど濃い霧だった。

徐々に霧が晴れて視界が開けてくる。


イタリア人のグループとしばらく走った。僕が眠くて集団から千切れかかると、マダムが声をかけてくれた。話を聞くとバイクメーカーをスポンサーにつけてトランスコンチネンタルレースなどを完走、PBP1200㎞はトレーニングのようなものだとか。睡魔で時折ふらつく自分に対して彼女は常に安定したペダリングで余裕を感じられた。この会話のおかげで眠気は飛び、太陽が上がると共に調子が戻ってきた。今回痛感したのだが自分は寝ないと調子よく走れないのだ。

写真右側の彼はポーランドから来ていた。100㎏近くありそうな身体ながら平坦も登りでも一定のケイデンスで(しかもシッティングのまま)イタリアグループと共に走っていた。苦しそうなそぶりも見せず淡々と走り続ける姿はかっこよかった。

【LOUDEAC783㎞ 20日9:49】
復路のルデアックに到着。PBPという名の1200㎞スタンプラリーも徐々に終わりが見えてきた。



【FOUGERES 923.5km 20日16:09】
城塞がきれいなFOUGERESに到着。明るいうちに距離を稼ぎたいのでここでは最低限の停車にとどめてバッグとポケットに補給食を詰め込み出発した。



コンクール参加チームであるVagabondeCyclesのタンデムが後ろからやってきた。大半のコンクールマシン参加チームがF組スタートで、ここまでランデブーすることが無かったので一緒に走れることがうれしかった。

タンデムは平坦がとても速いので少しでも楽をしようとVagabondeCyclesのタンデムを先頭にしたトレインが形成された。40㎞h近いスピードでどんどん前を抜いていく。

【VILLAINES-LA-JUHEL 1012km 20日20:07】スタートから51時間
コントロールの数キロ手前で合流したRossmanCyclesのハーンさんと一緒に到着した。PBPを複数回経験している彼の走りと時間の使い方は学ぶ点が多かった。


コントロールではいつものように補給食を補充し、食事を摂った。出発前にトイレに行ったのだが便座に座ると安心感からか急に眠たくなってそのまま眠ってしまった。思い返せばここで長めの仮眠をとるべきだったのだ。


万全の状態(この時はそう思っていた)で3度目の夜が始まった。次のコントロールまで90㎞弱。普通に走れば4時間少々で到着できるだろう。



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【MORTAGNE-AU-PERCHE 1097km 21日6:37】スタートから61時間半
「ヴィラネラジュエルからモンタンオーペシェまで85キロ。普通だったら5時間もかからないはずなのですが、サポートにとってもライダーにとってもこの区間が最も辛い区間となりました。車での移動は1時間ほどですのでずっと車内やコントロールの中の休憩所で待っていたのですが、GPSを見ていると40-50キロほど進んだところでパッタリと動かなくなってしまったのです。夜中の気温は数字は確認していませんが、持っていたダウンのジャケットを着ていてもまだ寒いくらい。「まずいなぁ。」と親方と話してリタイア覚悟で迎えに行ってみるか、と思った矢先にGPSが動き出す。そして、また止まる。そうかと思えば、「あ、道が違う。間違ってる。」と親方。なかなか近づいてこないその点をただただ祈るような気持ちで夜通し見つめていました。先にも少し書きましたが、サポートカーとして登録した車はコントロールポイント周囲5キロまでしかコース上に入ることはできません。やっとその点がコントロールまで2.4キロとなった時、また動きを止めたので車で見に行きました。ですが、草むらや人家の庭先などをのぞいてみましたが姿はなく、そうこうしている内に夜明けを迎え、前野は私たちが探しに出ている間にコントロールにたどり着いていました。ホッとしました。やっと会えた時、ちょっとボーとした様子でしたが、怪我も無く、しっかり食事もとれました。ですが、この区間のことはほとんど覚えていない、断片的なシーンしか覚えていないと彼は言いました。」
2019コンクールとパリブレストパリ 3
これはサポート隊から見たMORTAGNE-AU-PERCHEまでの85㎞。実のところ、この区間に関して覚えていることは少ない。写真も殆ど撮っていない。
記憶ではどこかの町で急に行き先が分からなくなり、停車を繰り返したこと。それと自暴自棄になって叫んだ覚えもある。あとは数時間後に草むらから起き上がり、自転車にまたがって電池切れ寸前のスマホのマップを頼りに(ナビゲーションに使っていたGPSは電池が切れていた)最後の10㎞ほどを進んだことである。それとPCが位置する街を勘違いして関係が無い集落をぐるぐる回った記憶もある。
確かに気温は低く寒かったと思うが、それよりも眠気と疲労で気が狂いそうなくらい辛かった。正直、この時知り合いが近くにいなくてよかったと今になって思うくらいである。自転車に損傷はなかったので無意識の状態でも自転車をいたわっていたのはよかった。気が狂って草むらに放り投げたりしていたら大変である。コンクールマシン参加とPCでサポートが待っているという責任がなければ朝まで倒れていたかもしれない。万が一草むらで寝る場合は、親方にショートメールを送る約束をしていたので、連絡を取ることは頭の片隅にあったのだが何も出来ずに寝てしまった。PCに着いたときはまさかサポート隊がこんなに心配していたなんて思わなかったので、後でこれを知って申し訳なく思っている。
食事を摂ってゆっくり休んで再出発。計画どおりであれば今頃ランブイエのゴールに60時間で到着していたはずだが現実を受け入れるしかない。これから気温が上がり、草むらで寝たおかげで頭も冴えているのでペースを上げられるだろう。

MORTAGNE-AU-PERCHE出発後気温がどんどん上がっていったので防寒具を脱ぎ、鬱陶しく感じたのでグローブも外して素手で走った。まだゴールまで100㎞あったので手が痛くなるようならグローブを付け直すつもりでいたのだが、1219㎞のフィニッシュまで素手で問題はなかった。今回、自分が乗ったグランボアのコンクールマシン2019はフレームは乗りなれたカイセイの4130Rで構成され自分にとっては硬すぎず柔らかすぎず絶妙な乗り味。路面からの振動や衝撃はフレームが全体で緩和してくれるのはもちろん、650×38Bエキストラレジェタイヤがその大半をフレームに伝わる前に打ち消してくれるような感覚だ。

そして乗り心地に寄与したと思うのがハンドル周りだ。使用したハンドルはグランボアフランス型マースバー410㎜溝付きでリーチが長いクラシカルな形状のハンドルだ。ショルダー部分を地面と水平になるようにセットするとドロップ部分は地面に向かって下がる状態になるのだが、これが深い前傾を取りやすくしてくれる。最も握る時間が長い肩~ブラケット部も最近主流のリーチが短いハンドルであればブラケットとショルダー部のポジション差は小さいが、このハンドルはリラックスして走るときはショルダー部分、少し力を入れて走りたいときはブラケット部分と使い分けができる。
肩がせりあがったフランス型ランドナーバーも好きだが、同じフレーム、同じ長さのステムで比較した場合ポジションが起きるのでこちらはもっとゆったりと走る場合に向いていると思う。ドロップ部分の曲げ形状が似ているがフランス型マースバーの方が深曲がりなので下ハンが遠くなりより深い前傾が取れる。それに対しフランス型ランドナーバーは少し浅めの曲げで肩部分がアップしていることも相まって下ハンを楽な姿勢で握りやすい。
今回は舗装路のみなのでマースバーを選んだが、6月のジャパンバイクテクニークのような荒れた林道を走る場合はランドナーバーの方が扱いやすいと思う。

今度はスペインチームのトレインに混ぜてもらう。

【DREUX 1174.5km 21日12:03】スタートから67時間

最終コントロールに到着。残りは45㎞、2時間あればゴールできるはずだ。蟹雑炊を食べてエネルギー補給。ゴールが近いのでみんなの表情が明るい。


とうとう走行距離が1200㎞を越えた。ゴールまで本当にあと少しだ。

残りの約15㎞はこの人とアタック合戦をしてペースを上げ続けた。ランナーズハイのような状態で疲労を一切感じず、力いっぱいペダルを回すのが気持ちよかった。

お互いの走りを称えあってランブイエの市街地に到着。PBP前の試走や買い出しで何度も通ったのでランブイエ市街地は見慣れた景色になっていた。ここを3日前の夕方に出発して大西洋に面するブレストへ行き、また走って帰ってきたという実感は無かった。

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【Rambouillet 1219㎞ 21日14:18】スタートから69時間16分
フィニッシュに到着。長かったような短かったような不思議な気分でゲートをくぐった。達成感も感じたが1200㎞走ったという事実をうまく呑み込めなかった。


ブルべカードを提出し、最後のスタンプを貰って完走メダルを受け取る。3日間頑張ってよかった。苦しんだ3回目の夜に諦めなくてよかった。



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ゴール後はコンクールの車検等を受けて会場内の飲食スペースで昼ごはん。

1200㎞を完走できたのは親方、はるみさん、ジャン・フィリップ氏この3名のサポートがあった部分が大きい。もちろん2019年は例年よりもブルべの出走を増やして長距離走に慣れるようにしたし、自転車はコンクールマシン用に最高のものを使うことが出来たので完走できたのは身体や機材面も大きい。ただ、1200㎞の旅路で途中のコントロールで待ってくれている人たちがいたことは大きな心の支えになった。長距離を走るときは身体の調子が成否を左右するのはもちろんだが、モチベーションが失われると身体は大丈夫なのに一気に走れなくなることがある。3回目の夜は正にその状態だったのだが、こうしてゴール出来たのはサポート隊の3人がいたから消えそうな灯でも耐えることが出来たのだと思う。
この3名のほかにも2017年に続き現地で通訳をしてくれた小林さん、PBP前に訪れたサンジェのオリビエ氏など多くの人から走りに関するアドバイスや励ましの言葉を頂き、そして日本からインスタグラムやフェイスブックを通じ多くのメッセージを受け取りました。応援いただきました皆様本当にありがとうございます。
自分がこのパリブレストパリ/コンクールマシンを無事に走り終えることが出来たのは、ここに来るまでに関わったすべての人たちのおかげです。このレポートも本来ならもう少し早く完結させたかったのですが、なかなかこの体験を消化できず今に至ってしまいました。ここまでお付き合い頂きありがとうございました。

↓各コントロールの通過時間、平均速度など

今回使用したグランボアのコンクールマシン2019はアイズバイシクル店頭で展示しています。どうぞ実際にご覧ください。






